美容室の採用はなぜ難しい?その背景と効果的な求人方法を紹介

公開日:2023/02/28  更新日:2024/08/20
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「本当はもっとサロン展開をしていきたいのだけれど人がいない」

 

無料相談でもこういったお話をよく聞きます。

 

サロンビジネスは労働集約型ビジネスですので、売上も利益も人がいなければ大きくなりません。したがって、サロン経営の肝はやはり採用といえます。

 

一方で、採用は最も難しい経営課題と言われています。日本全体的に見ても、どの業界も人手不足のため、売り手市場であるのは間違いありません。

 

そうした中で、自分の美容室の採用を成功させるにはどうすればいいでしょうか。美容室の採用事情についてお伝えします。

 

美容師の採用が難しい理由

人口減少という日本独自の問題もありますが、美容室の採用活動が難しくなっているのには、美容室特有の事情もあると思います。

 

店舗の増加

令和3年度の調査によれば、美容室の店舗数は26万件を突破しました。一方の従業美容師の人数は56.1万人です。

 

単純計算で美容室1件あたり平均約2人の美容師しか確保できないことになります。

 

資本の大きなサロンは人数を多く確保できているため、一人サロンがかなりの数いることは容易に想像できます。

 

現に、6席規模のサロンを一人で経営しているオーナーもおります。

 

さらに、新しく美容師免許を登録した人は19,315人(令和3年度)です。

 

この人たちは、新卒採用となりますが、小規模サロンが手を伸ばすにはハードルの高い求人といえます。

 

※参考文献

Beautopia 『【2023年1月発表】理美容室の店舗数37万軒に 美容室26万軒、理容室11万軒【2021年統計】

理容師美容師試験研修センター

 

給与・待遇の悪さ

令和元年度の賃金構造基本統計調査によれば、美容師・理容師の平均所得は311万円でした。(企業人数10人以上)

 

「令和2年分民間給与実態統計調査」によれば、平均が433万円ですので、美容師の給与は相対的に低い水準です。

 

また、小規模サロンの場合には、スタッフを社会保険に加入させられず、福利厚生も提供できないケースが多いです。

 

小規模サロンは、スタッフがいないためサロン全体の売上を上げられません。それゆえ忙しいのに給与に反映されないでいるという実態もあります。

 

また、昇給の基準も曖昧です。スタイリストに昇格できるかどうかもオーナーのさじ加減になっているのが実情です。

 

独立開業に相談に来るお客様のなかには、純粋に「もっと儲けたい」と思っている人がかなりいます。

 

「雇用された状態では十分に稼げない」という認知が広まっているのではないかとも思います。

 

※参考文献:

Beautopia『【賃金構造基本統計調査】 理容師・美容師の年収 前年比9万円増の311万4000円

国税庁『令和3年度 民間給与実態統計調査

 

厳しい労働環境

美容師という仕事は体力を使う仕事です。朝から夜遅くまで働くことが多いです。ほとんどの時間、立ち仕事のため、腰痛などになりやすいとも言われています。

 

忙しいサロンでは、お昼休憩さえとれない状況です。

 

さらに練習は営業時間が終わってから。小さいサロンでは教育にかける余裕がないためだと思っています。

 

こうした環境を考えると、一度出産、育児のため休業する美容師が復帰するのは難しくなります。

 

求職者は、スタッフがある程度いて、きつくないシフトが組めるサロンを探すようになるのです。

 

よく利用される求人方法は

次に、実際の求人方法を見ていきましょう。美容師の求人方法も様々ありますが、ここではよく利用されているものをお伝えします。

 

リファレル採用/紹介採用

リファレル採用とは、会社の社員(サロンのスタイリスト)に人材を紹介してもらうことです。費用がかからず、人材のミスマッチを減らせることがメリットです。

 

スタッフがいない場合には、自分自身の横のつながりでスタイリストを採用するケースもあります。「知り合いの美容師の後輩」といった感じで、知り合いを通じた採用は美容業界では活発です。

 

SNS採用

それに近いところではSNSを使った採用活動もあります。ソーシャルにつながった人に、アプローチしていきます。特にインスタを使った求人は増えています。

 

SNS採用にはいくつかメリットがあります。

 

・フォロワーを使って、サロン情報を拡散できること。

・低コストで運用できること。

・求職者と直接コミュニケーションできること。

 

一方で、SNSで効果を出すには、継続がポイントになります。したがって長中期的な取り組みになります。また、コンテンツ内容をしっかりと作りこむ必要もあります。

 

専門求人サイトの利用

求人サイトは、WEBプラットフォームを通じたサロンと求職者のマッチングサービスです。

 

リジョブ」は美容室求人サイトとしては最大手であり、登録者数もかなり多いです。

リクエストQJ」は、人材紹介や派遣といったサービスも展開中です。

 

さらに最近「ホットペッパービューティーワーク」も登場しました。

 

ホットペッパーとの連携でサロンスタッフ、人気メニュー、客層、口コミが表示できるため、よりリアルにサロンイメージを伝えられます。

 

