事例から学ぶ!居抜き物件を借りて内装を大きく変える場合に起こるトラブルとは?

公開日:2021/03/31  更新日:2021/04/01
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美容室 内装

オーナーの中には、居抜き物件を見つけて契約しても、譲渡された状態でサロンを始めるのに躊躇する人もいます。

 

したがって「内装が気に入らない」とか「席数を増やしたい」という要望がでてきます。

 

基本的には居抜き物件はそのまま使うことを前提に借りだされているため、大きく内装を変更する場合には注意が必要です。

 

前回は、サイドシャンプーをリアシャンプーに変えることで生じたトラブルを紹介しましたが、今回のケースはより複雑です。

 

今回の居抜き物件の情報です。この居抜き物件に決めようと思ったオーナーは、この立地であれば指名客を多く連れて来られると判断しました。

 

しかし、一方で、居抜きの内容には満足しておらず、大きく内装や器具を変えたいと思っていました。

 

<今回の居抜き物件データ>

大きさ:8坪

席数:2席

シャンプー:1台

家賃:11万円

造作譲渡費:100万円

 

内装工事はゼロベースで現地調査すること

この居抜き物件でシャンプー台を2台にしたいという要望がでたために、現地調査を行いました。

 

たとえ居抜き物件でも、席数やシャンプー台を増やす場合には、設備の容量を再度確認する必要があります。

 

「美容室の居抜き」とは言っても、それはその設備(席数、シャンプー数)でいけるという話であって、スペックが変われば、もう一度ゼロから調査をしなければなりません。

 

今回のケースでは、調査の結果、シャンプー台を増やすことで1)ガス容量が足りなくなること、2)排水口が13mmのためシャワーが弱くなる可能性があること、が判明しました。

 

そうなると、単にシャンプー台を取り付けるだけでなく、設備環境を改善するためボイラーの取り付けが必要になりました。

 

このように、設備を追加する場合には、電気・ガス・水道の容量が変わることを念頭において調査をすべきです。

 

貸主からの許可を得ること

また、大きく内装工事を行う場合には、貸主、あるいは大家への許可が必要になる場合もあります。

 

しかし、追加工事に関して難色を示す人も多くいます。

 

今回、ボイラーを設置するにあたって、配管を通すための新しい壁穴を開けることを許可してもらうようにお願いしましたが、貸主からの返答はNGでした。

 

したがって既存の壁穴を利用するしかなくなりました。

 

居抜きのまま使ってもらうことは、大家さんにとってもメリットがあります。

 

そのため居抜きをいじることによって起こりうる物件への損失は丁寧に説明しなければなりません。

 

解体・撤去費用を想定すること

居抜き物件を大きくいじる場合には、造作物をすべて撤去したり、不要な仕切りなどを解体したり、運んだりします。

 

それゆえ内装費用に加えて解体・撤去費用がかかります。

 

今回のケースは、中のデザインが好みに合わないため不要と思う残置物はすべて解体撤去します。

 

それは当然、内装費が高くなるということです。

 

これは、美容室の居抜き物件に関わらず発生します。

 

好立地のところに飲食店の居抜き物件がありました。

 

ところが、コロナ禍でなかなか借り手が見つかりません。

 

そこで、あるオーナーは飲食の居抜き物件のまま借りて、美容室内装に変えようと考えました。

 

しかし、いくつものテーブルや、厨房など飲食店の残置物を処分しなければなりません。

 

見積もりの結果、とても高い内装費になってしまい断念しました。

 

「どうしてもその立地でオープンしたい」「オープンすれば利益が見込める」というのでなければ、本来前の借主が片付けるべきものをかわりにお金を払うことには躊躇します。

 

何かしら残置物がある場合には解体・撤去費用は必ずかかると言ってよいでしょう。

 

スケルトン物件と比較すること

居抜き物件は、あくまで居抜きのままの仕様で入居する人に向けて紹介しています。

 

したがって、まずは居抜きのまま即入居したい人がいれば、その人が優先になります。

 

居抜き物件を借りたのに、一度スケルトンに戻して内装を変えるという方法はトータル費用が上がります。

 

そこで今回のケースでも、いくつか資金計画を立ててみました。

 

もともと居抜き物件での契約であれば費用は以下のようになります。

 

<居抜き物件で契約>

物件契約費:100万円

造作譲渡費:100万円

 

トータル200万円でサロン(ハコ)を完成させて、営業をスタートできます。

 

抜き物件を借りて、内装と美容器具を大きく変える場合を見てみましょう。

 

<居抜き物件契約後、内装器具の変更>

物件契約費:100万円

造作譲渡費:100万円

解体・撤去費:80万円

内装費:400万円

ボイラー取付け:100万円

美容器具(セットミラー、チェア、シャンプー2台):120万円

 

トータルの設備資金がおよそ900万円になりそうです。

 

居抜きをそのまま利用する場合と比較すると実に700万円の違いです。

 

そこで今度は、同規模のスケルトン物件でサロンを作った場合をシミュレーションしました。

 

<8坪のスケルトン物件(物件契約費は同じと想定)>

物件契約費:100万円

内装費用:400万円

ボイラー取付け:100万円

美容器具:120万円

 

トータル720万円になります。

 

この居抜き物件で内装を変える場合と、スケルトンでサロンを作る場合だと180万円ほどの差が出ます。

 

こまで計算して、それでもこの180万円を多く払ってもこの立地がよいと思える理由を考えます。

 

合理的な意思決定をするためには、こうした比較も行うべきです。

 

居抜き物件をいじることのリスク

居抜き物件はそのまま使うのが理想です。

 

しかし、「なかなかテナントが空かない」とか、「この立地なら客数も増やせる」など特別な理由がある場合には、居抜き物件を借りて、内装を手直ししていくことになります。

 

そこで注意が必要なのは、居抜きの席数、シャンプー台を増やす場合です。

 

そもそも現状の設備が、ぎりぎりの状態であれば、1席増えることで電気容量が不安定になりますし、シャンプーが増えればガス・水道が厳しくなります。

 

美容室の居抜きだからと高を括らず、現地調査で確認しましょう。

 

さらに、居抜き物件に手を加える場合には、大家さんからも、前オーナーからも様々な注文が入ります。スケルトン物件よりも、交渉が複雑です。

 

居抜き物件に関するトラブルは多いと感じます。開業サポートでも、居抜き物件を大幅に改装してオープンしたサロンもあります。

 

どのケースもすんなりと進むことはありませんでした。

 

居抜き物件に手を加える場合には、ある程度の妥協も必要になります。

 

3者が納得して合意できるために、誰も損をしない方法を考えなければならないからです。

 

今回のケースは、実際に進行中です。シャンプー2台を諦めて、その代わり、営業時間を長くするなどオペレーションの工夫が必要かもしれません。

 

そこまでする労力に見合うだけの、あるいは大幅な開業費用の増大に見合うだけの成果が期待できるかどうか、丁寧に考えて、決断しなければなりません。

 

 

●文/コンシェルジュ室:安斎

 

※参照

こちらのサロンオーナーは、居抜き物件を一度解体して、オリジナルサロンにしました。

トレンドとナチュラルを組み合わせて「あなただけのデザイン」に|自由が丘

 

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ビューティガレージ コンシェルジュ室

日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。

15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。

事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。

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