物件を見つけたのになかなか融資に進めない!その原因と対策について
良さそうな物件が見つかると、次に内装デザイン会社に現地調査を依頼します。
内装会社は調査を行って、大まかにサロンのレイアウトを描き、概算の見積もりを開業者に提出します。
内装見積もりを手に入れると、全体の費用が明らかになります。そして、借り入れる金額が決まります。そうすれば、融資審査に進むことができます。
この現地調査から融資審査までの時間を短くすることで、物件が取られるリスクを減らすことができます。
ところが、なかなかスムーズに進まないケースというのもあります。
現地調査から、調査結果や概算見積もりが仕上がってくるのに1ヶ月以上かかるケース。金額が決まらないため、融資審査の手続きが遅れるケースです。
今回は、その2つのケースについて考えてみましょう。
目次
調査に時間がかかるケース
実際に現場に行けばすべての情報が得られるとは限りません。建物には様々な事業者が関わっています。それが原因で調査に時間がかかることがあるのです。
現地調査で情報が手に入らない
電気、ガス、水道については現場に行ってもわからない場合があります。
新築物件ではブレーカーがついていなくて電気容量がわからない。古い建物だと、ガスメーターがついていないため供給量がわからない。
こういうことはよくあります。
こうなると、直接管理会社やガス・電気会社に問い合わせる必要がでてきます。
内装会社が不動産会社に依頼して、管理会社に情報提供を求める。そして今度は、管理会社からガス会社に問い合わせてもらう。コミュニケーションが複雑になるため時間がかかるのです。
現地調査の前の段階で、一度自身で内見をして、電気ならブレーカーがあるか、ガスならガスメーターがあるかなどを確認しておいて、現地調査を依頼するデザイン会社に共有します。
そうすれば前もって調べることも可能です。
誰が情報を持っているかわからない
物件に関わる人や事業者によって、持っている情報にも差があります。
不動産会社はあくまでお客さまに物件を紹介したり契約を取りまとめたりするだけです。実際に物件について管理を行っているのは管理会社や大家さんということが多いです。
設計図などを不動産会社が持っていなくて、管理会社や大家さんから取り寄せるといったこともあります。
以前サポートした例では、大家さんがテナントすべてを管理していたのですが、海外に出かけており「詳しい設計図や建物の電気容量などが確認できない」、「壁への穴あけの許可を確認できない」というトラブルもありました。
その物件について誰がどの情報を持っているのかを確認することも大切です。
不動産会社と管理会社が同じ場合、違う場合、管理会社に任せず大家さんがすべて管理している場合、どういう状況なのかを理解しておくのがよいでしょう。
見積もりの調整に時間がかかるケース
もう一つの原因は、概算見積もりに対してのデザイン会社と開業者のやりとりです。
融資審査では、何にいくらお金がかかるかを金融機関に提示しなければなりません。
もちろん融資用見積もりとして、内装費をざっくりと作ることもできなくはありません。しかし、実際の金額と大きくずれた見積もりでは、実際に工事を行うさいに資金が不足してしまいます。
それゆえ、より現実的な数字を出してもらいます。
大幅に予算を超える
資金計画で立てた内装の予算と比較して、あまりにも高くなってしまった場合、その物件で開業するかの検討が必要になります。
「どこまで費用を抑えることができるのか」「価格を安くすることで妥協しなければならない点はどこか」をすりあわせます。
内装については妥協できない点もでてきます。「費用」という視点だけで打ち合わせをすると、なかなか前に進みません。
その場合「調達金額を増やす」という選択肢を検討します。
予算よりも100万円増えてしまう場合には、100万円を削るのではなく、100万円を多く借りれないかも同時に考えます。
費用ではなく投資、つまり開業後に「ちゃんと回収できるか」という発想も必要なのです。
相見積もりを取る
もう一つ、複数の内装会社に相見積もりを取る場合にも時間がかかります。一社目の見積もりを見て、費用の面で難しいと判断したら、別の会社にも調査を依頼します。
そうすると、別の会社は独自に調査を行ってレイアウトと見積もりを作成します。
しかし、注意が必要なのは、どの内装デザイン会社も予算通りに見積もりを作ることが可能だということです。
あるサロンオーナーは、内装の相見積もりをとったさいに、デザイン会社から「予算はいくらですか」と聞かれました。そしてその予算通りに見積もりを作成してもらい、「費用」の点からその会社に決めました。
しかし結局、工事の段階で、その金額では理想のデザインを作れないことがわかり、残りは自分でDIYをすることになりました。
本来、サロンのデザインやスペックの状態を考えると600万円かかるものを、予算に合わせて400万円で出すこともできます。
予算を聞かれて、その通りに作ることもできなくはありません。
400万円でもできますが、完成図が自分の思うようなデザインやクオリティではなくなる可能性もあります。
相見積もりを取る場合には、内装会社は他社を出し抜いて受注したいわけですから、要望通りの金額を出してきます。
その時に、それを真に受けるのではなく、その費用でできる範囲を確認しなければ前に進めません。
一番理想に近い状態でいくらになるか、どこまで妥協できるかという引き算で打ち合わせするのが正しいのです。
まとめ
コラムでも何度か伝えている通り、開業準備は物件選定までが勝負です。
「この物件で理想のサロンができるか」を確かめる大事なステップです。
現実的な数字が出てきて、事業計画書を修正していくステップでもあります。
内装は費用がかかるうえ、その後のサロン経営にも大きな影響を及ぼすため、慎重に進めていく必要があります。
しかし、段取りを間違えると、なかなか融資審査まで進めません。
物件によっては調査自体に時間がかかる可能性もあります。
予算にこだわりすぎると、内装デザイン会社と折り合いがつかず、決定まで時間がかかることもあります。
スムーズに現地調査を行い融資審査に進めるためには、現地調査の前の段階で「物件について調べておく」「内装費をシミュレーションしておく」ことを心がけるとよいと思います。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。