サロンに役立つマーケティング用語 ~CRM編
現代は「多様性」がキーワードです。
自分らしさや自分の価値観を大切にするという時代ゆえに、消費者のニーズは多様になってきました。
一方で、テレビCMといったマス(大衆)をひとくくりにしたメディアは消費者に刺さりにくくなっています。
そうした環境の中で、美容室経営でも顧客の多様性に向き合わなければなりません。
つまり、画一的なサービスの提供ではなく「お客さま一人ひとりに最適なサービスを提供すること」が重要になってきます。
そこで大切になってくるのがCRMという概念です。
CRMとは
CRMとはCustomer Relationship Management(顧客関係管理)の略です。
「サービスを提供する事業者と顧客との間に親密な信頼関係を築くこと」と定義できます。
新規客からリピーターに、そしてリピーターからサロンのファンにするまでの活動でもあります。
CRMでは、お客さま一人ひとりにあわせたコミュニケーションが大事になってきます。コミュニケーションがうまくいくためには相手の理解が欠かせません。
一人の顧客を知るために必要なのがデータです。
POSシステムや顧客管理システムなどを使って、顧客情報を集めて、分析し、一人ひとりに最適な提案を行っていくことが大切です。
顧客を知る
開業したサロンオーナーにヒアリングしてみると、事業計画で設定したターゲットと、実際に来店するお客さまが違うと言います。
開業時は、狙うべきターゲット(ペルソナ)を設定して、施策やメニュー、キャンペーンなどを考えます。
「30代後半主婦層、夫が企業勤めで所得は高め。子どもが就学するタイミングで少し働くことを決意。見た目の若々しさにこだわって、エイジングケアに興味を持っている」
といったように、架空の人物からターゲットを細かく設定していきます。
『ターゲットが「サロンに行きたい」と思う状況は?実践ペルソナマーケティング』
しかし、実際に来店する人が増えてくると、事業計画で設定したターゲットではない人が来ます。
また狙ったターゲットが来たとしても、顧客によってメニュー、単価、来店頻度が全然違うということが起こります。
したがって、オープン後は実際に来店されたサロンの顧客について知る必要がでてきます。
サロンをオープンして初めて、実際に来店したお客さま一人ひとりを理解するという仕事が発生するのです。
サロン顧客の理解はオーナーの重要な仕事だと言えます。
CRMの実践方法
CRMを実践するためには、①来店した顧客の情報を集める②その情報を分析する③分析結果に従って施策を打つ、という手順で進めていきます。
情報収集
初回来店では、カウンセリングやアンケートを使って顧客から情報を聞き出します。個人情報から、来店のきっかけ、悩み、要望、などを中心に情報を集めていきます。
2回目以降の顧客については、来店を重ねるにつれて様々な情報が集まるようにしていきます。
予約のタイミング、メニュー、単価、クーポンの有無、物販への興味など、顧客管理システムにデータを積み重ねていきます。
コツコツとお客さまの情報を集めていくことが第一歩です。
分析する
分析はPOSシステムや顧客管理システムを導入していればほぼ自動で行ってくれます。
システムがなかったとしても、ホットペッパーのサロンボードでも顧客情報を管理できますので、何かしらデータを管理する方法は手に入ります。
ここでのポイントは分析結果から「何かに気づく」ことです。まずは集まったデータを分けてみることをおすすめします。
「お金を使ってくれるお客さま」「来店頻度が高いお客さま」「物販を買ってくれるお客さま」などに分けてみましょう。
例えば
「年間売上10円以上の顧客」「5万円以上の顧客」「5万円未満の顧客」
「来店回数6回以上の顧客」「3回以上の顧客」「1回だけの顧客」
という分け方もあるでしょう。
その中で、サロンの売上に貢献してくれるお客さまはどんな人かを詳細にみていきましょう。
そこから詳細を見ていくと、様々な気づきを得られやすくなります。
「小さな子どもがいる主婦のお客さまは、朝の予約に集中している」といった全体の傾向にも目がとまるかもしれません。
あるいは「Aさんはスタイリストがすすめたメニューを受ける傾向が高い」「Bさんはサロンからのおすすめには無関心」という個別の比較もできます。
一人ひとりにあった提案をする
お客さまへの理解を深めたら、その人にとって最適な提案を行います。
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来店頻度が落ちているお客さまを見つけて、失客前に再来を促すクーポンを打つ。
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悩みにあわせて、ホームケア商品を紹介する。
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来店頻度から逆算して、タイミングよくクーポンを打つ。
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近所に住んでいる主婦層に絞って、平日午前限定のキャンペーンを打つ。
顧客は「自分に当てはまるサービス」や「自分だけに送られるキャンペーン」などに特別感を感じます。
画一的なメッセージを顧客全員に送ったとしても、「自分にはあてはまらない」メッセージは無視される確率も高くなります。
完璧なCRMを実践するのは難しいですが、顧客の実情にあわせてコミュニケーションを使い分けることはますます重要になってくるのです。
まとめ:CRMを意識して顧客満足度を高めよう
スマートフォンの普及で顧客とのコミュニケーションが容易になりました。
それに伴ってPOSシステムや顧客管理システムも大きく進化しました。
顧客情報をしっかり集めることができれば、自動で分析もしてくれます。その結果をもとに、顧客一人ひとりに最適なサービスを提供するのがオーナーの仕事です。
「どんな人がどんな悩みを抱えて、どんなメニューを受けたのか」
「どんなスタイルが好きなのか」
「いつの時間が空いているのか」
CRMは、顧客を理解できれば、より的確に提案ができるようになるはずという考え方がベースにあります。
CRMは、顧客情報を収集し、分析を行って、提案することの繰り返しです。
顧客側は「通えば通うほど、自分を理解してもらい、よりよいサービスが受けられる」と感じます。
こうして顧客満足度は高まっていくのです。
ぜひ、サロン経営で実践していただければと思います。
『サロンに役立つマーケティング用語 ~STPマーケティング編~』
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。