事業計画書を見直そう!物件探しで止まってしまったときにやるべきこと
開業のプロセスで一番時間がかかるフェーズは物件探しです。
いつ理想の物件が出てくるかはわかりません。人気エリアだと条件のよい立地はすぐ取られてしまいます。
そもそも事業用テナントの数が少ないエリアでは、昔からのお店が入っていて、なかなか空かないということもあります。
物件が決まらないと、開業スケジュールが大幅にずれることになります。
開業サポートのお客さまの中にも、1年以上物件を探している人もいます。
開業時期がずれても問題のない人は待つことができますが、退社がすでに決まっているなど、開業時期をずらせない人はここでつまずくと様々な問題がでてきます。
独立のタイミングを逃してしまう。一緒に働くスタッフがいなくなる。自己資金が減ってしまう。開業への熱意が冷めてしまう。
物件探しに時間がかかっている場合には、もう一度事業計画に立ち戻ることが大切です。
物件が見つからないパターンを把握する
物件が見つからない問題には大きく分けて2つあります。自分が今どちらの問題に直面しているか、あるいは、どちらのほうがより深刻かを見極めることが大切です。
物件自体がでない
「そもそもテナントが少ないエリアのため出てこない」「人気エリアのため出ていくお店が少なく、テナントが空かない」という問題です。
エリアを絞って物件を探す場合には、そのエリアに詳しい不動産などに協力してもらうことが多いですが、そうした不動産からは「いつ頃動きやすいのか」などエリア情報と時期なども聞いておきましょう。
あまりに物件が出てこない場合には、エリアを広げることも検討してみましょう。例えば沿線の駅をずらしてみる。もしくは、駅近くから少し離れた場所も探してみるなどです。
エリアを広げるためには、2つのことに気をつけましょう。計画の見込み客が減るかもしれないこと、メインターゲットが変わるかもしれないことです。
条件が合わない
このケースでは物件自体は出てきています。
しかし、物件の条件が自分に合いません。
「大きさはぴったりだけど家賃が高すぎる」
「アクセスがすごくいいけど物件が小さすぎる」
「人通りが多い場所だけど路面じゃない」
といった具合に自分の理想の条件に当てはまらないものばかりです。
このケースでは理想の物件を探し続けるのか、物件に適応して計画を修正するのかを検討していきます。
家賃が高い
→ 利益を出すためには売上がどのくらい必要か。そのためにスタッフを増やせるのか。
物件が小さすぎる
→ 席数を減らした場合、回転率をあげたり、営業時間を長くしたりできるか。
路面じゃない
→ 目立たせる方法が他にあるか。建物の1階部分にサロンの看板を置けるか。
物件に求める条件を改めて考える
物件が出てこない場合には、自分が設定している「物件に求める条件」を洗い出してみることも有効です。
「こないだ物件を見に行ってきたんですけど、よくなかったです」
「どのへんがダメでしたか?」
「駅から遠いんですよね」
「駅から何分くらいですか」
「10分かかりました」
「希望としては何分以内が理想ですか?」
「7分ですかね」
「なぜ7分なのですか」
「お客さまが疲れません?」
「7分だと大丈夫なのですか」
この会話では、オーナーは物件の条件を駅徒歩7分以内と設定しています。そこがクリアできないために「よくなかった」と判断しています。
しかし、7分も女性やお子様連れであれば10分かかるかもしれません。また5分だったとしても車の多い大通りを渡らなければならないとなると、それも駅から通う場合には障害になります。
これは7分の理由を明確に答えられなかったことが問題なのではなく、自分の中で固定化された物件の理想像があることで、物件の可能性を吟味できていないことが問題なのです。
詳しく話を聞いてみると、その物件は人通りの多い繁華街の端でした。
確かに駅から来るお客さまは遠いと感じそうですが、この繁華街を通って家に帰る人を集客できる可能性もあります。
自転車置き場も近くにあることから、駅からのお客さまではなく、繁華街に来る人にも訴求できる可能性もあります。
もう一度、自分が物件に求める条件を洗い出し、いろいろな角度から物件を見てみましょう。
参照:『理想のサロンに出会えない! 物件選びで失敗しないための判断基準作り』
妥協できる部分を見極める
絶対に譲れない条件はあるにせよ、なかなか完璧な物件は出てこないため、ある程度の柔軟性は必要です。
先ほどの例では、オーナーは「駅徒歩7分以内」を条件にしていましたが、少し遠くなっても、客数は減らないかもしれないと思い始めました。
見込み客のエリアを調べると、電車を利用する人はおよそ30%でした。それゆえ、駅からの距離は妥協してもよいという判断ができました。
妥協というと「しょうがないからここにする」と聞こえてしまいますが実際は違います。
条件と一致しなくても、サロン運営ができる道筋を見つける、ということです。
その物件であれば、どんな運営になるか、どんな課題がでるか、あるいはその課題は解決方法があるかを考える必要があります。
理想の家賃=15万円
みつけた物件の家賃=18万円
予算より3万円高いけれどもアクセスがよい。
計画以上の売上を作れるかもしれない。
3万円以上売上を乗せられれば、計画の利益目標は減らない。
駅からの距離も近く、見込み客に聞いても「通いやすくて助かる」という声をいただいた。
結論として、予算より3万円高いがこの物件に申込む。
このケースは、家賃にフォーカスしましたが、内装費が思っている以上にかかる場合や、物件が狭い場合にも、同様です。
事業計画書、物件に求める条件、実際の物件を比較して、物件を決めていきます。
参照:『判断基準を明確にしよう!物件選びでの事業計画書の活かし方』
物件探しでも事業計画書を活用しよう
事業計画書は、開業プロセスの中で修正していくことが当たり前です。
最初に考えていた計画通りに物事が進まないならば、物件に適応していく方法を考える必要があります。
それは、「物件が見つからなかったので、しょうがなく決める」という妥協ではありません。
「条件に合わないけども、工夫次第で問題は解決できる」を見極めるということです。
この物件で開業すると、事業計画書をどう変えなければならないのか。計画書を変えても、その物件であればサロン運営ができるのか。
物件探しで止まっている人は、もう一度事業計画書に立ち返ってみましょう。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。