焦らずサロンを育てよう!新規開業サロンでの業務委託はハードルが高い理由
美容室の経営で一番大きな費用は人件費です。人件費は固定費です。コロナ禍のように売上が伸びない場合、負担になります。
それゆえ、サロンの中には、スタイリストを「雇用」から「業務委託」に切り替えて、その負担を抑えようという動きがあります。
人件費は業務委託費へ変わり、変動費になります。スタイリストの作った売上の40〜50%が業務委託費として支払われる仕組みです。
こうした流れは新規開業でも見られます。オープン時から、スタッフは業務委託契約で集めようという相談も受けることが多くなりました。
しかし特に新規開業サロンにおいては、業務委託でスタイリストを確保してお店を回すことは難易度が高いと思います。
店舗としての魅力がまだない
フリーランス美容師のメリットは、自分が売上を作った分だけ所得につながることです。自分の技術とサービスで指名客を増やしていくためには、新規客に入ることも不可欠なのです。
新規開業のサロンが、そのフリーランスのニーズ(つまり新規客にどんどん入りたい)に応えるのは難しいと言えます。
できたばかりのサロンよりも、名の知れた大手サロンのほうが、新規客を呼び込む力があるのは当然です。さらに、小規模からスタートする場合には、新規客のための予約枠自体も少なくなります。
新規集客という点でフリーランス美容師にとって新店舗は十分に魅力的だとは思われません。
計画が立てにくい
フリーランス美容師は労働時間に縛られません。
例えば、土日は別のサロンで稼ぎ、平日だけこのサロンで働く、という働き方も可能です。特に新規客が見込めない場所では、なおさらそうした働き方にシフトします。
オーナーからすると、シフトを組みにくいため、思うように店舗を運営できません。したがって売上計画なども立てにくくなります。
また、以前相談を受けたケースでは、新規で獲得した指名客を、別のサロンに呼んで施術をしているフリーランスがいました。
サロンの売上になるはずの顧客が、フリーランス美容師にとられてしまうわけです。
業務委託契約は、個人事業主同士の契約であり、労使関係はありません。条件を厳しくすれば働いてもらえないし、ゆるくすればサロンの運営に支障がでます。
サロンの統一感が薄れる
オーナーは、自分の店舗を作る際にサロンのコンセプトや訴求したいサービスなどを決めていきます。
コンセプトやサービスを浸透させていくには一定のルールが必要になります。業務委託でスタイリストに働いてもらう場合、そのルールの徹底が難しくなります。
例えば、サロンでは髪を濡らしてからカットするというルールを作っても、あるスタイリストがドライカットで施術を行うとなると、サービスの統一感は薄れます。
長期的にサロン自体の売上、利益を考える場合には、サロンのブランディングに注力しなければなりません。
できるだけサロンのコンセプトやサービスを理解し、それに従って働いてくれるスタイリストを雇用するほうが、長い目で見るとよいのです。
まとめ:新規開業は業務委託に向いていない
新規開業のサロンに業務委託を導入する難しさは、「サロンがまだできたばかりである」という点にあります。
・知名度がないために、新規客を集められる魅力がない。
・売上が安定しないため、スタイリスト一人ひとりの動きに左右される。
・コンセプトやサービスが浸透していないため、好き勝手に動かれると統一感がなくなる。
小さいサロンは「雇用」にも課題を抱えていて、人が採用できないから、フリーランスに来てもらおうと業務委託を考えているケースもあります。しかし、そういったサロンがフリーランスにとって働きやすい条件を整えるには時間がかかります。したがって、フリーランスも集まりません。
オープン後に売上をしっかり伸ばし、ブランディングできるようになって初めて消費者からもフリーランス美容師からも認められるようになります。
それまでは、「人件費を抑えたい」「働き手がいないから」という理由で業務委託を導入する必要はないと思います。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。