事例に学ぶ! サロン開業時の予算オーバーに対する意思決定のプロセス【後編】

公開日:2020/02/11  更新日:2020/02/13
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選択肢

サロンの開業にあたって“予算オーバー”という状況に直面した際、どういった選択肢を取るべきなのか。

 

前編』では、横浜で開業を目指すSさんの事例を見ながら考えてみましたが、ようやく見つけた物件でかなりの予算オーバーとなったため、Sさんは考え抜いた末、「物件をあきらめる」という決断を下しました。

 

今回の後編では、最終的にSさんがどのような意思決定を行いサロンをオープンさせたのかを見ていきたいと思います。

 

Sさんの情報を再度確認しておきましょう。

  • 4席・シャンプー2台のサロン(15坪くらいの物件を想定)
  • スタッフ2人(後輩スタイリスト)を雇用予定
  • Sさんの自己資金は150万円/親族からの支援金が100万円
  • 働いているサロンの近くで開業を希望。固定客は月100人程度見込めそう。
  • 2人のスタイリストは別のエリアから来るため、顧客の見込みが立たない。

 

物件をあきらめた一番の要因は、「運転資金を確保したい」からでした。優秀なスタッフを信頼しており、それなりの待遇で雇用したいと思っているからです。

 

その後のSさんの開業プロセスを追っていきましょう。

 

物件をあきらめることのリスク

前編で紹介したように、予算を大幅にオーバーしてしまう物件でも、さまざまな手段で資金調達を行い“あきらめない”ことも可能です。

 

それでも物件をあきらめるという選択をした場合、それ相応のリスクが伴います。

 

一番のリスクは、「開業時期がずれるかもしれない」ということです。開業時期がずれるとオーナーも困りますが、一緒に働くスタッフも困ります。

 

特に今回はスタッフへの考慮が必要でした。オープンが伸びてしまったら、スタッフの気持ちが遠のくかもしれません。

 

以前も物件が流れてしまったために、オープン時期が遅れた事例もありました。このケースでは集客見込みが立つスタッフだったため、サロン規模も含めて開業内容を大幅に変更しなければなりませんでした。

 

また、別のケースでは、物件探しに時間がかかっているあいだに、一緒に働くはずのスタッフが離脱したということもありました。こうした事例も踏まえて、できるだけ早く次の物件を探すように促しました。

 

居抜き物件という選択肢

次の物件を探すと言っても、そう簡単に見つかるものではありません。Sさんは、オープン日がずれることを覚悟しながら新たに探し始めました。

 

すでに事業計画書を完成させていたSさんですが、今回の件で、開業において自分が最も重要視したいことが「一緒に働くスタッフへの待遇」だということを再確認しました。

 

これによって物件選択の判断基準がさらに明確になり、居抜き物件も視野に入れて探し始めたのです。

 

結果として、隣の駅徒歩5分くらいのところに15坪の居抜き物件が見つかりました。さらに、Sさんのオープン予定日よりも前に退去するとのことで、すぐに現地調査に行きました。

 

以下、居抜き物件の情報です。

家賃:25万円
保証金:150万円(家賃6か月分)
礼金:なし
仲介手数料:25万円(家賃1か月分)
前受金:25万円(家賃1か月分)

 

物件取得費用は225万円。前回の物件が300万円でしたので、75万円も抑えることができます。

 

大幅な開業費用の削減に成功

居抜き物件の特徴は、内装・美容器具を譲渡してもらえることです。この物件の内装はキレイで、大きな改修をする必要もありませんでした。

 

また、シャンプー台やセットミラー、スタイリングチェアなどほとんどすべての美容器具が譲渡の対象になりました。

 

Sさんはこの中で、シャンプー台はまだ使えると判断し譲渡を受けましたが、チェアとミラーは買い替える決断をしました。

 

内装については、「壁面の塗装工事」と「看板の取り付け工事」を合わせて27万円でできることがわかりました。

 

バックルームの洗濯機や冷蔵庫は買い替えが必要だったものの、エアコンは使用年数が5年ということで、そのまま使うことを決断。

 

最終的に、造作譲渡の金額は150万円で契約しました。

 

この居抜き物件での開業にかかる費用は以下のようになりました。

 

トータルの開業費用は827万円。前の物件での開業費用が1,600万円でしたので、約1/2にまで減らすことできました。

 

まとめ:開業準備は意思決定の連続

最終的にSさんは開業費用を1,000万円で計画し、750万円を借り入れました。予算よりも費用を抑えることができたため、運転資金を多めに確保できました。

 

 

また借入も少なくて済んだため、返済の負担を減らすことができました。

 

当初の予定通り、Sさんは横浜エリアに4席・シャンプー2台のサロンをオープンすることができました。

 

この事例を通して伝えたいことは、「開業準備には多くの意思決定の瞬間がある」ということです。

 

オーナーの仕事は“決める”ことです。決めるためには軸が必要です。サロンを開業する際に、「自分がなぜお店を開きたいか」「どんなお店を作りたいのか」をしっかり考えなければ、納得する決定はできません。

 

スムーズな開業などありません。開業までには多くの困難と課題があり、その都度、意思決定を行い前に進んでいくのです。

 

ぜひとも自分の軸を持って開業準備を行っていただきたいと思います。

 

 

●文/コンシェルジュ室:安斎

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ビューティガレージ コンシェルジュ室

日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。

15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。

事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。

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