クラウドファンディングで美容室を開業!成功事例を徹底解析
クラウドファンディングは、美容室など店舗のオープン資金の調達手段としても利用されています。
しかし、クラウドファンディングをうまく利用できず失敗に終わることもあるでしょう。
そこで、クラウドファンディングで成功した美容室のサイトの掲載内容を徹底分析。サイトに掲載した内容の傾向やリターンについての調査結果をお伝えします。
美容室開業の資金調達にクラウドファンディングを検討している方は、ぜひ参考にして下さい。
目次
クラウドファンディングの仕組み
近年注目されているクラウドファンディングは資金調達手段の1つです。
クラウドは「群衆」、ファンディングは「資金調達」という意味で、「インターネットを介して不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達する」ことを指します。
引用:https://camp-fire.jp/crowdfunding
ここではクラウドファンディングの仕組みを説明するため種類や方式、銀行融資との違いを解説します。
クラウドファンディングの種類
クラウドファンディングの大きなくくりとしてまず「投資型」と「非投資型」があります。
投資型は金銭的なリターン、非投資型は金銭以外の物・サービスのリターンが特徴です。
投資型と非投資型はさらに分類でき、投資型には株式投資型・組合出資型・ファンド型、非投資型には購入型・寄付型などがあります。
クラウドファンディングの2つの方式
美容室開業のクラウドファンディングでよく利用されるのは「購入型」です。
購入型クラウドファンディングには「All or Nothing」「All in」という2つの方式があります。
「All or Nothing」はプロジェクトの支援金が目標額に達しなかった場合、全額返金する方式です。
支援金額が目標額に達するとクラウドファンディングが達成されたとみなされ、支援金が受け取れます。
反対に「All in」は目標額が未達成でも集まった支援金は全額受け取れます。
ただし、目標金額に達しなかった場合でもプロジェクトの開始することを条件としているケースがほとんどです。
どちらの方式を利用するかは自由ですが、サイトによって利用条件が異なるので注意しましょう。
銀行融資とクラウドファンディングは何が違う?
銀行の融資とクラウドファンディングの相違点は、審査方法と受け取れる金額です。
銀行融資は銀行側にリスクが生じるため、出資にふさわしいかどうか実績などを考慮した審査が行われます。
それに対し、クラウドファンディングの審査はある程度の社会貢献性がある商品・サービス開発などのプロジェクトであることが求められる傾向があります。
2つ目は受け取れる金額の違いです。
クラウドファンディングでは支援金を受け取るため実現可能な目標額の設定が求められますが、銀行では自己資金に応じて融資額が変わります。
自己資金とは預金通帳や退職金、贈与や資産売却で得たお金であり、出所が明確で返済義務のないことが条件です。
したがって出所が曖昧なタンス預金や無利息でも返済義務のあるお金は自己資金として認められません。
創業融資条件として総投資額の10分の1以上を自己資金で用意することが挙げられるケースもあるため、銀行融資は自己資金によって融資額が変わるのです。
美容室の開業資金の平均額が気になる方は、こちらもぜひご参考にしてください。
SALONスターターが調査した2020年度の開業費用の平均を掲載しております。
https://kaigyo.beautygarage.jp/archives/8186
クラウドファンディングにはどんなサイトがある?
