安定の鍵はキャッシュと自己資金。財務状況から考える開業後のサロン運営
サロンビジネスは、最初にお金をかけてお店を作り、利益を出しながら投資額を回収していくビジネスモデルです。
多くのサロンオーナーが開業するにあたって金融機関から借入れをします。
借入れをしてサロンを作るということは、他者のお金を使ってサロンを作ることと同義です。
したがって、オープンして生み出した利益の一部を返済に当てます。
オープンしてサロンを安定させるためには、まず借入金を減らして、自己資本比率を高める必要があります。
今回は、サロンの財務状況を解説しながら、サロンの安定に欠かせないキャッシュと自己資金について考えてみたいと思います。
目次
サロンオープン時の財務状況
まず上の図をみてください。これはサロンをオープンするときの財務状況です。この図は右(A)から左(B)に読みます。
Aはサロンの開業のために調達したお金を表します。Bは調達したお金が何に使われたかを表します。
Aは自分のお金=「自己資金」と他人のお金=「借入金」に分類されます。トータルの資金に占める自己資金の割合を、自己資本比率と呼びます。
Bはおもに3つに分けられます。上から「現金・預金残高」「サロン設備」そして「その他開業費用」です。
・「現金・預金残高」= オープン時に用意しておくキャッシュです。
・「サロン設備」= サロンの内装や器具などです。
・「その他開業費用」= チラシや消耗品、仕入れなどオープンまでに使った費用です。
図の例では、日本政策金融公庫からの融資1,000万円と自己資金300万円のトータル1,300万円を使って、現金200万円を確保し、サロン設備に800万円、その他開業費用に300万円を使いました。
自己資本比率は23%(300万円÷1,300万円)です。つまりサロンの約8割は借入金で構成されている状態です。
営業利益が財務状況を変える
サロンの目的は利益を出すことです。1,300万円で作ったサロンを経営しながら、毎月、毎年と利益を積み上げていきます。
日々の営業活動によって財務状況は変わっていきます。
まずはAについて見ていきましょう。
借入金の返済
例えば1,000万円を10年で返済する計画を立てたとしたら、毎年100万円が借入金から減っていくことになります。
自己資金の増加
営業利益から、返済金や自分の収入を差し引いて余ったお金(余剰利益)を、自己資金に追加していくことになります。
例えば、年間で100万円の余剰利益をサロンの預金に増やしたら、自己資金は300万円から400万円に増えたことになります。
次にBについて見てみましょう。
現金・預金残高の増加
実際は、この現金を使って、仕入れをしたり、家賃や人件費を払ったりします。
出ていくお金よりも入ってくるお金が増えれば現金・預金残高を増やすことができます。
サロン設備、その他開業費用は基本的に減少
サロン設備はその価値が減っていきます。開業費用は繰延資産として毎年経費として減らしていきます。
サロン設備が増えるのは、新しい設備を購入したときだけだと言えます。
サロンの営業活動を通して利益を出すことによって、1年後には財務状況が大きく変わっていくことが理解できます。
安定の条件はキャッシュと自己資本比率
以上のことから、サロンの営業活動で最も大事なことは、自分で稼いだお金を増やすことです。
利益を出すことで、借入金を減らす。余剰利益を預金残高に加えていくことで自己資金を増やす。
オープン当初の自己資本比率が23%だったのに対して、1年後は30%(400万円/1,300万円)に増えています。
理想は、借入金をすべて返済して、すべて自分の稼いだお金でサロンを運営する状態です。
しかし、短期的にその目標を達成するのは難しいので、まずは50%以上まで持っていけるとよいと思います。
また左側(使いみち)を見れば、運転資金として200万円からスタートした現金・預金残高をいかに多く増やせるかが安定の鍵になります。
キャッシュが不足した時点でサロンは営業ができなくなるからです。
毎月の経費と返済金が支払えるだけの現金・預金残高を確保しましょう。
サロンオーナーは、売上や利益だけでなく、自己資本比率とキャッシュも指標として目標設定することをおすすめします。
利益を大切にすること
日々のサロン経営では、売上を立てて、支払うべき経費を支払って、営業利益を出すことが目標になりがちです。
しかし、十分な利益が出せず借入金を返済できなかったり、あるいは利益すべてを自分の収入にしてしまったりすると、サロンの財務状況はよくなりません。
どの開業者もスタート時の財務状況はほぼ同じです。借入の割合が大きい。
早く安定経営させるためには、売上を伸ばすのではなく、借入金を減らすこと、キャッシュを増やすことに注力すべきです。
この意識を持つだけで、経費に対して敏感になります。利益を大事に扱うようになります。
特に、コロナ禍のこの時期、開業者はいつも以上にサロンの安定化を急がねばなりません。サロンの財務状況を把握した上で経営を行っていきましょう。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。