理想のサロンに出会えない! 物件選びで失敗しないための判断基準作り
開業相談を受けていると、中には1年以上も物件を探しているという人がいます。
そうした人の多くは、物件を選ぶときの基準を持っていない、もしくは絞れていないケースがほとんどです。
物件を選ぶというのは、美容室開業にとって最も重要な意思決定です。
物件選定を誤ってしまえば、理想のサロンが作れなかったり、想定しているお客さまが来なかったりしてしまいます。これではサロンの繁盛につながりません。
一方で、物件探しにこだわりすぎると、なかなか理想の物件に出会えません。
そうすると独立のタイミングを逸してしまい、開業のモチベーションが下がっていく人もいます。
そこで今回は、物件を探すためのポイントについてお話しします。
目次
最初に判断基準を決める
情報収集の目的は、何らかの結論を出すことです。
たとえば、お客様はどの美容室に行くかを決めるために、ホットペッパーでサロンを探します。
しかし、やみくもに情報ばかり集めても、たくさんある美容室の中で自分が行きたいサロンを見つけるのは難しいものです。
そこで、お客さまは決定のための判断基準を持ちます。
たとえば「カラーが上手なサロンがいい」「価格が安いサロンがいい」「あんまり騒がしくないサロンがいい」「今すぐ行けるサロンがいい」など、条件を設定するのです。
判断基準が明確であれば、欲しい情報を絞り込むことができます。
これは物件選定にも当てはまります。どんな物件で開業すべきかを決めるには、最初に判断基準を決める必要があるのです。
物件選定の判断基準
物件の判断基準は、事業計画書をベースに作っていきます。物件選定の目的は事業計画書で描いたサロンを実現することだからです。
事業計画書で明らかにすることは、「どんなサロンを作るのか」「予算はいくらか」「儲かるのか」です。
どんなサロンを作るのか
これは、誰に何を提供するのか、ということです。来てほしいお客さまにサロンの価値を提供するのにふさわしい場所かどうかを考えます。
→ターゲットの視点
予算はいくらか
お金は有限ですから、予算を設ける必要があります。物件を取得するのにいくらまで出せるか。毎月支払えるだけの家賃に収まっているかを考えます。
→コストの視点
儲かるのか
サロンの目指す売上を考えます。サロンの目標売上はサロンの規模によって決まります。まずは席数やスタッフ数を決める必要があります。
→キャパシティの視点
判断基準を具体化する
この3つの視点から判断基準を作っていきます。以下のように自問自答しながら具体的に書き出していきましょう。
ターゲット視点
駅近がよいのか、住宅街でもよいのか ⇒ 駅徒歩5分
路面店がよいのか、2階以上でも大丈夫か ⇒ 路面店
コスト視点
物件取得費用は予算内に収まるか ⇒ 物件取得費用250万円以内
家賃は想定売上の10%以内になるか ⇒ 家賃20万円前後
キャパシティ視点
理想の席数、シャンプー台を設置できるか ⇒ セット面4、シャンプー2台設置(13坪~15坪)
もちろん、上記以外にもさまざまな判断基準があると思います。大事なのは、「理想のサロンを作るために、物件に求める条件は何か」を考えることです。
判断基準を絞る
この判断基準をもとに物件を探していきます。理想を言えば、この基準をすべて満たした物件が見つかれば最高ですが、現実的には困難です。
そうすると、優先順位をつけて判断基準を絞っていく必要があります。
上記の判断基準を絞ってみましょう。今回は、バランスよくターゲット面、コスト面、キャパシティ面から一つずつ取ってみました。
■ターゲット:駅徒歩5分以内
■コスト:物件取得費用250万円以内
■キャパシティ:13坪~15坪
妥協点を探る
この判断基準で探した結果、該当しそうな3つの物件が見つかったとします。
ターゲット | コスト | キャパシティ | |
物件A | 駅徒歩5分 | 物件取得費用300万円 | 15坪 |
物件B | 駅徒歩10分 | 物件取得費用220万円 | 13坪 |
物件C | 駅徒歩5分 | 物件取得費用250万円 | 10坪 |
基準を満たしているかどうかを◎×で表してみます。
ターゲット | コスト | キャパシティ | |
物件A | ◎ | × | ◎ |
物件B | × | ◎ | ◎ |
物件C | ◎ | ◎ | × |
こうなると迷いますよね。
どの物件も3つの判断基準うち、1つだけ満たしていないからです。実際にこういう状態で迷っている人の相談を受けることがあります。
ここからはそれぞれ代替案があるかを検討して、妥協できる点を探していきます。
【物件A】
自己資金を追加できたり、融資金額を増やすことができれば、コスト面は解決できます。
一方で、全体の開業コストの中で削れるところがあるかを確認しましょう。
【物件B】
駅徒歩10分でも、ターゲットが集まる施設があり、人通りが途絶えないのであれば、集客はできるかもしれません。
価格を下げたり、駐車場代をサービスしたり、少し遠くても来店したいと思わせる仕掛けを考えられるかが肝になります。
【物件C】
スタート時、スタッフの人数が1人であれば、キャパシティを小さくしてもよいと判断できるかもしれません。
また、席数を減らしても、営業時間やシフトなどを工夫することで目標の売上を作ることができるかを検討する必要もあります。
そういった部分を一つひとつ吟味して、最終的な結論を出します。
ありたい姿から出発すると、判断基準が明確になり、あれこれ悩んで決められないということはなくなるのです。
まとめ:物件選びは判断基準を作ってから
物件選定は以下の手順で行っていきます。
1.事業計画書でありたい姿を明確にする。
2. サロンの開業に必要な3つの視点を意識して判断基準を作る。
3.多すぎると判断できなくなるので判断基準を絞ったり、優先順位をつけたりする。
4. 妥協が必要な場合、代替案があるかを検討する。
もちろん、多くの判断基準を持っていて、物件選定に妥協したくない人もいると思います。それはそれで問題ありません。
ただし、ずっと物件を探していて、全く見つからず、開業する前に疲弊しないように注意しましょう。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。