実例を紹介しながら解説!共同経営で開業するときに注意すべきポイント!
勤務先の先輩・後輩が一緒に開業相談に来ました。「二人で開業したい」「共同代表という形で、サロンを経営していきたい」と言います。
詳しいデータは取っていないのですが、最近こうした共同経営を目指す開業者が増えている気がします。
昨今では、共同経営がうまくいって有名になった美容室が脚光を浴びました。
今回は、実際の開業者の事例も紹介しながら、仲間と一緒にサロン経営を目指す人に知ってもらいたいポイントについて話したいと思います。
目次
共同経営を目指す人の心理
共同経営を目指すためには、当然、仲間が必要です。従業員ではなく、サロンの中枢で同じ責任を負ってくれる仲間です。
開業相談で話を聞いていると、共同経営を目指す人には主に二つの理由があると思います。
互いの足りない部分を補える
サロンを経営していくためには、様々な仕事があります。サロンの運営だけでなく、資金繰りや、取引先との交渉など多岐にわたる。
すべてをオーナーがやるよりも、できる人に任せたほうが、効率も良いし、自分の強みに集中できると考えます。
開業サポートを受けていただいたAさんとBさんは先輩・後輩でした。社交的で資金を持っているAさんは融資や不動産との交渉にあたりました。
Bさんは店長経験があり、スタッフの育成に長けていました。それゆえ、サロンのオペレーションや、スタッフへの技術指導を行うことになりました。
サロンは1年目から軌道に乗って、2年目には、近くに2店舗目も作りました。役割分担を明確にして、自分の強みに集中することで、成功した事例だと思います。
一人でやるよりも可能性が広がる
「自分の資金だけでは、大きなサロンを作れない。だから、みんなでお金を出しあおう」
そういう人もいます。
Cさんは原宿での開業を計画していました。しかし、物件取得費用と内装費がかかるため、自己資金と借入金だけでは開業が難しい状況でした。
そこでCさんは、同じサロンで働くフリーランス仲間であるDさんと合同会社を設立。Dさんの自己資金を加えることで、資金調達に成功しました。
このケースでは、出資者を増やすことで自己資金を増やしたことに加え、同エリアで活躍するDさんが入ることで、収支計画にも信ぴょう性ができたことで、融資を確保できました。
大きなハコを最初から目指す場合、資金計画、収支計画に無理が出ることがあります。そうした課題を解決する手段の一つとして、共同経営という考え方があります。
一人では「こんな一等地で開業は無理かも」と思っても、仲間と一緒ならば乗り越えられることがあるのです。
共同経営での失敗例
もちろん、共同経営もうまくいくことばかりではありません。
EさんとFさんは法人化して共同経営者としてサロンをオープンさせました。
Eさんが発起人なのですが、自己資金が足りなかったり、信用情報が不安だったりしため、自己資金をFさんに出してもらいました。
結果として、Fさんが代表として、融資を受けて開業することになりました。
Fさんは自分のお金を使って開業したこともあって、どんどん自分の意見をサロンづくりに反映させました。Eさんもそこに負い目を感じていたのか、Fさんに遠慮をするようになりました。
結局、Eさんが当初抱いていたイメージとはずいぶん違うサロンになっていきました。
その後、EさんはFさんと袂を分かって再び自分で開業を目指すことにしました。
この事例から言えることは、出資比率が意思決定に影響を及ぼすということです。
会社の自己資本のうち、Fさんが100%出資しています。出資比率が大きいほうが、意思決定者になるのです。
では、共同出資として同額だったとしたらどうでしょう。
出資比率を同じにしてしまうと、意思決定が進まなくなる可能性があります。共同経営だからと言って、必ずしも全員が同じ意見になることはあり得ません。
その場合、どの意見を採用するかで揉めることがあります。意思決定が曖昧だと、物事が進まないどころかトラブルの原因にもなってしまいます。
ここから言えることは、共同経営だからといって「平等を求めるとうまくいかない」ということだと思います。
共同経営のポイント
責任
共同代表だと言っても、お金を借りるときには、どちらか(誰かが)一人が代表で借ります。
それは法人でも個人でも同じ。まして、法人の実績がない以上は、代表者その人の自己資金、信用情報が審査されます。
複数の経営者の中であっても、代表者=最終責任者が必要になるのです。全員が同じ責任を負うというのは極めて稀なケースだと言えます。
これは、夫婦開業でも同じです。
価格や開業場所、内装デザインを巡って、開業する前に揉めることもあります。
自分がお金を出してサロンを作るのに、パートナーの注文が多すぎて、けんか別れする寸前に発展するというケースもありました。
つまり、共同経営でも最終決定者は一人になるべきなのです。
「最終的に決断を下す人は誰なのか」を明らかにしないと、意見がまとまらなくなると前に進まないのです。
多いのは「誘ったほう」が代表になるケースです。言い出したほうがコミットしてサロンづくりを進めるべきです。
どうしても一人に責任を負わせたくないならば、意思決定のプロセスや方法をルール化しておくべきです。
役割分担
共同経営のメリットは「一人ではできないことができるようになる」ことです。
最終的な責任者は自分がとるとしても、他の人には自分が苦手な分野を任せることで、サロン運営がうまく回ります。
Aさん、Bさんの役割分担は非常にわかりやすいと思います。Aさんが最終的な責任者ですが、店舗のオペレーションはすべてBさんが責任をもって取り仕切りました。
共同経営の場合には、開業準備を始める前に、「誰がどんな仕事をするのか」をしっかり話し合うことをお勧めします。
それと同時に、サロンの重要な意思決定の方法なども決めておくと、何かあった時にも揉めることなく物事を進めることができます。
まとめ:共同経営は「責任」と「役割」に注意
共同経営では大きく二つのメリットがあります。
・互いに足りない部分を補うことができる。
・一人ではできないことに挑戦できる。
一方で、デメリットもあります。
・複数代表者がいると、責任があいまいになりがち。
・意思決定を巡って対立が起こるとトラブルになる。
共同経営でサロン開業を目指す場合、以下の点に注意しましょう。
・最終責任者が誰かを決めること。
・意思決定の方法を決めること。
・それぞれの役割を明確にすること。
決して義務ではありませんが、共同経営契約書のような形で文書化しておくとよいでしょう。そして定期的に見直しながら、改善していくことも不可欠です。
共同経営には大きな可能性があると思います。
途中で頓挫しないためにも、責任と役割をしっかり確認したうえで、開業準備を進めていきましょう。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。