「株式投資型」「購入型」「寄付型」などクラウドファンディングの種類ごとにサイトがあるのは当然ですが、実際には1つの種類につき複数のサイトが存在しています。
同型サイトが複数あるので、その中からユーザーに選んでもらえるような工夫が必要です。
同型の他サイトと差別化を図るため、各サイトは独自サービスやコンサルタントによるサポートなどを導入しています。
各クラウドファンディングの特徴
以下の表に購入型クラウドファンディングサイトの特徴をまとめました。
特徴を見て、どのサイトが美容室開業のクラウドファンディングに向いているか考えてみてください。
サイト名 | 種類 | 特徴 | 手数料 |
READYFOR | 購入型 | 達成率75%と高め。プロジェクトの作成にコンサルタントのサポートが受けられるのも特徴。 | 12%、17% |
CAMPFIRE | 購入型 | プロジェクト公開前の審査が最低限なのですぐに公開できる。 | 12% |
Makuake | 購入型 | 商品開発やイベント提携が得意。韓国への市場動線が強い。 | 20% |
GREEN FUNDING | 購入型 | エンタメから社会貢献まで幅広い。CCCグループと提携を結んでおり、プロジェクトが成功すれば店舗に商品やサービスを陳列することも可能。 | 20% |
MotionGallery | 購入型 | 音楽・写真・アートなどの芸術系プロジェクトに強い。 | 10% |
ENjiNE | 購入型 | アイテムや体験型サービス多数。成功プロジェクトの平均調達金額が約200万円と業界最高水準。 | 20% |
GoodMorning | 購入型
寄付型 |
CAMPFIREと同じ会社が運営。学校の設立や病気・障害がある人を対象にした商品やサービスの提供など、社会貢献性の高いプロジェクトが多い。 | 9%(CAMPFIREにも掲載する場合は計17%) |
クラウドファンディングで目標を達成した美容室の掲載内容
各クラウドファンディングサイトを調査し、支援金が目標金額を達成した美容室の掲載内容を分析しました。
内容は主に自己紹介やオープンに対する思い、美容室で提供するサービス内容、支援金の用途、設計図・イメージパース・写真です。
これらの項目にどのような効果が期待できるのか、その理由も併せて解説します。
自己紹介
プロジェクト紹介は全て発起人の自己紹介から始まります。文字による自己紹介だけでなく、顔写真の掲載も多数見受けられました。
自己紹介を掲載するメリットは、プロジェクト発起人の人柄が分かるだけでなく、経歴や受賞歴を見て「美容室のオープンに足るスキルが十分にあるかどうか」が判断しやすくなる点です。
例えば「○○店で〇年働き、トップスタイリストとして活躍していました」という文言があればどうでしょう。
美容師としてのスキルがあることをアピールできるので、支援者も支援するに値する人物であると判断できます。
オープンに対する思い
美容室をオープンするにあたり、どのような思いでプロジェクトを開始することになったのかを説明します。
「地元の経済を活性化したい」「空き家をリノベーションし、空き家問題の改善に貢献したい」など理由はさまざまですが、クラウドファンディングで美容室のオープンを目指す理由として、ある程度の社会貢献性をアピールしているケースが多くみられました。
「オープンに対する思い」でプロジェクトにおける社会貢献性をアピールすることで、美容室のオープンにより個人の金銭的利益以外にどんな社会的効果が期待できるのかを示すことになります。
支援者からすれば自分が支援したプロジェクトが大きな意味を持ち、多くの人の役に立つのであれば嬉しいと感じるはずです。
美容室で提供するサービス内容
オープン予定の美容室で提供するサービスの内容を掲載します。
期待されているのは各サービスの料金を掲載ではなく、提供できるサービスの明記です。
カットやカラー、パーマなど一般的なサービスのほか、ヘッドスパやカフェ・フリースペースを併設する予定があればそれを掲載するのもよいでしょう。
支援金の用途
テナントや空き家のリノベーションや設備工事、内装費用など、かかる費用を項目ごとに分けて掲載します。
項目ごとの金額の公開は設定した目標金額が妥当であることを示す役割があり、支援者がプロジェクトの正当性を判断する材料の1つです。
例えば国に支払った税金がどのように使われ還元されるのかが気になる人も多いはずです。
クラウドファンディングでも同じで、支援者は自分が支払った支援金がどのような用途に使われるのかに非常に興味があります。
支援金の用途を明確に示していればプロジェクトと発起人への信用性も増すので、支援者がより応援したくなることが期待できます。
設計図・イメージパース・写真
店舗の設計図やイメージパース、写真があればどんな店舗になるのかイメージしやすくなります。
クラウドファンディングで資金を集めている段階でこれらのデータがあれば、発起人が店舗オープンに向けて積極的にプロジェクトを進めていることも分かるでしょう。
設計図やイメージパースは依頼したデザイン事務所が作成したものもあれば、プロジェクト発起人によるものと思われる手書きのものもあります。
目標達成した美容室のリターン6選
支援金が目標金額に達した美容室のプロジェクトを対象に、どのようなリターンを用意しているのかを調査・分析しました。
その中で多くみられたリターンを6つ、ご紹介します。
カット券
オープン予定の美容室でカットできる券です。
初回のみ、3回、5回カットできる回数券、〇〇円分と、いくつか種類を用意しているケースも多くみられました。
カラー券
カット券と同じくオープン予定の美容室でカラーができる券です。
カットと比べるとコストはかかるものの、カラーが得意なのであればカラー券を用意するとよいでしょう。
シャンプー・トリートメント券
シャンプー・トリートメントは髪を切るよりハードルが低いと言えるので、「リターンは欲しいけれど、カットはリスクが大きい」と考えている支援者にぴったりのリターンと言えるでしょう。
また、接客レベルが気になる支援者にもぴったりです。
ヘアケアアイテム
実際に美容室で使用するシャンプー・トリートメントなどのヘアケアアイテムをリターンとして用意します。
来店の必要があるカット券などと比べると、来店が難しい遠方にお住いの支援者には嬉しい返礼品です。
年間フリーカット券
少数ではありますが、年間フリーカット券をリターンにしているプロジェクトもありました。
7万円台から10万円ほどの支援金に対するリターンです。支援金額があまりにも高額だと選択されません。
月1回カットすると仮定してカット料金×12回で計算し、支援金額がそれを越えないようにしましょう。
地域の銘菓・特産品
特定地域の経済活性化などを目的として美容室をオープンするのであれば、地域の銘菓や特産品をリターンとして用意するのもよいでしょう。
【番外編】美容室独自のリターン
「この美容室でしか体験できないリターン」として、ほかのプロジェクトでは見られないようなリターンもありました。
オリジナリティがあり、面白みのあるリターン内容です。
・店舗敷地内で栽培した有機野菜セット
・併設するカフェ利用チケット
・オリジナル本
・シェア本棚年間運営権
クラウドファンディングを利用するには?
