美容室開業の完全ガイド|流れ、費用、手続きから成功の秘訣まで
今回は美容室の開業に必要な資格から、美容室開業までの流れ、開業費用や手続きなどについて詳しく解説します。また開業で失敗しないための注意点や成功のポイント、実際の美容室開業の事例なども紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
美容室開業のための資格
美容室を開業するには、いくつかの資格が必要です。特に、オーナー自身が美容師でない場合は、美容師としての資格を得るか、資格を持つ人を集めることから始める必要があります。
美容師免許
美容室を開業するためには、美容師免許が不可欠です。保健所からの営業許可を得るためだけでなく、融資審査でも美容師免許の提出が求められます。美容師免許を持っていない場合、厚生労働省指定の美容学校で学び、実技試験と学科試験に合格して美容師免許を取得するか、美容師免許を持つ人を雇用する必要があります。
管理美容師免許
美容室で2人以上のスタッフが施術を行う場合、誰か1人が管理美容師免許を持っている必要があります。管理美容師免許の取得には、美容師免許取得後3年以上の実務経験と、管理美容師講習会の受講が必須です。
オーナー自身が美容師免許しか持っていない場合でも、共に働くスタッフが管理美容師免許を持っていれば問題ありません。ただし、管理美容師免許を持つスタッフが辞めてしまう可能性を考慮し、オーナー自身も講習会を受けて管理美容師の資格を取得することをお勧めします。
美容室開業までの流れ
美容室を開業するには、大まかに以下の流れを押さえておきましょう。
事業計画書作成
開業準備の第一歩は「事業計画書」の作成です。融資を受ける場合でも、そうでない場合でも、事業計画書は重要です。「どんなサロンをいくらで作り、いくら儲けるか」を明確にしましょう。サロンのコンセプトやターゲットを決め、開業予算や目標利益を設定することで、出店エリアや物件の条件、内装デザイン、導入する美容器具などが決まっていきます。
物件選定
事業計画書がある程度完成したら、それをもとに物件選びを行います。エリアの下見を行い、ターゲットが来店しやすい立地かを確認します。内見を行い、電気・ガス・水道などの設備が整っているかを調べましょう。内装業者からレイアウトと見積もりが出たら、そこで出店するかを判断します。開業を決定したら、物件の申し込みを行い、審査を待ちます。
資金調達
物件の申し込みを進めている間に、開業に必要な資金を集めます。自己資金が不足している場合は、借入金を検討します。まずは開業にかかる費用の見積もりを集め、自己資金と比較して借入金額を決定します。
融資審査には自己資金、信用情報、事業計画が必要です。事業計画書、自己資金の証明書類、美容師免許、源泉徴収票などを用意しておきましょう。日本政策金融公庫の場合、融資審査の申し込みから結果が出るまで約1ヶ月かかります。リース・ローンも別の資金調達方法として検討できます。
内装工事と設備導入
融資が決定し、資金調達の目処が立ったら、物件を契約して内装工事を開始します。内装デザインやロゴデザインは、融資審査中にまとめておきましょう。
内装工事の工程表が出たら、美容器具の購入と納品の手配を行います。シャンプー台などの設置は給排水設備工事に合わせる必要があるため、納期については業者と調整しましょう。電気、ガス、水道などのインフラ使用申込も忘れずに行います。
オープン準備と宣伝活動
内装工事は通常3〜4週間かかるため、その間に営業に必要なものを揃えます。以下のものを準備しましょう。
- 販促物(ホームページ、ポータルサイト、紙媒体など)
- 予約システム/POSシステム
- 決済システム(クレジットカード、電子マネーなど)
- BGM(アプリやJASRACへの申請)
- 書籍(電子書籍など)
- 消耗品・備品
- 賠償保険・火災保険
特に販促物はオープン前に必要になるため、早めにデザイナーと打ち合わせを行います。また、スタッフの採用も資金調達ができた段階から進めないと、オープンに間に合わなくなります。資金調達に集中して営業準備が遅れないよう、店舗が完成する前に準備すべきことをリスト化しておきましょう。
美容室開業の手続き
美容室を開業するにあたってはいくつか手続きが必要になります。
美容室の営業にかかわる手続き
美容室として営業するためには、保健所からの営業許可が必要です。保健所に美容室開設届を提出し、費用を支払います。店舗が完成すると、保健所による確認検査が行われます。確認検査の日程は事前に調整するため、完工日からオープン予定日までの間に希望を出しましょう。
美容室をオープンさせるには「施術スペースの広さ」や「部屋の明るさ」など、営業許可を満たす基準があります。
保健所への申請・手続きの流れは以下の通りです。
1.事前相談
工事開始前に計画図面を用意して保健所へ相談しましょう。提出すべき書類を確認して準備を進めます。
2.開設届の提出
必要書類を準備して管轄の保健所へ提出します。書類提出時に開設検査手数料を支払い、開設検査(立入検査)日時の調整を行います。
3.立入検査
