しっかり答えて開業資金を獲得しよう!審査面談で融資担当者が知りたいこと
日本政策金融公庫の融資審査では、担当者との審査面談が行われます。事業計画書の内容に沿って様々な質問に答えていきます。
開業相談で「そもそも事業計画書を作っていて、自己資金も十分あって、信用情報も問題がない状態であるのに、なぜわざわざ面談するのですか」という質問を受けました。
オンライン融資やカードローンなどは、融資面談なしで金を貸せる仕組みができています。必要情報を入力したり、提出資料をアップロードしたりするだけで借入限度額が判定されます。
そう考えると、面談を省くこともできそうだと言えます。
しかし、日本政策金融公庫は「無担保」「無保証」でお金を貸します。しかも、貸し出す金額も1000万円になることもあります。
特に創業融資の場合、その事業がうまくいくかどうかを過去の実績から予測することもできません。したがって「人物を見る」ことも非常に大切な審査プロセスです。
では面談でどんなところを確認しているのでしょうか。今回は融資面談で担当者が確認したいことについてお話しします。
開業者の人物
融資担当者は、面談での質問を通して開業者が経営者に相応しい人物かどうかを判断しています。
まず第一に「開業に対する熱意が本物かどうか」を見ています。
創業の動機やこれまでのキャリアを語ってもらう中で、開業への本気度を調べています。
なぜこのタイミングなのか、開業してどういうサロンを作りたいのか、しっかり想いを伝えられるようにしましょう。
第二に「サロンオーナーとしての資質」を探ります。
これまでの美容師としての取り組みなどを話してもらい、リーダーシップを取ってきた人なのか、周囲のメンバーとうまく仕事ができる人なのか、などを知ろうとします。
店長としての経験があれば、その時どんな取り組みをしたのかなどを具体的なエピソードを交えて話せるとよいでしょう。
面談中に交わされる言葉の中で、融資担当者にも「この人にはお金を貸すだけの価値がある」と判断します。
開業に対する熱意と、開業して成果が出せる能力や実績をアピールしましょう。
事業計画の説明
融資面談では事業計画書の内容に沿って話が進みます。その中で事業計画書をより深堀りした説明が求められます。
それは同時に、「事業についてしっかり考えているか」を確認するためでもあります。
開業サポートでも、私たちが開業者の作った事業計画書を添削します。その時に、読んでも意味がわからない箇所や、抽象的な表現に対して、より詳しく聞くことがあります。
しっかりと読めば読むほど、質問が出てくるのは当然です。
また、それに対して説明ができないのであれば「その人が本当に作った計画書なのか」と疑問を持たれてしまいます。
融資面談では収支の見通しなどの数字の根拠を求める質問もあります。例えば、客数100人という計画に対して「どうして100人来ると見立てているのか」といった具合です。
もちろん計画ですので、確実に100人来るかどうかを聞いているのではなく、100人と考える根拠を示さなければなりません。
「自分の見込み客」「ホットペッパーでの効果実績」あるいは「リピート率の高さ」など、100という数字にたどり着いた理由を伝えなければならないのです。
事業計画書だけでなく、それを通じて、より深く開業者の考えを知ろうとしているのです。
懸念点の払拭
融資担当者の目的は「お金を貸して利息をもらうこと」です。
元金の返済と利息の支払いができていれば、サロンは儲かっているということになります。融資担当者はシビアに「本当に儲かるのか、万が一うまくいかなかったらどうするか」を考えます。
一方、事業計画書や自己資金は、ある意味、お金を借りるためのアピールでもあります。わざわざ自分からマイナス面を事業計画書に載せる人はあまりいません。
そうすると、融資担当者は事業計画書の不安な点を聞き出す必要がでてきます。
面談でよく聞かれるのは収支の見通しです。例えば、融資面談では以下のような質問が来ます。
「創業当初の売上が200万円になっていますが、これは手堅いですか」
これは、計画が楽観的なのか、比較的現実的なのかを知ろうとしています。
「1日平均8人の客数。スタイリスト一人あたり4人の接客ということですね。ちなみに今は1日何人施術されていますか」
この質問は、過度に多くの顧客が来る想定をしていないかを確認するためです。
また「自己資金を事業に投資した後、しばらく生活できる余裕資金がありますか」といった質問もでます。
計画書や自己資金、支払い状況だけを見ても「うまくいかなかった場合どうするか」は見えてきません。
したがって融資面談では、そういう質問がでてくるのです。
面談で答えられるための準備が必要
以前コラムに「融資担当者は開業者の味方です」という記事を書きました。融資面談の担当者は、開業者にお金を貸すために必要な情報が欲しいのです。
開業者は融資担当者に協力するという姿勢を見せるほうがよいのです。
せっかく面談の機会を作ってくれて、かつ、融資を獲得するために手伝ってくれる相手です。
開業の熱意を伝えましょう。融資担当者が事業計画書で気になっている部分を言葉で補いましょう。
うまくいかなかった場合の打ち手やリスクへの対応もしっかりと伝えておきましょう。
融資面談は自分をアピールするチャンスでもあります。しっかり準備をして面談に臨んでいただきたいと思います。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。