事業計画書の肝!儲かる収支シミュレーションを書くコツ
美容師にとって、自分のお店を持つというのはひとつの夢ですよね。しかし、開業はゴールではありません。
開業の究極的な目的はサロンの繁盛です。せっかく開業したのに、儲けが出なかったら続けることはできません。
どんなに開業費用を抑えてスタートしても、親からの支援を受けたとしても、サロンが潰れない保証にはなりません。結局、儲かるサロンを作るということが重要なのです。
どのくらいの利益が欲しいのか。そのためにはどのくらいの売上を上げる必要があるのか。どのくらい経費を抑えられるのか。開業後、何か月で利益が出始めるのか……。
現実的な視点から利益を予測していく。これを収支シミュレーションと呼んでいます。事業計画書の肝になる部分です。
融資を受ける場合には、銀行の融資担当者に事業計画書を提出します。当然ですが、金融機関はお金を返してくれるサロンにしかお金を貸したくありません。
開業者は、収支シミュレーションを通して返済できるサロンであることを示す必要があります。
今回は、ビューティガレージの開業サポートで使用しているシートを使って、収支シミュレーションには何を書くべきかを解説していきます。
売上高と粗利の算出方法
売上高
まず、一番上に書かれているのが売上高です。これは、お客さまから頂く対価のこと。ビジネスをする以上、売上を上げることがオーナーの第一の目標になります。
美容室の場合、この売上は以下のように2つに分けられます。
■技術売上……カット、カラー、パーマなど美容師が施術を行って生じる売上
■店販売上……ホームケアなどお客さまが購入する商品によって生じる売上
売上高は客数×客単価で算出することができます。客数は、自分の経験や実績から新規数を想定したりリピート率を考えたりして、月々の数字を決めていきます。
また、客単価に関しても競合と比較したり、以前働いていたサロンの単価を参考にしたりして決定します。
たとえば、1日10人、1か月(25日)で250人のお客さまが来店されると仮定した場合、単価が8000円だったとすると1か月の売上は250人×8000円=200万円と算出できます。
仕入高
仕入高は、施術に使う原料や販売用に仕入れた商材の合計金額を指します。これがなければ売上を立てられないもので、「原価」ともいいます。
美容室の平均的な技術原価は売上の10%前後、店販原価は70%程度と言われています。カラーの料金が6,000円ならば、600円の原価がかかるということです。
カラー材の使用量を減らしたり、仕入れ先と交渉して仕入れ値を下げたりできれば、原価を下げることができます。
粗利(売上総利益)
粗利とは、売上高から仕入高を引いた金額のことです。調達した原料や商材を使って売上を上げる。粗利とはサロンのサービスや商品の価値を示すものです。
低い原価で高い売上を出すことができれば、そのサービスは素晴らしいと言え、儲かるサロンにつながるのです。
経費と利益の算出方法
販売管理費
サービスや商品を売って得られた「粗利益」を使って、サロンは人件費、家賃、広告宣伝費など店舗の運営に必要なお金を支払っていきます。このサロンの運営費を「販売管理費」と呼びます。
このなかに「減価償却費」という耳慣れない項目がありますが、ざっくり言うと、内装や美容器具などサロンで長く使うものを何年かに分けて費用にすることです。詳しくはまた別の機会に話すことにします。
営業利益
粗利から販売管理費を支払った後に残るものがいわゆる利益です。ここがマイナスになると赤字。プラスになると黒字になります。サロンの成績といえるでしょう。
黒字にするためには、サービスの価値を高め(=粗利を増やし)ながら、効率的にサロンを運営する(=販売管理費を抑える)必要があります。粗利よりも販売管理費が大きい状態が続くといずれ倒産します。
現金収支の重要性
営業利益が黒字になったからといって、めでたしめでたしではありません。一番大事なのは、自分の手元に入ってくる現金(キャッシュ)です。
なぜ営業利益と現金収支が違うかというと、営業利益額を借入の返済に充てるためです。
そのため、売上があるから返済できるというのは間違いで、融資担当者は売上よりも営業利益をみて融資の判断を行います。
営業利益から金融機関にローンを返済したあとに現金がどのくらい残るのか……。それを考えなければなりません。
個人事業主であれば、さらにその現金収支で保険や税金を支払っていけるか、そして生活費をまかなえるかまで考えて計画を立てていきましょう。
まとめ
収支シミュレーションでは、売上高から現金収支までを現実に即して予測し計画を立てていく必要があります。まずは、それぞれの意味を理解しましょう。
■売上高……お客さまから得られるサービスの対価
■仕入高(原価)……サービスを行うために必要な原料
■粗利益……サービス・商品の価値(売上高-原価)
■販売管理費……サロンを運営していくための経費(粗利から支払っていく)
■営業利益……サロンを営業して得られた利益(粗利益-販売管理費、サロンの評価)
■現金収支……オーナーが最終的に手に入れる現金
儲かるサロンにするためには売上だけに注目してはいけません。最後に残る現金に着目することが大事です。そのためには、売上から現金収支までのプロセス一つひとつを検証しましょう。
※参照
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。