小規模サロン開業の注意点!すぐにキャパオーバーにならないためのポイント
店舗ビジネスは、ハコの大きさ、席数で売上の上限がほとんど決まります。
単価アップや店販を使って売上を伸ばすことはできても、客数自体を増やすことはかなり難しいでしょう。
個人で美容室を開業する場合、小規模からスタートするケースが多いです。
セット面3席・シャンプー台1
セット面4席・シャンプー台2
経費を抑えつつ、確実に利益を出すためには手頃なサイズかもしれませんが、思ったよりも早くキャパオーバーになるケースがあります。早い方では1年くらいで、余裕がなくなってきます。
今日はそんなお話をしたいと思います。
キャパオーバーの影響
オープン後1年でキャパオーバー。
見方によっては「赤字よりまし」とか「店舗展開が早まってよい」と感じるかもしれません。
しかし、急速なキャパオーバーはあまりよいとは言えません。
キャパオーバーとは以下のような状態になっていることを指します。
- 席がほとんど埋まってしまい、新規客あるいは既存客が予約できない。
- 空席はあるものの、対応できるスタッフが不足して予約を取れない。
これによって、次のような弊害が起こります。
- 予約が取れないことで顧客満足度が下がってしまう。
- 働く従業員が疲れ果ててしまう。
この問題を解決するには開業して1-2年で多店舗展開をしていくか、新たに採用して人員を増やすことになります。
しかし、あまりにも早すぎる展開にはそれなりの難しさがあります。
借入れ問題
開業して2年足らずでは、一店舗で借りたお金の返済はほとんど進んでいませんので、新たに融資が必要です。
例えば、一店舗目オープンのために900万円借りた人は、2年目で800万円ほど借金が残っています。
そこに新たに900万円を借入れしようとすると借金が倍になります。オープン2年目で負債が2倍になるのはかなりリスクが高く、金融機関側も容易に貸せません。
さらに、多くの金融機関では2店舗目出店のための融資の条件として、2期分の確定申告・決算書の提出が求められることが多いです。
そうしますと、2期未満の場合には追加融資が難しくなるわけです。
店舗を増やさないとキャパオーバーを解消できないのに、店舗が作れないということになりかねません。
スタッフ問題
昨今はどこも人手不足です。すぐに採用が取れることはまれです。
席は空いているのに対応できるスタッフがいないために予約が取れず、その結果失客していくのは痛恨の極みです。この状態は働いているスタッフのモチベーションにも影響を与えます。
例えば、サロンの売上の大部分をオーナーが稼いでいる場合、オーナーの指名客が最優先されスタッフはヘルプに入ります。
その結果、スタッフが自分のお客さまを担当する機会が失われます。スタッフとしてはより多くの新規客に入って、自分の指名客を増やしたいはずです。
一方、オーナーにとっては自分の大事なお客さまであり、売上の大部分を構成しています。スタッフの手を借りてでも対応していきたくなります。
こうした労働環境によって、スタッフのモチベーションは下がっていきます。そして、採用をかける前に今働いているスタッフが離脱するリスクが高まってしまいます。
このように小規模で開業する場合には、赤字のリスクだけでなく、キャパシティの問題でサロン運営がうまく行かなくなるケースも想定しなければなりません。
こうした問題を避けるためにも、事業計画の段階から抑えておくべき要点があります。それをこれからお伝えします。
適切な規模のサロンをつくる
まずは、出店するハコの大きさ、あるいは席数、シャンプー台が本当にそれでいいのかを精緻に検証することです。
小規模サロン開業のケースですと、①自分の指名客が見込める場所に、②小さなハコで(3席)、③スタッフ1人を雇って出店というパターンが多いです。
ここから、しっかりと数字を使って適正な規模なのかを検証してみます。
例えば、3席×5回転×25日営業だとすると、月に対応できる客数は375人です。きれいに席が埋まることはないとして、80%くらい埋まったらキャパオーバーになると仮定します。
そうすると、現段階でサロンが対応できる顧客数は月に300人くらいと見込めます。
ここから指名客の来店を予測します。以下のように予測しました。
- オーナーの指名見込み客が月200人
- スタッフの指名見込み客が月60人
本当にこの人数が来店するとしたら、あと40名程度新規客が定着するとキャパーオーバーになります。
この場合、すぐに300人に達してしまう可能性がありそうです。
そうなると「席数を4に増やす」「もう一人スタイリストかアシスタントを採用する」など余裕のある計画に変更しなければなりません。
見込み客が計画通りに来なくても利益がでることは大事ですが、計画通り来てしまったときにすぐにキャパオーバーにならないための余裕も持つべきです。そのバランスを細かく検証していくべきです。
採用計画を立てる
つぎに採用を考えます。
すぐに採用をする予定はなくても、席数に対して人員に不足がある場合にはあらかじめ採用の条件や求人票を作成することをおすすめします。
今は「Air ワーク」のように無料で採用サイトや求人ページを作ることができます。
いざというときにすぐに採用活動できるように準備をしておくことは、採用難のこの時代には必須だと思います。
採用にかけるための投資額も含んだ運転資金を設定したり、営業利益の一部をそこに充てるように資金を貯めていくべきです。
※ビューティガレージでは「採用係長」という採用マーケティングサービスを提供しております。
労働環境を整える
一人サロンでない限り、オーナーは一緒に働くスタッフのことを考える必要があります。
実際、多くのオーナーはサロンの稼ぎ頭です。そして、そうありたいと思っています。彼らにしっかりと給与を支払うために「自分ががんばって稼ぐ」という想いは素晴らしいです。
一方で、スタッフはスタッフで自分で稼ぎたい、もっと多くの指名客を獲得したいとも思っています。そして、そうした機会を増やしてあげることもオーナーの役割でもあります。
例えば、サロンオーナーは施術ばかりはしていられません。経理、労務、仕入れ、マーケティングなど様々な業務があります。
サロンワーク量を落として、スタッフに任せるようにすべきです。スタッフが働きがいのある環境を作ることも重要な任務です。
「オーナーは新規客に一切入らない」などルールを作ることも重要です。
計画からキャパオーバーを防ぐ
小規模サロンは利益は出やすい半面、キャパオーバーになる可能性が高いです。
嬉しい悩みですが、それが早すぎると、結果としてサロンのブランドを傷つけることになるし、店舗展開にも失敗するし、人材流出にもつながります。
開業時にはどうしてもオープンして数ヶ月といった短期的な視点で準備をしがちですが、その店舗をしっかり成長させるためには適正な規模、採用計画、労働環境などを考えましょう。
店舗展開を考えている場合にはなおさら重要な要素だと思います。
ビューティガレージでは将来の店舗展開を見越した開業についてのご相談をお受けしております。ぜひご利用いただければと思います。
●文/コンシェルジュチーム:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。