専門家から学ぶ税務・労務<第5回>!経理の目的と業務内容について
サロン経営では、サロンの活動を記録することが大切です。
そうした記録をつける作業を経理と呼びます。
サロンの活動記録をしっかりとらないと、現金の過不足が生じたり、本来計上できるはずの経費が漏れていたりして、サロンの実態を正しく把握することができなくなります。
サロンをオープンしたら、経理業務を早めに覚え、ルールを作り、習慣として身に着けることが大切です。
今回も貝沼税理士に、サロンにおける経理業務について解説いただきます。
目次
日常の業務
経理の基本は日々の売上、経費、現金を記録することです。
売上集計
POSを使用しているお店はその機能に締め作業があると思いますので、日々閉店後に売上の集計、受け取った現金の確認を行っていることと思います。
POSを利用せず、Excel等で管理しているお店も、その日の売上や受け取った現金の確認は毎日行うことをお勧めします。
日が変わると分からなくなってしまうこともあります。売上や現金という大事な項目なので、毎日確認しましょう。
また、最近はキャッシュレス決済が増加し、クレジットカード決済以外のキャッシュレス決済の方法も増えてきました。
顧客にとっては便利なものであるだけでなく、お店側にとっても現金の現物をお店に置いておくよりは安心なものです。
一方で、お店側としては売上の入金方法が多様化し、その点において管理が大変になっているかもしれません。
ですので、日々その日の売上を確認する際に、ぜひ、POSに登録した(ないしはExcelに記入した)決済方法が正しいかも確認しましょう。
現金かキャッシュレスかだけでなく、クレジットカード・Pay PayなどのQR決済・交通系などの違いも意識しましょう。(「どこから入金されるか」の違いでいいので記録しておきましょう)
管理していかないと、お店が認識しているそれぞれのキャッシュレス売上と、キャッシュレス事業者から入金される額が相違し、混乱し未入金等があっても分からなくなってしまいます。
現金の出納整理
現金は非常に大事なものです。また、不正や盗難の対象になりやすいものです。
ですので、上記の売上集計のように、現金売上は毎日確認した方がいいです。POS上の現金売上と実際ある現金があっているかどうか、です。
小口現金
また、お店によっては小口現金(日々の細々した支払いをするための現金)を設けているお店もあると思います。ちょっとした文房具や消耗品を買いに行くのに便利です。
社長・事業主であれば、自分で立て替えて払えばいいのですが、従業員に毎回立て替えてもらうのも気が引けます。
そんな時小口現金があれば、従業員であってもその中の現金で支払いができます。
ただし、使った現金と引換に必ず領収書を金庫に入れておきましょう。
そしていくらあったところから、この領収書とこの領収書分を払ったから、残りはいくらのはず、を出し、実際の小口現金の残高と照合することによって管理できます。
この現金を数えることを実査(じっさ)といいますが、実査自体は毎日でなくてもいいかとは思いますが(ただし少なくとも月末には行いましょう)、使うたびにどれが小口現金から払った領収書であるかは日々(使用した都度)わかるようにしておきましょう。
小口現金出納帳という表で上記の「いくらあったところから、この領収書とこの領収書分を払ったから、残りはいくらのはず」を管理するのが一般的です。
月次の業務
会計処理
会計処理(会計システムへの入力)を自分で行っている方は、月単位で処理し、まとめたとしても3ヵ月ごとには処理を行うことをお勧めします。
それ以上ためると、わけがわからなくなることが多いです。
給与計算
従業員がいるお店の場合には、毎月給料日がありますので、それに間に合うように給与計算を行う必要があります。
給料のお支払いは少しでも遅れたりするとお店の信用問題にもつながりますので、死守しましょう。余裕をもって計算することが必要です。
資料整理
領収書などを月別で整理しましょう。「あとでまとめてやろう」では結局整理できずに混乱することが多いです。○月分として、毎月資料を整理する癖をつけていきましょう。
また、令和6年より、電子取引については書類を電子で保存することが義務になります。ダウンロードして月ごとに整理する必要があります。今のうちから紙・データともに毎月整理する癖をつけておきましょう。
年次の業務
棚卸
美容サロンは、在庫が多いビジネスモデルではありませんが、店販の商品、未使用のカラー材やシャンプー、マッサージオイル等、少なからず存在するとは思います。
少なくとも期末には棚卸をし、在庫を確定させしっかりと決算に反映させましょう。
確定申告、年末調整など
従業員がいるサロンの場合には12月に年末調整をします。
毎月天引き(源泉)している所得税を12月に確定年税額を出して、これまで源泉してきた金額との精算をし、12月最後の給与に上乗せして返してあげます(ないしは追加で徴収します)。
従業員がいるサロンは、年末調整をすることがサロン側の義務です。任意ではないので注意しましょう。
また、決算を組んで1年の会計数値を確定させ、確定申告を行います。
この時に毎月の処理や資料整理ができていないと、決算で困ることになります。もう資料がない、資料間での数値の不整合について思い出せない、などです。
月々しっかりしておくと決算も楽になります。個人の場合は3月15日までに、法人の場合は決算日から2か月以内に申告納付を行います。法人の場合は、一定の手続きを行い、申告だけは1ヶ月延長することも可能です。
まとめ
サロンを運営するということは、単にお客さまにサービスを提供するだけではありません。
サービスを提供するために必要な費用を支払い、サービスの対価をお客さまからいただきます。その活動を記録しておくことはとても大切です。
開業者は当然、経理業務は初めてです。
初めてのことはどうしても慣れるまで時間がかかります。また接客やサロンのオペレーションも最初はバタバタすることも想定されます。
そういった背景から、経理業務は後回しになりがちです。確定申告の時期が迫ったタイミングで、慌てて記帳し始めるなんてことがよくあります。
そうならないためにも、様々な手段を使って経理業務を継続できるようにしていかなければなりません。
クラウド会計のようなツールを使ったり、経理記帳代行サービスを利用したりして、毎日コツコツできる習慣を早めに身につけましょう。
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貝沼 彩(かいぬま あや)
貝沼公認会計士事務所代表
税理士法人みなと東京会計代表社員
税理士・公認会計士として、会計監査・税務・民事再生・デューデリジェンス等に携わると共に専門学校で公認会計士講座の講師を務める。
その傍らエステティックサロン[Vaogy]を経営。
税理士法人みなと東京会計
TEL.03-6433-5852
https://biyo-consul.jp/
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。