2020年開業を目指す人へ! 失敗しないサロンづくりの条件とアドバイス

公開日:2020/01/01  更新日:2020/01/07
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新年あけましておめでとうございます。

 

昨年はSALONスターターをご愛読いただき誠にありがとうございました。

 

本年も、サロン開業者に役に立つ情報を提供していきたいと思っておりますので、何卒よろしくお願いいたします。

 

年始ということで、今年の目標を立てる人も多いと思います。SALONスターターの読者であれば、「今年こそは自分のお店を持ちたい」と考えている人も多いことでしょう。

 

しかし、日本経済は停滞に入る兆候を見せており、美容業も競争が激しさを増しています。廃業率も高くなっているなか、念願のオープンを果たしたとしても5年間生存できないサロンも増えているようです。

 

ということで、新年最初の記事は、2020年に開業を目指す人へ、失敗しないサロンを作るためのポイントをお伝えします。

 

供給過多がもたらす悪循環

2019年11月、東京商工リサーチが『美容室の倒産状況』を発表しました。※1

 

この発表をまとめると、

  • 美容室の倒産件数が昨年に比べ増加
  • その9割が資本金1000万円未満の小規模サロン
  • 倒産の原因の8割が業績不振
  • 休廃業も過去最多を記録

という状況です。

 

現在、美容室は全国で25万件を超えています。これはコンビニの約5倍の数。人口は減っているのにサロン数が増えている、つまり供給過多なのです。

 

供給が過剰になると、価格競争が起こります。価格が下がると、客数を増やさなければなりません。

 

客数を増やすために、ホットペッパーなどの広告に投資します。ここで増大した経費を調整するために人件費を抑制し、安い給与でスタイリストを雇うことになります。

 

その結果、スタイリストは不満を持ちすぐにやめていきます。サロンビジネスは労働集約型ビジネスですから、スタイリストがやめれば売上は伸びなくなります。

 

現在、多くのサロンがこの悪循環に陥っています。

 

※1:『美容室の倒産、過去最多の見込み。前年比3割増の勢いで初の100件超えか』 | BeaUTOPIA

 

キーワードは“付加価値”

この悪循環に陥らないためには、付加価値をつけて価格を下げないことが大切です。

 

つまり、「いかに他のサロンとは違う価値を提供できるか」ということです。差別化できれば、価格競争を避けることができます。

 

「髪を切る」「髪を染める」「パーマをかける」。美容室で提供できるメニューはどこも同じです。だからこそ差別化して、美容室としての価値を高める努力が必要です。

 

SALONスターターでは、付加価値を出すには“コンセプトづくり”が大切と訴えてきました。コンセプトとは、サロンの目指す方向性です。

 

そしてこのコンセプトは、顧客視点で考える必要があります。

 

顧客視点で価値を作り出した好事例

顧客視点について、実際にコンシェルジュ室でサポートしたサロンの事例を見てみましょう。

――

あるサロンオーナーは、ターゲットを30代後半の主婦に設定しました。出店エリアは新興住宅地で、人口動態を調べると、半径1kmの35~39歳女性人口が3,000人程度いることがわかりました。

 

街を観察してみると、平日はベビーカーを引いたママさんがほとんど。住宅を見ると、ベビーカーや子供の自転車が置いてある家ばかり。

 

ここから、「ママさんが子連れでも通えてキレイになれる美容室」として打ち出すことを考えました。

 

訴求メニューは“シャンプー&ブロー”で、カットにシャンプー&ブローをつけるだけでなく、シャンプー&ブロー単品でも訴求。

 

「ママさんたちは子供の面倒が大変で、シャワーがなかなか浴びられない」という話を聞いて、キッズスペースで子どもが遊んでいる間に髪を洗ってもらえる価値を打ち出しました。

 

ホットペッパーでは平日限定でクーポンを出すなど、ターゲットを絞って訴求しました。

 

これらは、「誰にどんな価値を提供するか」を考えて作った良い事例だと思います。

 

儲かるための“計数感覚”を身に着ける

いくら付加価値をつけたからといって、お客さまが来てくれる保証はありません。

 

お客さまが来る・来ないはコントロールできないからです。ということは、サロンのコンセプトや価値が受け入れられるまでは、我慢しながら経営していくことになります。

 

そこで必要なのが“計数管理”です。先ほどのサロンの例でみていきましょう。

――

先ほどのサロンは、事業計画書を作成するときシミュレーションを行い、損益分岐点を60万円にしました。

 

売上が60万円あれば、30万円ほどの営業利益が確保できます。そうすれば返済や生活費が十分まかなえます。

 

このサロンでの平均客単価は9,000円でしたので、67人の集客が目標です。

 

独立前に働いていたサロンからは少し距離があったため、自分の見込み客を40人程度と見込みました。67人を集めるためには、残りの27人を広告媒体を使って呼ぶ必要があります。

 

すぐにはスタッフを増やさず、まずは1人で60万円売り上げることを目標にしました。

 

大きな固定費は家賃とホットペッパーのみでしたので、固定費+αで支払うべき費用の30万円×6か月分、計180万円を現金で用意しておきました。

 

初月は、新規集客が18人、前サロンからのお客さまが44人。単価は8,720円で、売上が540,640円となりました。目標には届きませんでしたが、赤字にはなりませんでした。

――

上記のような計算をするのが計数管理です。

 

数値による目標設定や分析は、サロンが軌道にのるまではコツコツと行う必要があります。

 

目標の利益、客数などを達成するために、さまざまな施策を打たなければなりません。

 

万が一に備えての資金繰りも大切です。固定費の6か月分くらいは現金として残しておきましょう。また、1か月の営業実績を振り返り、経費のコントロールも欠かせません。

 

まとめ:サロンオーナーは美容師ではなく経営者

お気づきかと思いますが、コンセプトづくりと計数管理は、美容師ではなく経営者の仕事です。

 

サロンが失敗してしまう原因の一つは、オーナーが美容師のままサロンを経営してしまうことです。

 

店舗でスタイリストとして働いているうちは、サロンの価値創造や計数管理に関わることはありません。

 

「自分の技術でいかにお客さまを満足させられるか」だけが問われます。

 

しかし、オーナーになると全く違う視点でサロンを運営しなければなりません。

 

ディーラーや広告会社、税理士などとビジネスの取引もします。テナントの家賃も払います。従業員の面倒も見なければなりません。

 

こうした経営者としての仕事を、オープンして実践で学んでいくのでは遅すぎます。サロンをオープンするまでに“経営者”になっておかなければダメなのです。

 

開業の準備とはつまり、「美容師からサロンオーナーへの移行期間」です。

 

2020年に開業を志す美容師は、その意識をもって準備していきましょう。

 

 

●文/コンシェルジュ室:安斎

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ビューティガレージ コンシェルジュ室

日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。

15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。

事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。

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