日々のサロン運営から確定申告まで!ざっくりわかる経理業務
サロンを開業すると、必ず発生する業務があります。経理業務です。
経理業務は、サロンのお金の流れを数値化して管理することです。一般に会社では経理部門がありそのスタッフが、会社全体のお金を管理します。
しかし店舗、しかも個人事業主として小さいサロンを経営しているオーナーは、ほとんど自分が経理業務を行います。スタイリストとは全く別の仕事を行うことになります。
一方で、経理業務は確定申告に不可欠であり、オーナーの所得や納税額を決める大事な仕事です。
今回は、個人事業主を対象に「経理業務」についてざっくり解説していきます。
目次
期間に応じた経理業務の種類
経理の仕事は、期間に応じて3種類の業務に分けられます。
1日ごとに行う「日次業務」、1カ月ごとに行う「月次業務」、そして1年単位で行う「年次業務」です。
それぞれの業務についてみていきましょう。
日次業務
以下の仕事が日次業務にあたります。
現金出納管理(現金による入出金の記録)
いわゆる現金の管理です。
日々営業していると売上が発生します。売上の中には、お客さまが現金で支払うものがあります。
また、逆に経費も発生します。家賃や人件費といった大きな支払いはもちろんですが、例えば、トイレットペーパーのような日用品や、ペンやノート、テープなど細かな雑費も発生します。
スタッフは買い出しに行くとき、サロンのお金を使います。それゆえ、出ていくお金もしっかり管理しなければなりません。
仮にスタッフが自分のお金で支払った場合には、立替清算を行います。会社によっては月次作業にする場合もあります。
簿記作業
お金の管理については、仕訳という作業が必要です。
仕訳は事業の取引内容によって種類=勘定科目を決めて、発生した金額を勘定科目に振り分けていく作業です。
確定申告時に決算書を作る際に、仕訳がされていないと正しく決算書を作ることができなくなるので、ルールもある程度知っておく必要があります。
今は、freeeやマネーフォワードのようなクラウド会計があるため、自動的に仕訳ができます。
書類の管理(納品書・領収書などの確認)
仕入れを行うと、納品書がついてきます。
納品書を整理して、注文したものがちゃんと届いているかを確認しましょう。
また、発生した経費についても必ず領収書をもらって保管しておきます。何にいくら使ったかを把握しておくのは大事です。
確定申告でも使いますが、業務改善における経費の見直しを行う際に「省ける経費はないのか」を見極める場合にも有効です。
売掛金および買掛金の管理(主に現金以外の金銭取引の記録)
売上の金額と、実際に入ってくるお金は必ずしも一致しません。なぜなら、お客さまの決済手段が多様だからです。カードで支払った場合、売上は立ちますが、その日にはお金が入りません。
逆もまた然りです。例えば、クレジットカードで経費を支払うと、実際に口座から引き落とされるのは、1か月後だったりします。
その日の営業活動とは別に発生する「お金」の出入りも管理しておく必要があります。
さらに、カード会社からの入金は手数料が引かれて入ってきます。
売上ー手数料=入金金額
であるため、それを理解しないと「お金が足りない」という誤解が生まれます。
毎日やるべきことは、お金の出入りです。
簿記作業などは、領収書を取って置きあとで記帳できたり、税理士に任せたりできるため必ずしも毎日必要はないかもしれません。
しかしお金がいくら入って、いくら出ていくかを記す現金出納帳は毎日記帳するのが望ましいです。
サロン経営の生命線はキャッシュです。大きな支払いによって極端に貯金が減ることもあります。
できるだけ細かくお金の出入りを把握しておきましょう。
月次業務
主に請求と支払いに関する業務が中心となります。1ヶ月単位で営業を振り返る習慣をつけましょう。
月次決算書の作成
月次決算は義務付けられていないので、やらなくても問題はありませんが、確定申告の際の決算業務の負担を軽減するには、毎月コツコツと売上、経費を整理しておくべきです。
月次の決算でも売上、粗利(商材・商品の棚卸)、販管費をそれぞれ計算して、サロンの利益を確定しましょう。
また、1ヶ月間のサロンのお金の増減も把握するようにしましょう。
月次決算を作るのは次のようなメリットもあります。
まず、毎月の振り返りによって、課題を発見して早めに手を打つこともできるようになります。
さらに、期の途中で資金調達を行う場合にも、月次決算で直近の状況も報告できるため、融資がスムーズになることもあります。
従業員の給与計算と支払い
従業員を雇用している場合、給与の支払いはとても重要な業務になります。勤務実績をまとめて、給与計算をします。
残業や休日出勤などもオーナー側がしっかり管理しておかないと、トラブルになります。
スタッフは、毎月定期的に支払われることを想定して、自身の経済活動を行います。
支払いが遅れる、支払額が契約と異なる、残業代が支払われていない、などないように優先的に業務に組み込みましょう。
青色申告を行う場合、確定申告直前になり慌てて帳簿をつけることなると、計算ミスや記載ミスなどが起こります。納税額に関わるため、月次業務は毎月きちんと行うことをおすすめします。
年次業務
個人事業主にとっての年次業務は、毎年3月に行う確定申告になります。確定申告が会社で言うところの決算書であり、サロンの成績、個人の所得になります。
確定申告
3月に行う確定申告は前年の1月から12月までの収入が対象となります。12月末で年間の会計を一区切りにして、サロンの成績をまとめます。
年末調整
従業員を雇っている個人事業主の場合には、その従業員の年末調整も年次業務のひとつとなります。
11月ごろからスタッフに対して必要書類を準備して記入依頼します。年末調整を行った後には、それを給与に反映させる必要もあります。
1月には源泉徴収票をスタッフに渡します。
確定申告はサロンオーナー自身の所得と納税申告です。年末調整はサロンのスタッフの代わりに徴収していた税金を調整する作業です。
事業主であれ、従業員であれ、納税の義務があるかぎり避けては通れない業務です。特に、事業主は従業員の納税を代行しているため、年末調整は非常に重要な業務と言えます。
年末調整、確定申告という順に年末年始は進んでいくことになります。
まとめ:事業主になる以上、数字の管理は避けられない
開業サポートをさせていただいた多くのスタイリストが、サロンオーナーになって同じ感想を持ちます。
「経理作業は大変です」
スタイリスト時代は自分の売上だけを考えて仕事をしていれば十分でした。会社が給与を支払ってくれて、かつ税金も代わりに収めてくれていました。
開業すると、状況が一変します。サロンの売上だけではなく、あらゆる取引で発生するお金、スタッフへの支払いなどをすべて自分で管理しなければなりません。
それがサロンオーナーになるということです。
オープンしたらできるだけ早い段階で、サロンの経理業務を確立することをおすすめします。
毎日行う現金管理、毎月の〆作業、そして毎年の確定申告と年末調整、いつ、どんな手段で業務を行うのかを早い段階で決めておきましょう。
さもないとサロン業務に追われて、経理業務ができず、3月になって慌てて領収書を集めたり、計算に追われることになります。
数字の管理が苦手ならば、税理士や記帳代行サービスを利用しましょう。給与計算が不安なら、社労士を雇いましょう。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。