融資でも聞かれます!売上を伸ばすための施策について考えよう!客単価編
前回のコラムでは、売上施策を考えるうえで、「客数」に焦点を当ててみました。
売上を構成する要素としては、客数と客単価になります。
今回は客単価を考えてみます。
客数はサロンの席数やスタッフ数によって限度がありますが、客単価には理論上限度はありません。
ある顧客が5,000円支払うときもあれば、10,000円支払うときもあります。そういう意味では、客単価は可能性を秘めています。
価格を動かす
サロン開業にあたっては提供するメニューと価格を決めます。
価格決め=プライシングは重要です。
例えば、小規模サロンでは対応できる客数が小さいため、単価を安くしすぎると売上が伸びません。とはいえ、エリア相場や価値にそぐわない価格であれば客数が伸びません。
そのバランスを見極めるためにも、今のサロンでの指名客での単価や、競合サロンの価格は参考にします。
一方で、プライシングは工夫次第で変更が可能です。
一番典型的なのはクーポンです。新規客向けに価格を下げて訴求したり、リピーター特典として割引を行ったりできます。
あるいは時間や時期によって価格を変動させることもできます。最近では、ダイナミックプライシングを行うサロンも増えてきました。
繁忙期の価格を上げたり、集客がしにくい時間帯の価格を下げたりして、需要と供給のメカニズムに従って価格を決定するやり方です。
それによって「多少高くなっても土日に予約したい」人と「安くなるなら平日午後に予約しよう」と考える人が出てくることで、土日に予約が取りにくいという現象を解消できます。
また、メニュー自体を複数持つことで価格を変動させるやり方もあります。
これはどのサロンでも行っています。カラーのロング料金、トリートメントのステップ、ヘッドスパの時間などです。
同じメニューでも、髪の長さ、作業工程の多さ、時間の長さによって価格を分けることです。これを意識的に設定することが大事です。
メニュー比率を変える
客単価(技術単価)は通常、メニュー比率で決まります。表を見てみましょう。
この場合には、平均単価は8,100円になります。
単価を伸ばす方法の一つは、このメニュー比率を変えることになります。
この事例を使って説明してみましょう。カラー比率とトリートメント比率をそれぞれ10%ずつあげることによって、平均単価は9,000円になります。
メニュー比率を動かす典型的な手法は、セットメニュー・セットクーポンの訴求です。
<カット+カラー+トリートメント>をセットで提供することでカラーとトリートメントの比率をあげようという試みです。
あるいは、リピート客など提案しやすい顧客に絞って追加メニューを案内することもできるでしょう。
割引のように正規の価格を下げることでセットメニューを促す方法はよくとられます。
カット価格を7000円、カラー価格を7000円にしておいて、カット+カラーで12,000円にします。
カット利用者が多い場合には、「カラーをつけたほうがカットがお得だ」と思わせてセットメニューの利用率を上げます。
価格を下げる分、効果は小さくなりますが、カラー利用率が上がることで単価は上がります。
商品を売る
単価を上げる効果的な方法は店販商品の販売です。
コロナ禍で、サロンの店販強化の動きは目立ってきています。商品の販売にはサロンにとって大きなメリットがあります。
・スタイリストの技術的な負担を増やすことなく売上を伸ばせる。
(施術中やカウンセリング中の話の中で案内が可能)
・ホームケアを提案することで、来店以外での接点も発生する。
(例えば、施術しない月でも商品だけを買いに来ることも)
・ECサイトなどがあれば24時間、商品販売も可能になる。
(来店時に売り込む必要もなくなる)
こうしたメリットがありますが、何と言っても商品の購入には売上の限界がないことでしょう。
単価は例えば20,000円を50,000円にすることはかなりハードルが高いですが、
シャンプーセット8,000円、ヘアケア商品12,000円、ドライヤー30,000円など高額な商品を売ることができれば、客単価は一気に伸びます。
技術への負担を増やすことなく、商品を売って売上を伸ばす方法は、今や当たり前になっていると言えます。
・コロナ禍によって、席数制限を設けたり、顧客来店頻度が下がったりして、客数を増やすのが難しくなった。
・人口減に伴ってスタイリスト・アシスタントを確保することが難しくなった。
こうした環境に適応するために、新たな単価アップの方法として商品販売が注目されています。
スタイリストやセラピストには、美容のプロとしての目利き力があります。技術やデザイン力だけでなく、そうした価値にも目を向けて伸ばすことはとても重要だと思います。
まとめ
今や美容室・サロン業界は飽和状態です。新しく参入する開業者には、厳しい戦いが待っています。
供給過多のサロン数、人口減による客数の減少、同じく人口減による働き手の不足。そして、コロナ禍による社会変容。
こうした環境の中で、サロンを繁盛させるためには、客数だけに頼らない売上の作り方を考えなければなりません。
単価を上げる=付加価値をつける、ということです。
金融機関の融資審査では収支計画を厳しくチェックされます。
「どうすれば売上を伸ばして、利益を確保できるか」
具体的な戦略が求められるのです。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。