保健所の職員が立入検査を実施します。提出書類に基づき、構造(面積や照明など)や消毒用具について確認されます。
4.確認証の発行
立入検査で基準を満たすと確認証が発行されます。必要な書類は以下の通りです。ただし、各管轄の保健所によって異なる場合があるため、必ず確認しましょう。
- 開設届
- 物件の設備の概要と内装平面図、見取り図
- 従業者一覧
- 医師の診断書
- 美容師免許証(複数いる場合には管理美容師免許も必要)
- 法人の場合には登記謄本
- 検査手数料
営業許可がないと美容室はオープンできませんので、事前にしっかりと調べておきましょう。
人を雇用するときに必要な手続き
従業員を雇用する場合、個人事業主・法人にかかわらず労働保険に加入します。労働保険には雇用保険と労災保険があります。雇用保険は失業時に、労災保険は業務中や通勤中の事故によるケガや死亡時にカバーされます。
手続きは以下の通りです。
書類 | 提出先 | 提出期限 |
保険関係成立届 | 労働基準監督署 | 事業開始から10日以内 |
概算保険料申告書 | 労働基準監督署/都道府県の労働局 | 事業開始から50日以内 |
雇用保険料申告書 | ハローワーク | 事業開始の翌日から10日以内 |
雇用保険被保険者資格届 | ハローワーク | 雇用した日の属する月の翌月10日まで |
法人化した場合には、従業員の社会保険(健康保険、厚生年金)への加入も義務付けられています。手続きは年金事務所で行います。
税に関する手続き
新しく事業を開始した場合、税務署に開業届を提出します。サロンオープン後1ヶ月以内に提出することが理想ですが、提出しないことで罰則はありません。ただし、青色申告で確定申告を行う場合には開業届が必須です。
青色申告のメリットには、最大65万円の特別控除、赤字の繰り越し、家族の給与を経費計上できるなどがあります。これらの優遇措置を受けるためには、開業届と所得税の青色申告承認申請書を提出します。
税金や社会保障に関しては、税理士や社会保険労務士などの専門家に依頼することも一つの手です。コストはかかりますが、手続きにかかる時間を節約できます。また、安価なクラウド型の確定申告サービスや雇用管理サービスを利用するのも良いでしょう。
※美容室を開業する際に必要な届出・手続きの詳細はこちら
美容室開業に必要な費用
美容室を開業するには、さまざまな費用がかかります。ここでは、開業に必要な項目とその費用について詳しく解説します。開業資金は大きく分けて設備資金と運転資金に分かれます。
設備資金
設備資金とは、サロンの基盤を作るために必要な費用です。
物件取得費用
物件を契約するときに支払うお金です。家賃だけではありません。敷金・礼金・不動産への仲介手数料や、保証会社への支払いなど、家賃の6~12ヶ月はかかります。
内装工事費
スケルトン物件や事務所仕様の物件を改装する場合、坪単価40万円前後を想定しておきましょう。電気・ガス・水道設備が不十分な場合や、古い建物の補強が必要な場合には追加費用がかかることもあります。内装費用は余裕を持って見積もりましょう。居抜き物件を利用する場合には、内装費と器具代金が造作譲渡費用となります。
美容器具
セット椅子やシャンプー台、デジタルパーマ機器、ヘアスチーマー、ワゴン、スツール、タオルウォーマーなどが含まれます。メーカーによって価格は大きく異なるため、実際に使用感を確かめることが重要です。
設備
バックルームの洗濯機、乾燥機、冷蔵庫、サロン用パソコン、電子書籍用のタブレット、スピーカー、インテリア(椅子やテーブルなど)が含まれます。価格が大きいものを中心に、抜け漏れがないよう注意しましょう。
運転資金
サロンを営業するために必要な運転資金は、以下の通りです。
物件取得費
物件契約時における支払いのうち、敷金以外の項目があてはまります。礼金、仲介手数料、そして前払い家賃などが該当します。
保険
保険には、テナントにかかる火災保険と、サロンにかける店舗賠償保険があります。火災保険は物件契約時に不動産が指定する場合もあります。店舗賠償保険はサロンの規模(売上)に応じて保険料が変わります。
広告宣伝費(HPや集客ツール)
ロゴ作成費用、ビジネスカード、ショップカードなどの紙販促物、ホームページや予約システムなどのネット媒体、看板費用が含まれます。ホットペッパーなど、営業開始後に支払うものは含まれません。オープンまでに必要な販促物に集中しましょう。
備品・材料
施術に必要な材料の仕入れや備品の購入です。ビューティガレージやディーラー、メーカーから直接仕入れることもあります。ハサミやドライヤーなどの備品は必須です。開業当初は在庫を抱えすぎないようにしましょう。
採用費
もしスタッフを雇用する場合には、求人媒体に掲載したり、エージェントサイトに登録したりします。採用活動は長期になることが多いので、オープン後スタッフを増やす予定がある場合には、ここにも予算を振り分けておきましょう。
現金
予期しない費用や、オープン後に軌道に乗るまでの毎月の支払いをカバーするための現金を用意します。固定費の3~6ヶ月分を確保しておくと安心です。
開業で失敗しないための注意点