購入型のクラウドファンディングは個人でも利用が可能なサイトが多く、プロジェクトを作成してから成立させるまでの手順も難しいものではありません。
ここではサイト選びからプロジェクト作成、リターンの送付時における注意点などを解説します。
クラウドファンディングサイトを選ぶ
まずは、どのクラウドファンディングサイトでプロジェクトを開始するのか決めましょう。
「1-2.クラウドファンディングの2つの方式」で解説したように、美容室オープンのために資金調達したいのであれば「購入型」のサイトがおすすめです。
どのサイトを選べばよいか分からない人は「2-1各クラウドファンディングの特徴」も参考にしてみてください。
プロジェクト作成
プロジェクトの作成に取り掛かります。
内容は「3クラウドファンディングで目標を達成した美容室の掲載内容」や「4目標達成した美容室のリターン6選」も参考にしてみてください。
サイトによってはコンサルタントのサポート付きプランもあるので、不安な人はどんどん活用しましょう。
審査
プロジェクトと契約書の内容を審査します。
審査期間は2~3営業日や即日~5日程度と、1週間かからない場合がほとんどです。
審査基準については詳しく説明されていませんが、利用規約を見て推測すると「契約書とプロジェクト内容に虚偽がないか」「リターンの内容が法令を遵守していないまたはその恐れがないか」などがチェックされるようです。
プロジェクトの公開・拡散
審査に合格すればプロジェクトが公開できます。
新しいプロジェクトはサイト内の新着に掲載されますが、自ら発信することも大切です。
SNSなどを駆使してプロジェクトの拡散に努めましょう。
サイトによってはプレスリリース一括配信サービスがあるので、それを利用すればプロジェクトを広く認知してもらうことも可能です。
定期的な情報発信
プロジェクトページなどで定期的に活動報告すると、きちんとプロジェクトが進んでいることが支援者に伝わります。
活動報告できる機能がページになければ、目標額に達した時点で感謝の言葉を追記するのもよいでしょう。
プロジェクトの成立
目標額に達すればプロジェクトの成立です。「All or Nothing」方式であればこの時点で支援金を受け取る権利が発生します。
プロジェクト成立時点で入金されるシステムを導入しているサイトもあるので、早く支援金を受け取りたい方はよく確認しておきましょう。
リターンの送付
プロジェクトの成立がプロジェクトの終了ではありません。リターンの送付をもってプロジェクトは完了します。
オープン前は忙しいため、リターン送付のための時間をあらかじめ確保しておく必要があります。
まとめ
クラウドファンディングの仕組みや種類、プロジェクトが成功した美容室に掲載されていた内容やリターンなどをご紹介しました。
クラウドファンディングで資金調達を支援する理由には自己資金の不足のほかに社会貢献性があることも重要視されます。
地域経済の活性化、髪の悩みを持つ人を自分のスキルや新しい技術で救いたいなど、開業して利益を得る以外の動機が必要です。
どこに焦点を当ててアピールするかは自由ですが、その思いに賛同して支援したくなるようなプロジェクトでなければ不成立どころか審査が通らない可能性もあることも覚えておきましょう。
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。