美容室の独立開業にM&Aという選択肢を考えてみる
美容室の独立開業を考える際、最近注目されている手法の一つがM&A(企業の合併・買収)です。M&Aと言えば、企業の買収をイメージする方が多いのではないでしょうか。
しかし美容室を売る人も増えており、従業員がそのサロンを買い取る形で開業するケースもよく聞きます。先日、オーナー様から従業員にサロンを売却したいというご相談を受けました。
M&Aはもはや美容室開業の選択肢の一つだと言えます。
以前もコラムで紹介しましたが、あらためてM&Aによる開業について考えてみましょう。
参考記事:『スタッフが引き継げる!サロンM&Aの今』
目次
M&Aが注目されている背景
近年、美容業界においてM&Aが注目されている背景には、以下のような要因があると思います。
業界の競争激化
美容業界は競争が激しいため、新規開業してもすぐに軌道に乗せることはかなり大変です。さらに物価高騰のあおりを受けて店舗づくりのコストも大きくなります。
そうしたリスクを軽減するために、既存の成功したサロンを買収することで、安定した顧客基盤やブランド力を手に入れることができます。
経営者の高齢化
例にもれず、美容室オーナーの高齢化が進んでいます。後継者がいない場合には、そのお店を畳む必要がありますが、退店のコストや労力を考えると、欲しい人に売却したいというニーズが生まれています。
イチ美容師に戻りたい
独立してオーナーとしてサロンを経営すると、なかなかお客さまに入ることができず、スタッフの管理や税務などに時間を取られてしまい、「こんなんじゃなかったのに」と思う人も少なからずいます。
自分はサロンを売って新たに業務委託として働く人、あるいは新たにオーナーとして迎えて雇ってもらいう働き方をしている人などを耳にするようになりました。
個人事業主でもサロンを買えるのか
もちろん、M&Aによるサロンの買収は大企業だけでなく個人事業主でも可能です。大型のサロンばかりではなく、小規模サロンも売りに出されていることも増えました。
以下のポイントを押さえておきましょう。
資金調達
通常の新規開業と同様に、日本政策金融公庫からの借入れも民間金融機関からの借入も可能です。ただし、設備投資がそこまでかからないため、運転資金での借入れが主になることが多いです。
当然ですが、事業を買収して、店舗自体を作り直すこともあり得ます。老朽化やイメージチェンジといった理由で全部変えてしまうと、さらに費用がかかります。
専門家の支援
M&Aに精通した弁護士や会計士、M&A仲介業者のサポートを受けることで、個人事業主でもスムーズに買収手続きを進めることができます。
M&Aと居抜き物件の違い
サロン開業の際、M&Aと居抜き物件(既存の内装や設備をそのまま利用する物件)を比較することが重要です。
大きな違いは、顧客基盤やスタッフを引き継ぐことができるかどうかです。居抜き物件の場合はあくまでサロンを買う(造作譲渡)ですが、M&Aはサロンのすべてを譲り受けます。
M&Aのほうが契約や法務手続きが煩雑で、一定の専門知識が求められます。
契約の方法
M&Aによるサロン開業の際には、適切な契約を結ぶことが重要です。以下のステップを参考にしてください。
買収対象の選定
M&A仲介業者やオンラインプラットフォームを利用して、自分の条件に合ったサロンを選定します。
デューデリジェンス
買収対象のサロンの財務状況や法的問題、顧客情報などを詳しく調査します。
契約書の作成
売買契約書を作成し、重要な条項を確認します。契約書には、買収価格、支払い条件、引き継ぎ内容などを明記します。
契約締結
双方の同意のもとで契約を締結し、必要な手続きを進めます。
引き継ぎと開業準備
契約締結後、サロンの引き継ぎをスムーズに行い、開業準備を進めます。既存のスタッフや顧客への説明、新しいオーナーとしての挨拶なども重要です。
まとめ
前回のコラムで書いた通り、美容業界は採用がかなり厳しい状況です。それゆえスタッフを引き継げるM&Aは、開業者にとってとても魅力的です。
参考記事:『美容室 採用対策: 効率的な人材確保と育成のための5つの戦略』
M&Aによるサロン開業は、多くの利点を持つ一方で、しっかりとした準備と専門家のサポートが必要です。
ビューティガレージグループでもM&Aに関する案件を多数取り扱っております。
くわしくは「サロンM&Aネット」をご覧ください。
「開業後の収益が不安」、「初期投資を抑えたい」、「スタッフ採用に苦戦している」など開業に関してのお悩み、ぜひお気軽にご相談ください。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。