利益を残すには経費はいくらまで?比率から考える収支計画の作り方【後編】

公開日:2021/02/02  更新日:2021/02/02
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コスト計算

利益を残すには経費はいくらまで?比率から考える収支計画の作り方【前編】』では、営業利益を確保するためにコストコントロールが大切であること、売上比率を設定して経費を割り当てることをお伝えしました。

 

一方で、利益率を設定した収支計画は課題もあります。

 

・1度決めたらコントロールできないコストがある。

・想定売上よりも下回った場合、利益率が確保できない可能性もある。

 

後編では、こうした課題を踏まえて、実際に収支計画を立てていきましょう。

 

サロン規模と物件を決める

1度決めたらコントロールが効かないもの。それはずばり家賃です。たとえ売上がゼロであっても家賃は支払っていかなければなりません。

 

逆に言えば、売上を上げれば上げるほど家賃比率は下がっていきます。したがって、売上をどこまで伸ばせるかを考えて物件を決めなければならないのです。

 

以下の条件で収支計画を立ててみましょう。

 

・都心の好立地(15坪)

・セット面4席 シャンプー台2台

・スタイリスト2人

・オーナー(スタイリスト)1人

 

このケースではオーナーを含めた3人でどれだけ売上を立てられるかを考えていきます。幸いに全員が同エリアで活躍していて指名客の来店も見込めるとします。

 

想定売上 250万円/月

 

家賃比率の理想は売上の10%です。そこで家賃25万円の物件を候補にあげました。

 

利益目標と経費を設定する

オーナーにとって営業利益は、借入の返済、自身の生活費、サロンへの貯蓄などを含んで設定しなければなりません。

 

今回は50万円を営業利益目標にします。まずは想定される売上から得られそうな利益額を考えます。

 

すると営業利益率は500,000円÷2,500,000円×100=20%になります。

 

ここまでできれば、前編と同じように必要な経費を比率から割り当てていきます。

 

・材料費比率10%

・家賃比率10%

・人件費比率40%

・広告費比率10%

・その他経費の比率10%

 

そうすると図のような計画になります。

コストコントロール

 

うまくいかない場合のシミュレーション

想定通りいけば、各経費をコントロールして50万円の利益を出すことが可能です。

 

しかしながら、想定通りにいかない場合も多くあります。そのため計画段階では、うまくいかない場合にも利益を残せるのかを検討する必要があります。

 

例えば、売上が200万円になった場合、十分な利益を残すにはどうしたらよいでしょうか。

 

ここで利益を大きく左右する要素は家賃です。家賃は固定費なので、25万円を下げることはできません。したがって家賃比率は上がります。

 

250,000円÷2,000,000円×100=12.5%

 

家賃比率が上がっても利益が出るかを考えます。その時に250万円の売上の時の営業利益額を出すことはかなり厳しくなります。

 

もし営業利益を50万円確保したいとすると、営業利益率は25%になります。

 

そこで、利益率20%は確保することを目標にして、計算していきます。

 

目標営業利益=2,000,000円×20%=400,000円

 

そこで再度、経費を割り当ててみます。

 

・材料費比率10%

・家賃比率12.5%

・人件費比率40%

・広告費比率10%

・その他経費の比率7.5%

 

家賃比率が上昇した分をどこかで減らさなければなりません。売上に影響が低いものを優先的に見直します。

 

その他経費の内訳を洗い出して、削れるものから抑えていきます。それでも難しい場合には広告費、人件費にも手を加えていきます。

 

コストコントロール

収支計画はいくつかパターンを用意する

開業して事業計画通りに行くケースはほとんどありません。もちろん計画を上回る売上、利益を出すサロンもありますが、思ったよりも売上が伸びずに苦戦するサロンもあります。

 

それゆえに、うまくいった場合のシミュレーションだけでなく、うまくいかない場合のシミュレーションもしておくことが非常に大切です。

 

また、サロン営業にかかる経費をできるだけ正確に把握しておくことも重要です。今のサロンでどんな経費が使われているのかを観察しましょう。

 

ホームページ、カード決済、雑誌、ミネラルウォーター、BGMなどサロンに直接使うもの。

 

交通費、交際費などサロンのほかに支払われるもの。どんな経費があるか分かれば、ウェブなどで費用を調べることができます。

 

何度も指摘していますが、サロンがコントロールできるのは売上ではなく経費です。「その売上ならばいくらまで経費を使うか」はオーナーの意思です。

 

利益を確実に残すためには、様々なパターンで計算をして「うまくいかなくても利益が残る」シナリオを作っておきましょう。

 

 

●文/コンシェルジュ室:安斎

 

 

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ビューティガレージ コンシェルジュ室

日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。

15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。

事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。

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