コンセプトや物件選定に!美容サロンのブルーオーシャン戦略とは?
マーケティング用語解説シリーズ、今回はブルーオーシャン戦略です。
2005年に同名称の書籍が刊行し、世界中に影響を与えました。
以降は欠かせない経営戦略論となっております。
ブルーオーシャン戦略で成功した美容サロンの事例はあるのか?
また、反対に失敗事例やデメリットは?
そのあたりを突き詰めていきますので、コンセプトや物件選定でお悩みの方はぜひご一読ください。
目次
ブルーオーシャン戦略の意味
まずはブルーオーシャンの意味からです。
これは血で血を洗う海『レッドオーシャン』の対義語として作られた言葉です。
言いかえると『誰からも荒らされていない海』、つまりサロンにおけるブルーオーシャン戦略は、
【競争相手のいない場所で新しい価値(商品やサービス)を生み出し、他のサロンと戦わずして勝つ戦略】
ということになります。
ブルーオーシャン戦略の成功事例は?
理美容室の場合
理美容室の場合、最も有名な成功事例はQBハウスです。
今となってはカット専門店は一つのビジネスモデルとして確立してますが、
QBが世に出た当初は「そんなに安くて潰れないのか?」と業界全体に衝撃が走りました。
しかし、よくよく考えると10分1,000円(現在は1,200円)ということは60分で6,000円。
理美容室はシャンプー込みで60分4,000円ほどの価格帯が多かったので、
【客数さえ途絶えなければ必ず儲かる】という確固たる勝算があったのですね。
結果は言うまでもなく、理美容室に行きたいけど時間がないという多くの男性にウケて、
全国、もとい世界に規模を広げる超有名サロンとなりました。
また、AguやAUBEなどの業務委託契約型の美容室は美容師の採用市場における大きなブルーオーシャン戦略だったと思います。
15年ほど前の美容師には「独立しないと儲からない」という風潮がありました。
面貸しという概念はありましたが普及しておらず、「自分の条件に合った面貸し美容室を探す」という考えはありませんでした。
業務委託契約型の美容室を展開したことで、給与面に悩める美容師に独立や転職(正社員)に変わる新しい選択肢ができ、
その結果、多くの優秀な美容師を獲得し多店舗展開を進めることができました。
また業務委託契約型の美容室が提供している、
プチプラ(安いけど安っぽいサロンではない)の価値観も当時にはないブルーオーシャン戦略だっと思います。
エステサロンの場合
エステサロンは痩身の場合、市場に出てない革新的な痩身マシンが世に出ることで他店とのメニュー差別化ができ、
需要があるエリアで提供しているサロンがなければブルーオーシャンが狙えます。
エンダモロジーやハイフなどがこれにあたりますね。
また、ミュゼを始めとした脱毛専門サロンはブルーオーシャン戦略で成功した事例と言えるでしょう。
(近年は大手サロンが少し不調ですが・・・)
ミュゼができるまでは脱毛施術は複合エステサロンのメニューの一つで、専門店は普及していませんでした。
これも社会的な需要を汲んで爆発的なヒットをし、今では脱毛専門店はエステ業界全体の中でも多くの売上シェアを占めるにいたりました。
ブルーオーシャン戦略のデメリットは?
それではブルーオーシャン戦略のデメリットについて考えてみましょう。
一番のデメリットは「マネされやすい」という点です。
競争相手がなく独占的だった市場が崩れ、場合によってはひとたびに反対のレッドオーシャンになり得ることとなります。
先ほど例に挙げたQBハウスも後発のカット専門店が続々と出てきました。
それでもQBハウスの牙城は崩れません。
それは加速的に店舗展開を進めても、必ずターゲットに沿った立地に出店したりサービスを提供することにこだわったためです。
ターゲットにとっては「他のカット専門店よりもやっぱりQBが利用しやすい」となります。
そうしてQBハウスは確固たるブランド力を手に入れました。
ブルーオーシャン戦略はアイデアだけで成功できるというわけではなく、追随が来ても引き離せる複合的なマーケティング戦略が必要ということです。
ブルーオーシャン戦略の失敗事例
個人的にブルーオーシャン戦略で失敗してしまうケースは、ブルーオーシャン戦略とニッチ戦略が混同しているときに起こる思います。
ニッチ戦略とはいわゆる隙間産業で、母数が少ないマイナーなところを特化し狙う戦略です。
例えばいくら美容室で髪質改善が流行していてもトリートメント専門店をやるのはニッチ戦略と言えるでしょう。
仮に他の美容室がマネできない高品質な薬剤やトリートメント技術が売りだとしても、
「カットをしなくてもカットをする以上に髪質改善ができる」という価値を作り出しお客様を獲得しなくてはなりません。
これは容易ではなく、ほんの一部だけが勝てるニッチ戦略と言えるでしょう。
※最近ではサブスク型のセルフトリートメントサロンという新しいスタイルが出てきました。
サロンの人材不足も解消できるブルーオーシャンになりそうで今後どこまで伸びるか楽しみですね。
ニッチ戦略はコアなファンを掴むので高単価や高リピートが期待できますが同時に新規集客が難しいハイリスクな戦略だということを覚えておきましょう。
また、社会的な需要が大きく高まっているときはあえてレッドオーシャンを狙い、少しの差別化を図ることでブルーオーシャンに転ずることもできます。
例えば脱毛専門サロンとしては後発だったけど医療脱毛として安全性を打ち出したリゼクリニックやレジーナクリニックなどです。
物件選定のブルーオーシャン・レッドオーシャン戦略
これまでコンセプトについて話してきましたが、物件選定についてもブルーオーシャン戦略が適応できます。
もちろん、周りに美容室が無ければ無いほど良いということではありません。
地域開発などや大型商業施設のオープンなどでターゲット需要が増えたのにライバルがいなければブルーオーシャンとなります。
ターゲティングを誤るとせっかくのブルーオーシャンでも集客ができないのでご注意ください。
またターゲットの数がサロンの数より多ければ問題ないので、あえてターゲットが密集するレッドオーシャンを選択することもあります。
さらに一見サロンが密集していてレッドオーシャンのようだけど、実は同じコンセプトのサロンがなくブルーオーシャンだったということもあります。
この辺はなかなか型にはまりません。
物件選定の際はネットで調べた数字だけでなく、自分の足で歩き商圏や競合サロンを分析することが大切です。
まとめ
自分が生み出す価値は『ブルーオーシャン』なのか、はたまた『ニッチなのか』よく見極めてコンセプト作成をしましょう。
物件選定におけるブルーオーシャンは「そもそもターゲットがそこに存在するのか」ということを忘れないようにしましょう。
●文/コンシェルジュ室:野呂
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。