日本政策金融公庫の融資に失敗してしまったら!審査落ちの原因と別の資金調達方法
時々、日本政策金融公庫の融資審査に落ちてしまったという相談を受けることがあります。
「原因は何だったのですか」と聞いても、明確に答えられる方はあまりおりません。落ちた本当の理由を教えてくれないこともあるようです。
第3者である我々には理由がわかりませんがおおよそパターンが決まっています。
日本政策金融公庫は、政府系金融機関であり小規模事業者へのサポートという特色が強いとはいえ、「利息を含めて貸したお金を返済できる事業か」、「経営者としての資質があるか」という部分はシビアにみます。
融資審査に落ちてしまった場合、原因を見極めて、別の資金調達方法を考えなければなりません。
原因① 信用情報
審査落ちの原因の一つに、個人信用情報の問題があります。個人信用情報とは金融機関が保有する個人のクレジットカードなどの情報のことです。
クレジットカードの引き落としができなかった。催促があっても支払わなかった。そういう個人の情報を金融機関で記録します。そして金融機関同士で共有しているのです。
したがって、信用情報が原因で借り入れできなかった場合、他の金融機関で受けても落ちる可能性があります。
クレジットカードだけではありません。公共料金や税金など、支払うべきものの遅延が多い場合も同様に審査落ちの原因になります。
遅延が常習化しているかどうかがポイントです。約束を守れない人物と思われます。
信用情報が原因の審査落ちは、リカバリーが難しいと思います。
個人信用情報を扱っている会社が保有しているデータは5年と言われています。少なくとも同等の期間、信用回復に励むしかありません。
原因② 自己資金
自己資金がゼロである場合も、審査落ちする可能性が限りなく高くなります。
開業資金に占める借入金の割合はサロンの安定にもかかわります。借入金の割合が100%は金融機関としてもリスクが高いのです。
少なくとも開業資金の1/5もしくは1/4の自己資金が必要になります。
自己資金が1/5あるのに、審査落ちするのはあまりありません。希望借入額の減額で、借入の割合を減らすことを提案されることはあります。
したがって、審査落ちの場合は別の理由を疑ったほうがよいと思います。
「審査に落ちる」となると自己資金がゼロ、もしくは自己資金が認められないということです。
タンス預金で用意したり、大きな現金を振り込んだりすると、本当に自分のお金かどうかを証明できず、申告した自己資金をゼロとみなされてしまいます。
原因③ 事業計画書
審査落ちの原因の3つ目は事業計画書に問題があるケースです。
一言でいえば、事業計画書の内容に信憑性がないということです。
例えば、自分の実績からは想像できない売上や利益になっている。一人サロンなのに、スタッフがいなと作れない売上になっている。適当に作ったのではないかと疑われてしまうのです。
ここで重要なのは根拠です。
特に収支計画の部分は、融資担当者が最も気にするところです。
計画した売上の根拠をロジックと証拠で固めなければなりません。
例えば、自分の指名客の数、過去の実績などから売上を予測する。あるいは、商圏分析や市場調査から顧客のボリュームを示す。
ちゃんと考えて計画を立てていることをアピールしなければなりません。
もう一つ、融資面談で事業計画書について話せないという理由で審査落ちするケースもあります。
これは、コンサルタントや税理士に事業計画書を作ってもらったりすると起こりえるケースです。
事業計画書の内容を理解していないと、質問されたときに答えられません。あるいは、事業計画書と話している内容に矛盾が生じたら「この人が作っていないのでは」と思われてしまいます。
事業計画書の代行サービスなどがありますが、すべて丸投げするのは好ましくありません。あくまで自分が事業計画書を作り、添削やフィードバックをもらうくらいにしておきましょう。
事業計画書が原因で審査落ちした場合、計画書を練り直せば再審の可能性があります。事業計画書のどの部分がひっかかったのかをしっかり確認しましょう。
しかし、「誰かに作ってもらっている」「事業について真剣に考えてない」と判断されると、再審は難しいと思います。
対策① 日本政策金融公庫に再挑戦
計画内容や自己資金について、日本政策金融公庫からフィードバックをもらえているならば再挑戦の余地があります。
事業の規模の見直し(家賃負担が小さい)、開業場所の見直し(見込み客が増えそうな場所)をして、あらためて事業計画書を練り直し申し込みましょう。
再挑戦するにしても、準備に半年以上かかります。その間に、少しでも自己資金を増やすなどの努力も必要になります。
対策② 民間金融機関の融資を受ける
民間金融機関で融資を受ける場合には、信用保証協会の「保証付き融資」を利用します。
信用保証協会が万が一返済できなくなった時の保証をしてくれるため、金融機関が安心して新規事業者にお金を貸せるというメリットがあります。
一方で、信用保証協会、民間金融機関の両者と審査手続きを始めるため、日本政策金融公庫に比べると、融資決定に時間がかかるというデメリットがあります。
また、自治体の制度融資を使う手もあります。制度融資は、信用保証協会、民間金融機関、そして自治体が3者で協力して融資を実行します。
自治体が利息の一部を補填することで、借入れ負担が軽減されます。
民間金融機関で融資を検討する場合には、「保証」を取り付けることが大事です。
対策③ リース・ローンを使う
融資審査が通らなかった場合に、内装工事や美容器具をリースやローンを利用する手もあります。オーナーに代わって、リース会社に内装や器具代金を支払ってもらうという資金調達方法です。
リース・ローンは初期費用が大幅に削減できるメリットがあります。リース代金は毎月の営業で支払っていくことになります。
審査落ちした場合には、借入金がゼロになるので、その分の金額は大きくなります。
金額が大きいと、一つのリース会社だけで対応することは難しいため、複数のリース会社に依頼することになるでしょう。
ビューティガレージでは「店舗まるごとリース」というサービスを提供しています。ビューティガレージがオーナーに代わって店舗を作り、オーナーに経営してもらうという方法です。
資金調達は「お金を借りる」だけではなく、「代わりに買ってもらう」という手段もあるということはぜひ知っておいて欲しいと思います。
まとめ
日本政策金融公庫による融資の「審査落ち」は、減額とは違います。融資審査で提出した条件では開業ができないということです。
もし審査落ちの原因がオーナー個人の資質にかかわるものであれば、再挑戦しても受からない可能性は十分ありえます。
特に「信用情報」が理由で審査落ちしてしまった場合、金融機関からの借入れは難しくなるため、自己資金を増やす、親族に出資してもらうなど市場を介さない方法を探すしかありません。
「自分の信用情報がどうなっているか」が知りたい場合、はCICやJICCなど信用情報機関にお問い合わせください。
日本政策金融公庫での審査に落ちてしまった場合、落ちた原因をしっかり分析して、①再挑戦するのか、②別の民間金融機関から借入れをするのか、あるいは③ローンやリースを活用するのかを決めましょう。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。