サロンオープン後が勝負!事業計画書を使った振り返りと指標【前編】
開業は決してゴールではありません。自分の事業の目標を達成するための手段です。そのために事業計画書を作成します。
しかし一方で、計画書通りに事業が進むことはほとんどありません。
それゆえ多くの人は事業計画書はあくまで融資獲得のためと割り切って作成し、開業後は読み直すことなく保管したり、捨てたりします。
「当初思い描いていたサロンに少しでも近づいているか」「当初立てた事業目標を達成するためにはどこを改善するべきか」を考えながら、日々活動していくのが経営です。
ビューティガレージでは少なくともオープン後3ヶ月は事業計画書をもとに実績を振り返ってほしいと伝えています。
振り返りに事業計画書を使う理由
なぜ振り返りのために事業計画書を使うかというと、実績と比べるためです。
事業目標を達成するためには課題を見つけて改善していくことが欠かせません。
課題を見つけるためには分析が必要です。分析とは比較することでもあります。
すでにサロンを経営している人であれば、比較対象は前年や前月の実績になります。
「先月よりも客数が減った」「去年に比べてリピーターさんが増えた」など、事業がうまくいっているか、いないかを測るために過去と比較します。
ところが、オープンしたばかりのサロンは過去の実績がありません。それゆえ、比較すべきは自分の立てた事業計画書以外にないのです。
事業計画書には「サロンのありたい姿」と「そこに近づくための予測」が盛り込まれています。予測と実績を比較することで課題を洗い出すことができます。
ここからは、振り返りで確認すべきポイントをいくつか紹介します。予測と実績に差が出るのは、下記の指標のどこかに差があるからです。
客数
売上 = 客数×客単価で計算できます。売上が計画通りに伸ばしているかを確認するには、事業計画書で立てた「客数」と「客単価」を実績と比較していきます。
前サロンからの見込み客
前に働いていたサロンからの指名客が何人来てくれたのか。計画書で予測していた数字と比較して見ましょう。
もし想定よりも少ない場合には、その後もこの見込み客が増えていくことはなさそうです。
3ヶ月経てば、そのお客さまたちは前のサロンに戻っているか、別のサロンに行ってしまったと考えるのが自然です。
これ以上、増やせないのであれば、開き直って新規客の獲得に力をいれなければいけません。
新規客
開業当初はいろんな手段で新規客獲得に動くと思います。
その中で効果があったもの、なかったものを見極めましょう。チラシは計画通りに配布できたのか、ポータルサイトでの効果は予想と比べてどうだったのか。
当然、新規客が想定していたより少ない場合には打ち手を考えなければなりません。
客単価
客単価はメニューの利用率に左右されます。なぜなら計画書で作ったメニュー価格はお客さまの影響で変わらないからです。
つまり、カット価格を4,000円と決めたのに、お客さまの声で2,800円に下がったとはならないのです。
まず見るべきはメニュー利用率です。そもそも事業計画書で作成した客単価はメニュー価格と利用比率で出しています。(※詳しくはこちらを読んでください。)
メニュー別の売上などを記録しておくと、どのメニューが出ていて、どのメニューが人気がないのかがわかります。
「想定よりもカット単体の割合が大きかった」「カラーの比率が小さかった」など分析ができます。実際、サロンが訴求したいメニューがでているかもチェックが必要です。
サロンの強みとして、ヘッドスパの売上目標を全体の10%と計画したのに、全体の5%未満だったとしたら、原因をつきとめて打ち手を打たなければなりません。
客層
これは定性的な指標になりますが、客数や客単価を決める要素として無視することはできません。
客層を詳しく分析するためにはPOSシステムやカウンセリングなどの情報が役に立ちます。事業計画書では、サロンが来てほしい「ターゲット」となる客層を決めます。
狙い通りのターゲット層に来てもらったかを確かめることも大切です。
ここからは私がサポートしたお客さまの例でお話します。
Aさんは「20代後半〜30代前半で都心で働いている比較的不可分所得が大きい独身のOL」をターゲットに、癒やしとキレイをコンセプトにしたサロンをオープンしました。
少し駅から離れていますが、マンションも多く仕事帰りや休みを利用して来ていただくことを目的として設定しました。
ところが実際、POSデータで集計をとってみると該当ターゲットは30%で、予想以上に主婦層の来店(45%)が多かったのです。
これによって高単価メニューの動きは鈍かったようです。一方で客数は予想以上に多くなりました。結果としては計画書よりも売上が伸びました。
求める客層が違った場合、オーナーがとるべき手段は2つあります。
① 計画書通りOL層を取り込むために訴求の仕方を変える。
② 実際に来店が多い主婦層にターゲットを変える。
当然、当初の事業目標に照らせば前者を取りますが、サロンは求められるニーズに応えることも大事です。
そうなると後者を意識したサロンに変わる選択肢もでてきます。
理想の追求をするのか、現実路線で売上を伸ばすのかは、オーナーの判断になります。
事業計画書は繁盛のための手段
事業計画書は融資用と割り切らず、徹底的に利用しましょう。振り返りとは、自分が考えたプランにどのくらいのお客さまが反応してくれたかを確認する作業です。
理想と現実の差を自覚し、その差を埋めていく努力を改善と呼びます。ビジネスは自分が好きなことをやるために始めるのではなく、お客さまに価値を提供するために始めます。
お客さまの期待に応えることでしか生き延びることはできないのです。サロン開業を自己満足に終わらせないためにも、開業後の振り返りは必ず行いましょう。
今回は、事業計画書で立てた売上についての振り返りについて見てきました。後編では、利益に焦点をあてた振り返りをお伝えします。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。