【専門家に学ぶ:社会保険労務士編】美容室・サロン用助成金活用のススメ(2019年度版)
SALONスターターでは、【専門家に学ぶ】シリーズとして、コラム形式でさまざまな専門家の方から「開業する際に知っておくとよい知識やノウハウ」を解説いただきます。
今回は、社会保険労務士の他、中小企業診断士や行政書士など多くの資格を有し、サロンのバックオフィス支援を行われている「リードブレーン株式会社 代表取締役 皆川 知幸 氏」に、美容室・サロンにおける助成金活用について解説いただきます。
目次
美容室開業に不可欠な多額の資金
美容室を開業する際には、多額の資金が必要となります。
その資金を金融機関の融資制度を活用し資金調達をしていくことが多いと思いますが、金融機関からの融資というのはもちろん「借りているお金」です。当然ながら返済義務が生じます。
それに対して、これからご説明する助成金制度(※厚生労働省管轄に限る)については原則、返済義務が不要なのです。会計上も助成金が受給できた場合、雑収入となり、利益率をUPさせる大きな要因となるのです!
開業時は1円でもお金を手元に残すことが重要となります。もともと利益率がそこまで高くない美容室経営において、収入の入口とその金額を増やしていくことは、経営者にとって、重要な仕事です。
美容室経営が厳しい現代において、助成金の活用がどれだけ経営を楽にするのか……。そういった観点で開業時から助成金の活用をきちんと視野に入れていきましょう。
助成金とは?
では、そもそも助成金とはどういった性質のお金なのかということをご説明します。
実は助成金といっても実はさまざまな種類があり、地方公共団体や各種業界団体が支給する助成金や、経済産業省管轄の補助金などがあります。
その中で、今回は美容室開業にあたって皆様に該当する厚生労働省管轄の雇用関係の助成金に絞ってご説明します。
助成金のポイント
助成金のポイントを列挙すると、以下の通りです。
・助成金は返済不要
・財源は労働保険料の事業主負担分より
・法定帳簿(雇用契約書・就業規則・出勤簿・賃金台帳)の備え付け、法的整合性・実態との整合性が求められる
・要件に当てはまれば原則支給される
これから各ポイントについて解説をしていきます。
助成金は返済不要
冒頭でお伝えしたとおり、助成金が受給できた場合は雑収入となり、返済は不要です。
財源は労働保険料の事業主負担分より
助成金というのは、国や地方の税金で賄われているわけではなくて、事業主が負担している労働保険料の一部を財源としています。
細かい説明は省きますが、実は助成金は経営者が自ら収めているお金の一部から支給されるのです!
つまり、きちんと労働保険料・社会保険料を納付している経営者は助成金のための資金を積み立てているようなものです。
ただし、助成金を活用しないということはその積み立てたお金が戻ってこないということを意味します。
従いまして、助成金受給のための前提条件として、もちろん適正に社会保険制度に加入し、労働保険料・社会保険料を納めていることが必須ですが、逆にきちんと収めている美容サロン経営者にとってはきちんと助成金を活用しなければ、非常にもったいないということになります。
法定帳簿の備え付け、法的整合性・実態との整合性が求められる
これは、昨今もっとも重要なポイントです。
ほとんどの助成金の支給申請を行う際に、法定帳簿(就業規則・雇用契約書・賃金台帳・出勤簿)の提出を求められます。まずはこれらの書類をきちんと整備していることが最低条件となります。
いままでは美容室を開業してすぐに就業規則や雇用契約書をきちんと整備できるところは多くなかったかと思います。
しかし、昨今厳しくなってきている労務管理やこの4月から施行された働き方改革法の対応にすべく、社内の人事・労務ルールを確立しておくことは開業時にこそ重要になってきています。
従いまして助成金を受給するためにという観点もありますが、そういった昨今の労働環境に対応するためにも、当初よりきちんと整備することをお勧めします。
そして、さらに最近はこの帳簿書類の厳格な運用をチェックされます。
具体的に簡単に申し上げると、
・就業規則……雇用契約書と整合性が合っているか。法令を守った社内規程になっているか。
・雇用契約書……適正な労働条件になっているか。固定残業代の時間は適正か。
・出勤簿……労働時間は適正か。
・賃金台帳……雇用契約書・出勤簿の通り、きちんと賃金が支給されているか。
いかがでしょうか?
特に美容室経営は労働時間・休日が不規則で、閉店後のトレーニング時間の取り扱い、歩合給の複雑な手当など、通常のオフィスワークを比べてその内容をきちんと書面におとすのが難しい業界です。
それにもかかわらず、美容業が専門ではない士業やインターネットのひな形を安易に使用して作成してしまうと実態と合わない書類となり、申請の際に必ず指摘されますのでご注意ください。
要件に当てはまれば原則支給される
助成金は、きちんと要件を満たし書類を整備さえできれば、高確率で支給されるものです。
よく比較される経済産業省管轄の補助金(ものづくり補助金・小規模持続化補助金・IT導入補助金)などは、申請期限が限定され、その都度の採択率も大きく変化するので、一概に支給できるかどうかが予測しがたいのです。
従いまして、きちんと助成金の情報を収集し、要件に当てはまり、きちんと社内資料を整備することで確実に受給できる助成金を開業時こそ上手く活用すべきかと考えます。
※2019年4月1日時点での情報を基に執筆しております。
リードブレーン株式会社 代表取締役
中小企業診断士/社会保険労務士/行政書士 皆川 知幸
リードブレーン株式会社 代表取締役
大学卒業後、ジャスダック上場のコンサルティング会社へ就職。
飲食・美容・教育事業・士業事務所など、全国の中小企業のコンサルティングへ15年従事。
美容業界特有の仕組みづくりを経験した後、ミナカワ中小企業診断士を開業。
個人事業のお客様や美容室・飲食店経営者などスモールビジネスを行う経営者を中心に顧問先を増やす。
その後、事業拡大に伴い、リードブレーン株式会社を設立。
その後、リードブレーン社会保険労務士事務所・リードブレーン行政書士事務所を設立。
店舗経営のバックオフィスをワンストップで対応するべく、リードブレーングループを構築し、多種多様な要望を対応する体制を整えている。
リードブレーン株式会社
〈東京本社〉東京都千代田区神田和泉町1-2-5 昭和ビル3階西
TEL:03-5835-2805 (代表番号)
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。