いくらあれば安心? サロンをつぶさないための運転資金の考え方
サロンの開業資金は、「設備資金」と「運転資金」に分かれます。
開業というと、内装や美容器具などの設備資金に目が行きがちですが、美容室を営業していくためには運転資金も重要です。
サロンが閉店する理由は、そのほとんどが現金不足です。それを防ぐためには、ある程度のお金を持っておくべきです。
多くの開業者は開業をすることが目標になってしまい、運転資金をどの程度確保すべきかを深く考えません。
そこで今回は、運転資金の重要性と、どのくらいお金を用意しておけばよいかをお話しします。
運転資金は固定費の3~6か月分
固定費とは、たとえ月の来客が0人だったとしても必ず支払わなければならないお金のことです。運転資金は、固定費を支払うためにあるとも言えます。
大きくは、「家賃」「人件費」「広告費」がそれに当たり、厳密に言えば、電気・ガスの基本料金や電話代も含みます。
一方、商材などは、売上が立たない限り発注する必要はありません。売上によって経費が発生するものを変動費と呼びます。必ず支払いが発生するのが固定費なのです。
運転資金は固定費の3~6か月を用意しておくと安心です。サロンが安定するまでには時間がかかります。
売上が伸びなかったり、何かと出費がかさんだり、オープンしてすぐに利益がでる美容室はそう多くありません。
美容室というのは、お客さまがお店を認知して、来店するまでに時間がかかります。
飲食店のようにお店を見つけて、「入ってみよう」とはなりません。美容室は、お客さまの行くタイミングがあります。それを待つ必要があるのです。
客数が伸びてくるまでに数か月はかかると見ておくべきです。そして、そのあいだもサロンを運営していくためには、固定費を払える体力が欠かせないのです。
個人事業主は自分の生活費も考える
一方で、たとえ黒字になっても現金が減っていく現象は起こります。それは、営業利益よりも生活に使うお金が多いからです。
たとえば、30万円の営業利益がでても、生活費に40万円かかったら10万円マイナスです。
運転資金が十分でない場合は、その10万円を個人の貯金から切り崩すことになります。
また、個人事業主は、年金や健康保険料を自分で払います。月々およそ3万円かかるとすると、大きな出費です。
営業利益は、自分で立てる目標です。利益が残り、最終的に自分の口座のお金が増えることを目標にすべきです。
つまり、
「毎月5万円ずつ現金を増やしたい」
⇓
「生活費が30万円かかる」
⇓
「利益は少なくとも35万円必要」
という逆算が必要になってきます。
必要であれば運転資金の借入れも
できるだけ借入れをしたくないという人もいます。しかし、自分の貯金を切り崩すことになるのが一番危険です。
「事業で赤字になった」「黒字でも生活費が上回った」。こういう2重のリスクを想定して、十分に運転資金を確保すべきです。
運転資金が底をつくと、自分の貯金を事業に回すことになりますから、現金があっという間になくなります。
どうしても自己資金の範囲で運転資金を確保できないならば、借入れをしましょう。
金融機関は、事業がうまくいかないときにはお金を貸してくれません。現金が足りなくなってきて困っても、貸してくれる金融機関はほとんどありません。
そうなると、消費者金融に借りるしかなくなってしまいます。
まだ、サロンの業績が出る前に借入れをするほうが賢明だということです。
まとめ
運転資金に関しては、以下のことに注意しましょう。
- 固定費の3~6か月は確保する。
- 自分の生活費を含めて目標利益を考える。
- 必要であれば借入れを行ない、現金を増やす。
現金を増やすと、赤字になっても広告に投資したり、新しい器具を買ったりできます。現金がなくなると、打つべき手が打てなくなります。
まずは現金の確保を念頭に計画を立ててください。オープンしたら必ず月末に、口座のお金が増えているのか、減っているのかを確認しましょう。
最終的に現金がなくなったら閉店です。お店を存続させるには、利益以上に現金が重要なのです。
一人で考えるのが難しい場合には、ぜひ開業無料相談にお越しください。現状を把握し、一緒に対策を考えていきましょう。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。