居抜き物件で美容室を開業する際のポイントとは? メリットからデメリットまで徹底解析
美容室を開業することは、多くの美容師にとって夢の一つです。
多くの人が自分の理想とするオリジナルサロンを実現したいと考えていますが、最近では適切なテナントを見つけるのが難しくなったり、物価の高騰に直面したりしています。
そんな状況の中、開業を目指す人々の間で「居抜き物件を利用した開業」が注目されています。
そこで今回は、居抜き物件での開業について、知っておくべきメリットとデメリットをあらためて解説していきたいと思います。
参考記事『カンタン解説! 「スケルトン物件」と「居抜き物件」の基礎知識』
目次
居抜き物件のメリット
初期費用の削減
何といっても居抜き物件で開業するメリットと言えば、初期費用を抑えられることです。居抜き物件の場合、内装や設備器具がすでに備わっている状態です。
スケルトンから内装を作っていく場合、坪単価約50万円ほどになりますが、居抜き物件では、内装費をかなり抑えられることになります。
以下の事業計画書を見てください。このサロンオーナーは居抜き物件で開業しました。
このケースでは、美容器具をすべて取り替えたので、費用がかかっていますが、内装の部分は造作譲渡の77万円になっています。
もしスケルトンで考えていたら、内装費だけでも800万円以上かかるはずですから、2,000万円ほどになっていたかもしれません。
そう考えると、スケルトンでの開業に比べて、約65%まで抑えることができたと言えます。
オープンまでの時間短縮
また、居抜き物件の開業はオープンまでが早くなります。内装工事をしなくて済みますし、もし美容器具などもそのまま使う場合には、取り付け工事も不要です。
内装工事が入ると、物件契約して入居した日から工事がスタートし、完成までに約3~4週間かかります。その間、家賃が発生します。営業していないのに家賃が発生する、いわゆる空家賃です。
また、本人がすでに退職している場合だと、お客さまを待たせることになります。オープンまでに時間がかかってしまうと、お客さまが別のサロンに移ってしまう可能性も出てきます。
そういう意味でも、オープンまでの時間を大幅に削減できる居抜き物件の開業は、非常に魅力的でもあります。
顧客の引継ぎ
居抜き物件は、その前に経営していたサロンの顧客を引き継ぐことができる場合もあります。もちろん、その経営者の指名客は移転先までついていくことになるでしょう。
しかし、そのエリアに住んでいるお客さまで、かつ新しいサロンを探すのが面倒という人にとっては、同じ場所に新しい美容室ができればそれに越したことはありません。
特にご高齢のお客さまは今さらサロン探しはしませんので、前オーナーから、そのまま引き継いでほしいと言われる場合もあります。
居抜き物件は、自分が狙っているエリアに必ずしも出てこないかもしれませんが、集客がある程度見込めるのであれば、自分の指名客が想定しにくい場合にでもオープンできる可能性が広がります。
居抜き物件のデメリット
自由度の制限
居抜き物件では、既存の内装や設備に合わせてサロンを運営する必要があり、自由度に欠けることがデメリットとして挙げられます。
これは当たり前のことなのですが、はじめて開業を考えている人はできるだけ自分のイメージに合わせてサロンを作りたいため、こうした制約が気になってしまいがちです。
もちろん、居抜き物件のレイアウトやイメージを変えることは可能です。
しかし、それを行うと費用がかかってしまいます。「サイドシャンプーをやめてフルフラットにする」場合には、水道管の工事などにも範囲が及びます。したがって、それなりにお金がかかってきます。
そのレイアウトやサロンイメージをどの程度まで許容できるか、どこまで工事をするのか、をしっかり検討する必要があります。
設備の老朽化
居抜き物件のもう一つの大きな懸念点としては、設備や器具が中古品のため老朽化している可能性があることです。
居抜き物件の設備や器具をそのまま利用する場合、見た目にはわからない故障や修理が必要な箇所があるかもしれません。
これらは、居抜き物件を実際に内見してもわからないかもしれませんし、前オーナーも知らないかもしれません。
つまり後になってから高額な修繕費用として現れるリスクがあります。「ちょっと古いけどまだ使える」と思って引き継いでしまって、オープン後すぐ壊れたというケースも散見されます。
その設備はどの程度使っていたのか、これまでに故障はなかったか、など前オーナーにしっかりヒアリングするとともに、償却期間が過ぎてしまった器具、設備に関しては、余力があれば買い替えを検討したほうがよいと思います。
参考記事
『事例から学ぶ! 居抜き物件でありがちなトラブルと予防策【内装編】』
『事例から学ぶ! 居抜き物件でありがちなトラブルと予防策【契約編】』
前テナントのイメージ
居抜き物件は、前のオーナーが自分のサロンを売却することで発生します。したがって、前オーナーがなぜサロンを売却するかについても考慮しなければなりません。
もちろん、店舗拡大のために移転オープンするという前向きな動機もありますし、うまく集客ができなかったために撤退する場合もあると思います。
事情を教えてくれない可能性もあります。その場合には、立地は悪いのか、賃料は高すぎないか、近隣の環境はどうなのか、人通りが少ないのかなど様々な視点から分析もしておくべきです。
また、前オーナーの経営する美容室のコンセプトと、自分がやろうとしている美容室のコンセプトが全く違う場合にはターゲットも当然異なります。
そういう意味ではイメージを一新しなければ、望んだターゲットが来店しない可能性も出てきます。
まとめ
居抜き物件を選択する際は、これらのメリットとデメリットを十分に理解し、ビジネスプランと照らし合わせて最適な選択をすることが重要です。
ビジネスの目的や戦略に合わせて、居抜き物件が提供する機会を最大限に活用しつつ、潜在的なリスクを適切に管理することが成功の鍵です。
リスク管理をするためにも事業計画書が必要なのです。
居抜き物件が見つかったからといって、安く早く開業することばかりに頭が行きがちです。
しかし、居抜き物件であろうと、スケルトン物件であろうとやるべきことは一緒です。つまり事業計画書を作り、シミュレーションを行うことです。
ビューティガレージでは豊富な居抜き物件を提供しております。居抜き物件に興味がある方は、適切な物件を見つけるために「サロン不動産ネット」の利用を検討してみてください。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。