お客さまを理解することから始めよう!自分の強みを評価してくれるターゲット探し
度々コラムに書いていますが、美容業界はレッドオーシャン市場です。
なんの特徴もない美容室は価格で勝負するしかなく、資本力のない個人事業主は太刀打ちできません。
したがって開業者は差別化戦略を取らなければなりません。
そこで大切になってくるのがサロンコンセプトとターゲット、つまり「誰にどんな価値を提供するか」を決めることです。
老若男女全員に愛されるサロンではなく、特定のターゲットに対してセールスポイントを訴求していく必要があります。
ではそのターゲットとはどうやって絞っていくべきでしょうか。
今回は、サロンの強みとターゲットの決め方についてお話します。
ターゲットにあわせてはいけない
先にターゲットを決めて、そのターゲットに刺さるであろうウリを決めることはお勧めしません。
自分の提供できる強みとターゲットがあわない場合には、ターゲットのために自分の強みを捨てることになってしまうからです。
例えば、あるスタイリストは自分のカット技術に自信を持ってるとします。
しかし最近のトレンドを調べると、どうやら自分の狙っている客層の間で「スパなどエイジングケアメニュー」が人気だとわかりました。
そこで開業するときには、髪質の衰えを解決したい人をターゲットにして、髪質改善メニューやヘッドスパに力を入れることにしました。
「髪をよみがえらせるサロン」というコンセプトです。
果たしてこれでよいのでしょうか。このスタイリストは自分のカット技術をウリにしたほうが本当は差別化できるのではないでしょうか。
ここで言いたいのはターゲットのニーズに自分をあわせてしまうと、自分らしさがなくなり、かえって差別化にならないということです。
自分の強み/ウリを評価してくれる人をターゲットにする
もちろん、トレンドを知ることは必要です。あるいは勤務先のサロンで、どういった髪の悩みが多いのか、どんなメニューが動くのかを把握することも不可欠だと思います。
しかし、あえて自分の強みを消してまでトレンドを追ったり、客層を変えたりする必要はありません。
むしろ、自分の(サロンの)強みを認めてくれるターゲットとは誰かを探すほうがよいと思います。
先程の「カット技術に自信がある」スタイリストは、カット技術というウリをどういうターゲットに訴求すべきかと考えるべきです。
カットに求める価値とはどんなものがあるでしょうか。お客さまの悩みに焦点を当てて考えてみます。
1.髪型が気に入らない(自分の雰囲気にあっていない)…似合わせカットやお任せカットといった訴求ができそうです。
2.コンプレックス(顔が大きい、ボリュームが少ない)…小顔カット、ふんわりボリュームカットで勝負できそうです。
3.まとまらない(いつもはねができる、寝癖が直らない)…お手入れが簡単カットが思いつきます。
こうした選択肢の中で、自分のカットの価値を考えていきます。
一人のお客さまを理解する
カットに求めるものは何なのかを具体的に知るためには顧客理解が大切です。
指名客であれば「なぜ自分を指名してくれるのか」を知ると、お客さまのどういうニーズに自分が応えられているかが理解できます。
しかし、直接お客さまに聞いても「あなたのここがよい」と言語化できる人はほとんどいないと思います。
口コミも同様です。口コミの多くは「接客がよかった」「仕上がりが満足だ」といった程度でしか書かれません。
自分が感じた価値を正確に言葉で表現するのは難しいのです。
お客さまを理解するためには、カウンセリングや施術中の会話で、お客さまの職業やライフスタイル、価値観など少しずつ情報を集めていくしかありません。
そうすると次第に、お客さまが来店する理由が見えてきます。
例えば、お客さまの髪の毛は毛先にくせがあって、なかなかまとまらない。このスタイリストは、カウンセリングで前回のスタイルについて振り返りながら日常生活についてヒアリングしました。
「ここで髪を切ってもらうと、朝ブラッシングするだけでまとまる。
そのおかげで朝少し長く寝ていられる」という言葉が返ってきました。
その言葉を聞いて、自分のカット技術が「お客さまの睡眠時間を増すことができる」ことに気づきました。
こんなにハッキリと教えてくれるお客さまはいないかもしれませんが、アンテナを張っていれば、お客さまが何を期待しているかはわかってくると思います。
一人の体験から仮説を立てる
ここで大事なのは「この一人の顧客が感じた価値に共感できる人が他にもいるのか」になります。
この顧客の体験の背景にあるのは「忙しい中でセットする時間がかかるのがいやだ」というニーズです。
「朝のセット時間を短縮したい働く忙しい女性」をターゲットに「お手入れが簡単なカット」というウリで訴求できるのではないかと仮説を立てることができます。
顧客から自分のウリを発見する
ターゲットにあわせてウリを考えるのではなく、自分のウリ(サロンのウリ)に価値を感じてくれるターゲットを探すことが大切です。
そのためには自分の指名客に教えてもらう、あるいはお客さまから気づかせてもらう必要があります。
そのためにはお客さまを理解しようという姿勢が欠かせません。
カウンセリングだけでなく施術中の何気ない会話にも注意しながら、どんな理由で自分を指名してくれるのかを考察してみましょう。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。