採用管理サービス

企業が採用業務を効率的に行うためのクラウドサービスのことを指します。

 

具体的には、求人情報の投稿や管理、応募者の選考、面接スケジュールの調整、内定の出し方などの採用プロセスを一元管理することができます。

 

自社の求人サイトを無料で作ることができたり、後述の求人検索エンジンに無料で掲載出来たりできます。

 

代表的なサービスがリクルートの「Air Work」であり、ビューティガレージが提供している「採用係長」です。

 

求人検索エンジン

求人検索エンジンとは、複数の求人情報サイトや自社の求人サイトなどに掲載されている求人情報を集約し、検索や閲覧が可能なサービスのことです。

 

求人検索エンジンには、検索条件に合わせた求人情報の絞り込み機能が充実しており、経験年数や業種、勤務地、給与などの条件で検索することができます。

 

具体的には、

 Indeed

 求人ボックス

 スタンバイ、などがあります。

 

採用の前にやるべきこと

実際に採用を行うときには、採用計画を立てる必要があります。

 

採用の目的を決める。

そもそも「なぜスタッフが必要なのか」という目的を明確にしましょう。

 

おそらく多くはキャパオーバーが原因。業務が回らない上に、機会損失もあります。あるいは今後の店舗展開のための後継者の育成なども考えているかもしれません。

 

店舗展開を考えていないとしても、自分の体力が落ちてきたため、以前と同じ働き方ができない、という理由もあります。

 

次に、スタッフの役割について考えましょう。

 

自分のお客さまを引き継いでもらうのか、新規客が取れるための枠をあけるのか、など役割をできるだけ明確にしましょう。

 

スタッフに求めることがわかれば、採用基準や求人票の中身も明確になります。

 

例えば、シャンプーやカラーといった作業をメインにやってもらうことで、自分のキャパシティを増やしたいのであれば、フルタイムの経験豊富なスタイリストではなくてもよいはずです。

 

収支シミュレーションしてみる。

スタッフを一人雇用するということは、人件費が増えることでもあります。したがって、人が増えても売上が伸びなければ利益が下がってしまいます。

 

期待できる売上はどのくらいか。客数が増える根拠は何かを考えて数字を出してみましょう。

 

美容室の人件費は売上の40~60%と言われています。

 

単純計算ですが、30万円の給与を渡すのであれば、30万円÷40%=75万円の売上目標が算出できます。

 

採用の費用対効果を測定する。 

採用にはお金がかかります。しかし、すぐに効果が見えるものでもありません。だから二の足を踏むオーナーもいらっしゃいます。

 

「どのくらいのお金をかければ、働き始めてどれくらいで元が取れるか」

 

採用は長期的に見なければなりません。採用にかかる費用、採用してから生み出される利益を分析しましょう。

 

こちらもざっくりとでいいので計算をしてみましょう。

 

採用スタッフの想定する売上75万円、人件費30万円・原価率10%とすると、一人のスタッフがもたらす利益は以下のようになります。

 

75万-7.5万円-30万円=37.5万円

 

もし採用に100万円をかけたとしても、月に37.5万円の利益が増えるとしたら、3ヶ月で元は取れる計算になります。

 

最初から利益がそこまで出せないとしても、10万円でも利益が増えれば1年未満で回収できます。

 

当然、人を増やすと同時に集客にも投資を行うという判断もあるかもしれません。採用も集客も中長期的な視点を持たなければ、なかなか投資と認識することができません。

 

採用は高いと思っている場合、数字にすることは非常に有効だと思います。

 

美容室の採用を成功させるには

以前、記事でも書いた通り、求人と集客は似ています。

 

求職者のニーズを把握する。

お客さまが求めるニーズを理解して、サービスに反映するのと同じです。求職者が求める条件を理解して、雇用形態、労働時間、給与、福利厚生、休日などを設定していきましょう。

 

働き方が多様化する昨今、働き手が何を求めているかを知ろうとすることはとても大切です。積極的に美容師仲間と情報の共有をしましょう。

 

サロンの魅力を伝える。

集客の時には、サロンのよさをアピールするためポータルサイトや、メディア、あるいはSNSなどで積極的に情報を発信しています。

 

求職者に対しても同様です。サロンの雰囲気、スタイリスト(オーナー)の人となり、人気のメニュー、顧客層など、伝えられるものをしっかり求人メディアを使って訴求していきましょう。

 

長く働いてもらう環境を作る。

集客はリピートが命です。ずっと通ってもらえるサロンを作るにはサービスを磨き続けるわけです。スタッフに対しても同じ。ずっと通ってもらえるように、働く環境を常に改善していきましょう。

 

採用難といわれる時代ですが、しっかりと戦略を練って求人を成功させましょう。

 

参考記事:『美容室 採用対策: 効率的な人材確保と育成のための5つの戦略

 

採用・教育に関するご相談もお受けいたします。詳しくは開業無料相談で。

 

 

●文/コンシェルジュ室:安斎

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ビューティガレージ コンシェルジュ室

日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。

15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。

事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。

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