経費計算からスタート! 損益分岐点を使った売上目標の立て方【前編】
サロン経営も他のビジネス同様に、いかに利益を出すのかが最重要課題です。利益を出すには、売上を伸ばすか経費を抑えるしかありません。
オーナーは、自分の設定した利益目標を達成するために計画を立てます。では、どうやって利益を出すための売上や経費を決めていくのでしょうか。
今回は、計画の立て方の一つの方法として“損益分岐点”を使った考え方をご紹介します。数字の話ですが、お付き合いください。
損益分岐点とは
損益分岐点とは、売上と経費がイコールになる金額のことです。
このラインより売上が低いと赤字、高いと黒字になります。損益分岐点とは赤字と黒字の境目のことなのです。
計算方法は、【固定費÷(1-変動費率)】※であらわされます。
※ 固定費/(1-変動費率)とも表記します。
話が複雑になるので、なぜこうなるのかというロジックは省きます。
経費がわかれば、赤字にならないための売上がわかるのが特徴です。そのためまずは経費を先に考えます。
経費を先に考える理由
なぜ経費から考えるのでしょうか。それは、オーナーがコントロールできるからです。
売上はお客さまによって作られるものです。サロン側がどんなに素晴らしいサービスを提供できたとしても、お客さまが来るか来ないかはお客さまの意思次第なのです。
一方で、「どの物件を借りるのか」「人件費をいくら払うのか」など、経費のほとんどがオーナーの意思で決まります。
それゆえ、経費からスタートすれば、より現実的な数字を計画に落とし込むことができます。
固定費と変動費
経費は固定費と変動費に分けられます。固定費は、売上が発生しなくても支払わなければいけない経費です。変動費は、売上の増減で変わってくる経費です。
厳密な区別はありませんので、自分で仕分けしてみましょう。今回は、開業相談で私が用いている分け方で進めてみます。
サロンで発生する代表的な固定費は家賃です。人件費も、歩合でないかぎり固定費になります。
また、ホットペッパーのような定期的な販促費も、集客効果に関わらず支払が発生しますので、固定費とします。
実際に固定費を設定してみましょう。
■家賃:20万円
■人件費:スタイリスト2人×30万円=60万円
■ホットペッパー:10万円
合計:90万円
次に変動費です。
典型的なのは材料費です。サロンは売上の分だけ材料を使用します。お客さまがゼロであれば材料は消費されませんので、お金はかかりません。
実際には、明確に固定費と変動費に分けられないものが多いです。
たとえば水道光熱費。基本料金は固定費ですが、使用量によって価格が変わるという意味では変動費です。
そのため、固定費を決めたら、それ以外を変動費ということで推定していく必要があります。
売上に左右される変動費は“率”で表すことも注意が必要です。
売上が100万円で変動費が5万円、売上120万円で変動費が6万円であれば、変動費率は5%になります。
経費の割合
では一般的に、美容室を経営していくときの売上に対する経費の割合(比率)はどうなっているでしょうか。
ビューティガレージで開業されたサロンのデータを見てみると、以下のようになりました。
■原材料費:8~10%
■水道光熱費:3~5%
■消耗品費:5~7%
■その他諸経費:5~10%
合計の変動費率は25~30%くらいに設定して計算してみることをおすすめします。
固定費が90万円、変動費率を25%にすると
90万円÷(1-0.25)=120万円
となり、120万円の売上が損益分岐点だということになります。120万円以上の売上がないと、このサロンは赤字になります。
まとめ
損益分岐点とは経費=売上になる点。
損益分岐点は経費から売上を計算する。
経費には固定費と変動費があり、オーナーが設定する。
固定費÷(1-変動費率)に数字を入れて、損益分岐点を算出する。
後編では、利益を設定した場合の計算をしてみたいと思います。
※参照:損益分岐点を明らかにしてから、事業計画書を作成しましょう。
『事業計画書を作る前に見極めよう!利益を出すためのサロン規模と目標売上の設定』
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。