自分がやりたいことだけで書いてませんか。融資担当者がもとめる「創業の動機」
日本政策金融公庫の創業計画書には「創業の動機」という欄があります。創業の動機というと、自分が開業する理由や背景を書くと思われがちですが、少し注意が必要です。
今回は、事業計画書の「創業の動機」について考えてみましょう。
やりたいことと、できることはセットで書く
開業の想いを熱く語ることは重要ですが、それだけを書くのはあまりよくありません。
例えば、
美容師として働いて、よりスタイリストに寄り添ったサロンを作りたいと思うようになった。
地元にもどって、自分が生まれ育った街を盛り上げたい。
一人ひとりのお客さまに寄り添って、クオリティの高いサービスを提供したい。
どれも立派な動機だと思います。しかしそれだけで終わってはいけません。なにが足りないか。それは「それを実現するために自分が準備してきたこと」です。
自分がやりたいことをできるだけの技術、サービスがあることも書き足します。
スタイリストに寄り添ったサロンを作るために、店長としてスタッフマネジメントに力を入れてきた。
地元の美容業界を盛り上げるために、東京で最先端の技術を磨いてきた。
クオリティの高いサービスを提供するため、高単価メニューのサロンで指名客を増やしてきた。
やりたいことと、できることはセットで書きましょう。
ネガティブな動機はNG
開業者の中には、今のサロンへの不満を書く人もいますが、それは当然、融資担当者に悪い印象を与えかねません。
単価が安くどんどんお客さまが入ってくるため、休みもろくに取らせてもらえず、厳しい労働環境で働いてきた。今後は自分のサロンをもって余裕のあるサロンワークを行いたい。
こうした文章はできるだけ、ネガティブな印象を消す工夫をします。
客数が多いサロンを経験して、もっと顧客一人ひとりとゆっくり向き合う機会を作りたいと思うようになった。
事実として、現状の不満から開業しようとする方も多くいます。しかし、それを融資担当者に知ってもらう必要はありません。
逆にその内容を面談で聞かれたら、堰を切って話し始めてしまい、融資担当者に悪い印象を与えるリスクもあります。
未来志向で動機を書くのがおすすめです。
開業できる資質があると思わせる
創業計画書の目的は、融資担当者に自分が開業するのに十分な資質をもっていることをアピールすることです。
したがって、この人は開業しても大丈夫だと思わせることも大切になります。もちろん、職務経歴書にも載せていきますが、創業の動機にも実績を書いておくのもよいでしょう。
美容師として●●年、ずっと○○エリアで働いてきた。指名客も200人を超え、月の売上も150万を超えるようになったことで、独立していける自信がついた。
○○店では店長を務め、店の売上を3年連続で20%増にしてきた。スタッフのマネジメントにも自信がついた。
自分がすでに開業できる準備ができていることをしっかりアピールしましょう。
なぜこのタイミングなのかを明確に
創業の動機だけではなく、「なぜ今開業するのか」を端的に書く必要があります。
タイミングは人それぞれですが、物件が見つかったこと、家族のイベント事などが多いです。
○○エリアによい条件の物件が見つかったため開業を決意した。
子どもが幼稚園に入るタイミングになり独立することを決めた。
あるいは、開業するために目標を立てていて、その目標を達成したため開業する人もいます。
目標であった指名客100人を達成したため、自分の店舗を持とうと決めた。
なぜこのタイミングなのか、についても触れておきましょう。
求められるのは経営者としての資質
創業計画書の「創業の動機」には、下記を盛り込むとよいでしょう。
- 開業して達成したいこと
- そのために準備してきたこと
- 開業できるだけの技術・サービスが身についていること
- 今開業をすべき理由
創業の動機も、融資審査の一部です。ただやりたいことだけをつらつらと書くのは得策ではありません。
自分は経営者としての資質を備えているという部分を意識して書いてください。
開業無料相談では、創業計画書の書き方についてもアドバイスをさせていただいております。ぜひ、ご利用ください。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。