スタッフにかかる費用は給与だけ?人件費について考えてみよう。

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美容室 人件費 項目

美容室は労働集約型のビジネスです。

 

サロンで働くスタッフが、サロンに来る顧客にサービスを提供し、売上を作ってくれます。一人のスタッフが対応できる顧客数は限られているので、スタッフがいなければ売上を大きくすることができません。

 

しかし、今の美容業界は慢性的な人手不足に加え、なかなか収入が上がらないなど、様々な問題を抱えています。これに加えて、働き方が多様化しており、フリーランス化も進んでいます。

 

こうした中で、一緒に働くスタッフを確保し、安定的にサロンを運営していくためにも、開業時からヒトの管理について考えていくことが重要です。

 

そこで今回は、美容室の売上の源でもあり、大きな固定費になる「人件費」を詳しくお話していきます。

 

人件費とは

そもそも人件費とはどんなものでしょうか。

 

ここでは、人件費を事業者が従業員に対して支払う費用と定義します。

 

広い意味で人件費をとらえることによって、より細かな収益シミュレーションができ、スタッフをどのように集めて、どんなことをしてあげられるかを考えるきっかけになります。

 

給与・賞与

給与手当は、従業員に定期的に支払われる労働への対価です。基本給はもちろんのこと、歩合給や賞与(ボーナス)も含まれる。また、残業手当や通勤手当もこれに当てはまります。

 

事業計画書作成の段階だと、この部分だけを人件費と考えるケースが多いです。

 

役員報酬

開業段階で法人化する人はそこまで多くありませんが、会社として美容室を経営していく場合には、オーナーは代表取締役になります。したがって、役員報酬という形で収入を得ます。

 

また共同経営として一緒に働く人を取締役や役員にした場合も、役員報酬を支払います。

 

これは給与とは明確に区別されます。役員報酬は定款による規定や株主総会による承認が必要で、1年間変えることはできません。しかも残業代などの手当は一切支給されません。

 

ちなみに個人事業主は、収支計画の営業利益の部分が自分の収入になりますので、人件費に入れることはできません。

 

法定福利費

現金支給とは違う形で、従業員のために支払うものに福利厚生があります。

 

その中で法定福利費は、法律に基づいて事業主が負担する義務がある経費になります。

 

事業主が負担しなければならないもの。それは社会保険と労働保険です。

 

社会保険とは、一般的に健康保険、厚生年金、労働保険とは労災保険と雇用保険を指します。

 

個人事業主であれば、美容室の場合、社会保険の加入義務はありませんが、労働保険は義務です。

 

法律に従って事業主は社会保険料、労働保険料の一部、あるいは半分を負担しなければなりません。(従業員と折半します)

 

もし、従業員に社会保険をつけてあげたいと考える人は、この法定福利費を考慮にいれた給与設計をする必要があります。

 

法定福利費を給与の16-18%くらいで設定してみてください。

 

例えば、スタッフに30万円の給与を手取りであげたいなら、

 

300,000×1.16 = 額面348,000円で設定します。

 

ぜひ参考にしてください。

 

法定外福利費

法律で義務化されていない福利厚生については、会社・事業主が任意で設定することができます。

 

代表的なものとしては以下のようなものがあげられます。

 

  • 社員旅行費
  • レクリエーション費(忘年会など)
  • 冠婚葬祭費(祝儀、香典など)

 

退職金・退職掛金

開業間もない事業者はあまり設けていないですが、長く働いた人へ一時金をあげることもあります。もし、退職金制度を作る場合には、計算方法なども就業規則や退職金規程などで取り決めておきます。

 

その他 人材採用費、教育研修費

広い意味で人件費を解釈すると、採用や教育も当てはまります。会計上は人件費として計上しないケースもあります。

 

経営上は、サロンの利益・売上に大きく貢献する人件費でもあります。そのため、経費としてではなく、投資として考えておくとよいかもしれません。

 

採用活動にはかなりのお金をかけることになりますので、開業の段階では運転資金として資金計画に入れておくことをおすすめします。

 

まとめ

簡単ではありますが、人件費の中身について解説してきました。

 

美容業界が抱える課題はやはりヒトです。

 

慢性的な人手不足であるうえ、物価高もあって、給与など条件のよいところで働きたいというニーズがあります。一方で、フリーランスとして独立した働き方を目指す美容師も増えてきています。

 

こうした環境下において、長期的にサロンの売上・利益に貢献できるスタッフを確保するためには、それなりの人件費をかけることになります。

 

給与だけでなく、社会保険や福利厚生、研修などを含めた総合的な計画をたてなければなりません。

 

美容師の働き方改善に意欲的に取り組もうとするオーナー様もたくさんいらっしゃいます。

 

業界水準以上の給与をあげるためには、どれくらいの売上が必要で、スタッフにはどの程度の貢献を求めなければならないか。

 

こうしたことを計画段階でしっかりシミュレーションして、サロン経営に活かしていただきたいと思います。

 

 

●コンシェルジュ:安斎

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ビューティガレージ コンシェルジュ室

日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。

15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。

事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。

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