美容室オープン後の失敗を防ぐために!事業計画書で特に意識すべき数字
融資に向けた計画計画書にはある程度「型」があります。その型にうまく当てはめれば、事業計画書は作れてしまいます。
しかし、事業計画書は融資担当者にアピールするものである一方、サロンがオープンした時に失敗しないように戦略を練るところに本来の目的があります。
失敗してもダメージを抑えるような計画ができるまで数字を動かしてみます。今回は「開業後の失敗を防ぐ」という視点から、事業計画書で特に重要な数字に注目してみましょう。
負債
美容室を開業するためには1,000万円以上の資金が必要になります。多くの開業者が金融機関から借入を行います。
借金=負債は、オープンしてから少しずつ返していきます。サロンを安定させるためには借入金に注意しなければなりません。
自己資本比率
開業に必要な資金を、自分のお金(自己資金)と他の人のお金(借入金)で調達します。その時に、開業資金における自己資金の割合を自己資本比率と呼びます。
自己資本比率の理想は30%とされていますが、現実的には20%~25%が目安です。
トータルで1,200万円かかる場合には、自己資金300万円と借入金900万円を用意する。これで25%です。
開業後は、利益を出して自分のお金を増やし、借入金を返していくことで、自己資本比率が上がっていきます。
しかし、あまりに借入金が大きいと、儲かっても儲かっても負債がなかなか減りません。
あまり自己資金がないのに、大きなサロンを作ろうとすると、多額の借入金が必要になってきます。
身の丈に合っているかを考える上でも、自己資本比率は意識すべき数字です。
毎月の返済額
借りたお金は毎月返済しなければなりません。借入金の返済についての注意点は2つです。
一つは返済には利息が発生することです。もう一つは、利息は経費になるが、元金は経費にならず、営業利益から返すことです。
利息は利率と借入期間によって金額が決まります。
「1,000万円を借りたら、1,120万円を返す」というように、利息だけで120万円余分に支払うことになります。
必ずシミュレーションで、トータルの利息を確認しておくことが大切です。
また、元金の返済は営業利益から差し引かれるという事実です。50万円の営業利益をだしても、そこから9万円返済することになると、実質手に入るお金は41万円です。
50万円を手に入れるためには、60万円を利益目標にしなければならないということです。目標利益は返済額を考えて設定しましょう。
キャッシュ
サロンがつぶれるのは単に赤字だからではなく、キャッシュ(現金)が不足するからです。サロンと自分の生活を維持するためのお金を特に意識します。
固定費
お客さまが一人も来なかったとしても、自分が病気をして休業せざるを得なくなっても、必ず支払いが生じる費用があります。
特に美容室の経営で重要なのは家賃と人件費です。
そのほかにも、支払い利息や、ホットペッパーなどの掲載費、水道光熱費の基本料金など、固定費にあてはまるものがいくつかあります。
それを洗い出し、いくら固定費としてかかるかを算出してみましょう。それだけのお金がでていくことを意識する。
そして「そのお金をどれだけ用意できるか」を考えます。少なくても固定費の3ヶ月分は現金として保有しておきたいところです。
固定費が50万円かかる場合には、その3月分=15o万円を、開業の運転資金として計画しておきましょう。
生活費
個人事業主は、営業利益が自分の所得になります。その所得から自分の生活に必要なモノやサービスに使うのです。
一方、個人事業主の働き方は、雇用されていた時と違います。
失業保険は適用できません。国民保険や年金もすべて自己負担です。有給休暇なるものもありません。そう考えると、雇用されていた時と同じような生活スタイルではいられなくなります。
万が一に備えてお金を貯める必要もでてきます。もしくは、生活で使うお金がさらに増える可能性もあります。
自宅の家賃、もしくは住宅ローン。教育費、食費などを洗い出し、いくら所得があれば生活が安定するかを試算しなければなりません。
売上
負債、固定費、生活費を支払っていくためには、どのくらいの売上を目標にすべきかを最後に考えていきます。
損益分岐点
損益分岐点は元来、営業利益が0になるポイントと言われますが、実際には利益がないと借金も返せないし、生活すらできません。
それゆえ、返済すべき金額、生活に不可欠な費用から、逆算して目標数字を設定して、損益分岐点を作らなければ意味がありません。
したがって、損益分岐点の式は次のとおり。
(目標利益+固定費)/(1-変動費率)
① 変動費率=25%で設定。
② 固定費=50万円
③ 目標利益=元金返済分、生活費分を含んで60万円
で設定した時に、損益分岐点は(60+50)/0.75=146.6万円。つまり146.6万円を売上なければ生活していけないのです。
さらにここから必要な客数を求めます。単価を8,500円にすると、146.6万円÷8,500円=172人。
172人が達成すべき具体的な客数になります。
見込み客
最後に、損益分岐点で出した必要客数を「どうやって集めるか」を考えます。一つの切り口は「見込み客」の推定です。
見込み客で、最も来店の確度が高いのは現勤務先での指名客です。
自分の指名客でどのくらい来店してくれそうか。スタッフのお客さまはどうか。ここでも具体的に数字を意図的に出していきます。
例えば、自分の指名客が80人、スタッフの指名客が30人が見込めそうです。そうすると110人は確保できそうだという目算が立ちます。
172人の来店が必要であるとき、110人が埋まるとなれば、あと62人が新規客として獲得しなければならないことが見えてきます。
そこから、「ホットペッパーで新規客が何人必要か」「新規客のうちリピートにできるのはどれくらいか、そのためにはどうすべきか」といったことを考えていくのです。
まとめ
負債、毎月出ていくお金、生活にかかるお金、こうした数字を意識して、利益目標を立てていくことが失敗を防ぐための王道です。
そして、それを達成するための売上目標、特に集客目標に落とし込みます。難しそうな場合には、数字をいじってみます。
数字を動かしながら、サロン規模、家賃、立地など様々な見直しを行い、現実的に到達可能な目標にまで練り上げることが大切です。
事業計画書の作成の目的は、単に融資のためだけではなく、勝ち筋を見出すことです。失敗しないサロン運営をするためにキーになる「数字」は強く意識しましょう。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。