サロンを店舗展開する際の主な障壁とは?

美容室を経営していると「次は2店舗目を出したい」「さらに多店舗展開を目指したい」と考えるタイミングが訪れます。
しかし、店舗展開は決して簡単な道のりではなく、多くの経営者がさまざまな壁に直面します。
今回は、美容室の店舗展開における代表的な障壁と、それを乗り越えるための視点を整理していきましょう。
人材の確保と育成
店舗展開において最大の課題は「人」です。
1店舗目はオーナーが直接現場に立ち、お客様との関係を築きながら経営を回すことができます。
しかし、2店舗目以降はオーナーが全ての店舗に立つことは難しくなります。
そのため「信頼できる店長や幹部を育てられるか」が最大のカギとなります。
また、美容師は離職率が高い業界でもあり、人材が定着しにくいという現実があります。
待遇や働き方の柔軟性を整えるだけでなく、「ここで働き続けたい」と思ってもらえる教育制度やキャリアパスの構築が欠かせません。
近年、教育コンテンツとして技術動画を収録し、働いているスタッフが隙間時間に学ぶことが出来るように「教育×動画」での教育環境を整える動きも活発になってきました。
経営管理の複雑化
1店舗の経営では数字や売上の管理も比較的シンプルですが、店舗数が増えると管理は一気に複雑になります。
売上や経費の把握、スタッフごとの生産性の可視化、在庫管理、予約システムの連携など、オーナーが感覚で把握していたことが数字と仕組みで管理されなければなりません。
この段階で必要になるのが「マネジメント体制の構築」です。
店舗ごとの責任者、全体を統括する管理者、そしてオーナー自身の役割を明確にしなければ、すぐに経営が混乱してしまいます。
資金調達と資金繰り
新しい店舗を出す際には、内装・設備・初期在庫・採用費など多額の資金が必要です。
金融機関からの借入や補助金の活用を検討することになりますが、店舗数が増えれば返済額も大きくなり、キャッシュフローの圧迫につながります。
また、オープン直後は売上が安定しないため、資金繰りの見通しが甘いとすぐに赤字に陥る危険性もあります。
金融機関の借り入れ以外の方法で店舗をづくりをする方法もあるので、選択肢の一つとして考えておくのもありかもしれません。
ブランドの一貫性と差別化
店舗が増えるほど「どの店舗でも同じクオリティを保てるか」という課題が出てきます。
技術の統一、接客、サービス提供のスピードなどが店舗によってばらついてしまうと、ブランドの信頼が崩れてしまいます。
さらに、どのエリアに出店しても競合は必ず存在します。
同じブランドの店舗であっても「その地域に合ったコンセプト設定」が重要です。
都市型と郊外型では求められるニーズが異なるため、ブランドの一貫性と地域特化型戦略の両立が不可欠になります。
立地選びと商圏分析
美容室の成功を大きく左右するのが「立地」です。
店舗展開を進める際、物件を探して契約すること自体は難しくありませんが、問題は「その立地で本当に集客できるのか」という点です。
商圏分析を怠ると、家賃が高すぎて利益が出ない、人口ボリュームが合わずリピーターがつかない、といった失敗につながります。
店舗数が増えるほど物件選びの精度が求められ、戦略的に出店計画を立てる力が試されます。
オーナーの役割変化
1店舗目ではオーナー自身がトップスタイリストとして現場に立ち、お客様を担当しながら経営も兼務することができます。
しかし、2店舗目以降は現場に立つ時間が減り、経営者としての比重が大きくなります。
「プレイヤー」から「マネジメントする経営者」へと役割をシフトできるかどうかが、大きな壁です。
技術力に自信があるオーナーほど、この転換に苦労するケースが多く見られます。
まとめ
美容室の店舗展開は、夢や理想を形にする一方で「人材」「資金」「経営管理」「ブランド」「立地」「オーナーの役割転換」など多くの壁が存在します。
これらを乗り越えるには、感覚的な経営から数字と仕組みに基づく経営へとシフトする必要があります。
特に重要なのは「人づくり」と「仕組みづくり」です。スタッフが安心して成長できる環境を整え、店舗間のクオリティを統一するルールを確立できれば、多店舗展開は持続的に成功していきます。
店舗展開はゴールではなく新たなスタートです。
オーナー自身が学び続け、スタッフと共に成長する姿勢があれば、障壁は一つひとつ乗り越えていけるでしょう。
●文/コンシェルジュチーム:藤平
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。