設備は十分なのに使えない?現地調査でわかった物件選びのハードル
物件選定の一つの基準として、美容室に適した建物であることが挙げられます。
電気、ガス、水道といった設備面が十分でなければ、内装工事が高くなってしまいます。
現地調査では、電気、ガス、水道の容量を調べたり、足りない場合には容量を増やせるかどうかなどを検討したりします。
先日、お客さまが先に内見をして、電気、ガス、水道の容量などを調べました。
数字だけをみると現在の設備で美容室ができそうだなと思いました。
しかし、実際に現地調査を行ってみると、「ボイラーを室内に導入しないと美容室ができない」ことがわかりました。
これは一体どういうことでしょうか?
今回は、先日の現地調査での出来事を中心に、設備以外に生じる物件選びの問題点についてお話します。
設備面は問題ないのに
今回サポートさせていただくサロンの大きさはセット面4席とシャンプー2台です。
二人でサロンを経営していく予定です。良さそうな物件が見つかったとのことで、ご連絡をいただきました。
事前にオーナーが調べた情報は以下の通りでした。
・電気には電灯と動力があって、ドライヤーを使う場合の電灯は40A。
1台12Aを使うので、ドライヤー3台同時に使っても問題ない。
動力は別にあるため、エアコンによる影響も受けない。
・水道。給水管口径をみると20mmでした。
路面店のため、シャンプー台2台を置いても問題なさそうです。
・ガス。こちらも16号給湯器を2台設置できる容量がありました。
建物自体に美容室として設備は十分でした。
しかし、実際に現地調査に行くと、大きな落とし穴がありました。
給湯器が外につけられない
ガス容量に問題はなかったはずなのにボイラーを導入せざるを得なかった理由。
それは、給湯器を設置できる場所がなかったのです。
テナントは1階に3つあり、候補のテナントは真ん中です。
ということは実際に設置できる場所は、テナントの裏側になります。
しかし、テナントの裏は大家さんの敷地。そこに設置してはいけないことになっているのです。
よく見るとエアコンの室外機も、長い管を通って敷地の端っこに置かれていました。
結果的にここで美容室を行うには「室内にボイラーを設置する」以外に方法がありませんでした。
ボイラーを導入すると80万円~100万円かかります。それだけ内装費が上がってしまします。
せっかく設備としては申し分ない物件だったのですが、給湯器を設置できないという理由で、高くついてしまうことになります。
スペックは十分なのに、美容室が難しい物件
この例でわかるように、設備面だけでは物件を判断できないことがよくあります。
建物自体に問題がある
雑居ビルになると、先ほどのように給湯器やエアコンの室外機を置くスペースがない、ということがあり得ます。
また高層階になると水圧が弱くなります。そうなると給水管口径は20mm以上あっても、ボイラーが必要になります。
大家さんの都合による
建物の所有者が、工事をどこまで許容するかという部分も確認が必要です。
例えば、外壁に新たに穴をあける行為は、原状回復では戻せません。(壁とは別の素材で穴を埋めるため完全には元に戻らない)
こういうリスクを嫌がる大家さんもいます。
居抜き物件では「必要以上にいじってほしくない」との理由から、シャンプー台の増設なども断られたケースもありました。
こうした事例からわかるのは、美容室としてのスペックが十分にあることと、それを利用できることは別問題ということです。
あらためて現地調査の意義
美容室を開業するためには、電気・ガス・水道が生命線です。
ここが十分でなければオープン後営業に支障がでます。
そのため、まずはこのスペックを調べる必要があります。
単にガスや電気の容量だけならば、管理会社や電気・ガス会社に問い合わせしてしまえばわかってしまうことでもあります。
しかし実際にそのスペックをちゃんと利用できるのかは、現地調査を行わなければわかりません。
給湯器の置き場所などの物理的なハードル、工事内容の承認といった大家さんのハードルをクリアしなければ工事は行えません。
今回の事例は、あらためて現地調査の大切さを痛感した出来事でした。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。