美容室開業で失敗しないためには、いくつかのポイントがあります。
現金管理
現金管理は、美容室経営の基盤となる重要な要素です。開業当初は予期せぬ出費や収入の変動があるため、十分な現金を確保しておくことが不可欠です。
特に、オープン後の数ヶ月間は固定費や運転資金をカバーできる現金を手元に置いておくことが重要です。具体的には、3〜6ヶ月分の固定費を確保することで、経営が安定するまでの間、安心して運営することができます。
見込み客の確保と育成
見込み客の確保と育成は、美容室の成功に直結する重要な戦略です。オープン前からターゲットとなる顧客層に向けたマーケティング活動を展開し、見込み客を増やしていくことが必要です。
SNSやホームページ、口コミサイトなどを活用して、サロンの魅力を伝えましょう。また、見込み客を育成するためには、一度来店したお客様にリピートしてもらうための施策も重要です。例えば、メンバーシッププログラムや割引クーポンの提供などを通じて、顧客のロイヤルティを高めます。
自己資本比率の管理
金融機関からの借入れを考えている人は、自己資本比率を意識しましょう。借入金と自己資金の割合です。少なくとも、トータルの開業資金の1/3から1/4は自己資金で賄えるように計画を立てましょう。自己資金が少ない場合には、出店規模を小さくしてスタートしましょう。
自己資本比率を高めることで、金融機関からの信頼を得やすくなり、必要な場合にはスムーズに追加融資を受けることができます。また、自己資本が豊富であれば、経営の自由度が高まり、長期的な戦略を立てやすくなります。
美容室繁盛のポイント
美容室を成功させるためには、以下の3つのポイントが重要です。これらの要素をしっかりと押さえることで、長期的なサロンの繁盛を実現できます。
顧客サービス
美容室はサービス業ですから、優れた顧客サービスは、美容室の評判を高め、リピーターを増やす鍵です。以下の点を意識しましょう。
- 丁寧なカウンセリング:お客様の希望や悩みを丁寧にヒアリングし、一人ひとりに合った提案を行います。
- 高品質な技術:スタッフの技術力を高め、常に高品質な施術を提供することで顧客満足度を向上させます。
- 快適な空間:清潔で快適な店内環境を整え、お客様がリラックスできる空間を提供します。
成功例: 丁寧なカウンセリングと高品質な技術で評判のAサロンは、オープン1年でリピーター率が80%を超え、安定した集客を実現しました。
失敗例: Bサロンでは、カウンセリング不足でお客様の希望に応えられず、クレームが増加。結果として、リピーターが減少し、収益が悪化しました。
差別化戦略
他の美容室と差別化を図ることで、独自の魅力をアピールし、競争力を高めます。
- 独自のコンセプト:特定のスタイルやテーマに特化したサロンを作り、明確なブランドイメージを構築します。
- 特殊メニューの提供:他店にはない独自のメニューやサービスを提供し、顧客の関心を引きます。
- 地域密着型のサービス:地域のニーズに応じたサービスを提供し、地元のお客様に愛されるサロンを目指します。
成功例: Cサロンは、オーガニック製品を使用したエコフレンドリーなサロンとして差別化し、健康志向の高い顧客層に支持されました。
失敗例: Dサロンは、明確なコンセプトがなく、競合店との差別化ができずに苦戦。結果として、集客に苦労しました。
継続的な改善
常にサロンの運営やサービスの改善に取り組むことで、長期的な成功を実現します。
- 顧客フィードバックの収集:定期的にお客様の意見や要望を収集し、それをもとにサービスを改善します。
- スタッフの教育とトレーニング:スタッフのスキルアップや接客力向上を図るための研修を定期的に実施します。
- 市場トレンドの把握:美容業界の最新トレンドや技術を常に把握し、それをサロンのサービスに反映させます。
これらの成功ポイントをしっかりと実践することで、顧客満足度を高め、他の美容室との差別化を図り、持続的な成長を遂げることができるでしょう。
成功例: Eサロンは、定期的な顧客アンケートを実施し、フィードバックをもとにサービスを改善。これにより、顧客満足度が向上し、口コミでの集客が増加しました。
失敗例: Fサロンでは、スタッフの教育を怠り、サービスの質が低下。結果として、顧客満足度が低下し、リピーターが減少しました。
まとめ:美容室開業で自分の抱える課題はどこかを見極めよう
美容室の開業には多くの準備と計画が必要ですが、成功するためのポイントを押さえることで、他の美容室との差別化を図り、長期的な成功を実現できます。
優れた顧客サービス、明確な差別化戦略、そして継続的な改善を心がけることで、魅力的なサロンを築くことができるでしょう。具体的な成功例や失敗例を参考にしながら、自分のサロンの強みを活かしていきましょう。
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●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
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