思っているほどハードルは低くない!開業準備前に知っておきたいマンションサロンの問題点
ネイルサロンやエステサロンでは、マンションで開業する人が多いです。マンションサロンのメリットは、何といっても物件取得費と内装費を抑えられることにあります。
マンションサロンの場合は、敷金が1~2ヶ月のところがほとんど。テナントの場合が6ヶ月~10ヶ月かかるのと比べるとかなり費用を抑えられます。
さらにインテリアを揃えれば、内装工事をしなくてもサロンができあがります。
最近では美容室の開業でも、マンションサロンを検討している人もいます。
マンションを利用した開業については、いくつか注意すべき点があり、ハードルも高いのが事実です。そこをしっかり押さえないと、開業できないどころか、開業してもうまく行きません。
マンション物件は探しにくい
マンションはそもそも住宅用の建造物です。テナントとは違って、商業用として貸し出されることはほとんどありません。
したがって、マンションサロンを探す場合にはネットで検索しても意味はなく、不動産へ直接相談しなければなりません。
テナントよりもマンション物件のほうが見つからないのです。マンションサロンのオーナーは、不特定多数の人がマンションに出入りすることを嫌います。商業利用NGの理由の大半はこれです。
それゆえ、マンションサロンでビジネスを行う場合には、不動産会社やマンションオーナーに事業計画を伝える必要があります。
特に「毎日何人のお客さまが来店する予定なのか」「その人数で家賃を支払えるだけでの事業が成り立つのか」などを示すことが大切です。
「サロンをやりたいから貸してくれ」ではなく、ビジネスライクに取引をしなければなりません。
とはいえ、商業利用OKのマンションは簡単には見つかりません。費用、エリア、立地などの妥協点は前もって優先順位をつけておきましょう。
家賃、駅からの距離、周囲の環境、建物の古さ、階層など、マンションを決定するための要素を洗い出しましょう。
マンションサロンは集客が難しい
すでに固定客を抱えていて、ある程度の売上が見込める場合を除いて、新規集客は必要です。しかし、マンションサロンへの送客は思っているよりも難しいと言えます。
まず、テナントではないため、外からサロンがあることがわかりません。たまに外壁に看板をつけたり、マンションの入口のところにボードを置いてあったりしますが、共有スペースに販促物を置くのは許可が必要です。
次に、お客さまの心理的なハードルです。マンションに入り、番号を押してロックを解除してもらい、エレベーターに乗り、さらにドアチャイムを鳴らします。サロンへ入るまでの工程が長いため、テナントと比べて足が遠のきます。
マンションの場所によっては、立ち寄りにくいと感じることもあります。例えば、歓楽街を通らなければならない、人通りが全然ない場所を通らなければならない、といった立地にも影響されます。
サロンを見つけてもらうにはネット広告を利用します。しかし、好んでマンションサロンを探している人でなければ「マンション」がウリになることはあまり考えられません。
どうしても受けたいと思わせるサービスとその価値を伝えられるかが肝になります。
マンションには「生活感」がでる
またマンションはどうしても「生活感」がでます。
玄関を開けて入るときに、下駄箱、キッチン、ユニットバスなどが見えます。こうした生活感を完全に消すことはできません。
コンセプトとして、完全プライベート空間を謳ったとしても非日常感は得られません。
どちらかと言えば「友だちの家に遊びに行った間隔でサービスが受けられる」という打ち出しになると思います。
マンション自体にも生活感は出ます。例えば、マンションの入口にゴミ捨て場が設置されている建物があります。お客さまがゴミの集積を目の当たりにする可能性があります。
また隣人にも注意を払わなければなりません。壁が薄いと隣から声が漏れることもあります。その人がベランダで会話をしていたらますます聞こえます。
静かな空間を演出したいのに、隣から笑い声や歌声が聞こえてきたら、それこそ商売になりません。
マンションならでは生活感を受け入れること、非日常を求めるお客さまを諦めることを覚悟しましょう。
マンションで美容室はできるのか
美容室を作る場合には「シャンプー台」の設置が不可欠です。それゆえ、マンションの中を改装する必要があります。
しかし、マンション自体を工事するにはかなりの困難を伴います。
第一に、オーナーが許可しない可能性があります。そもそもマンションは住居用で貸しています。それをビジネスのために改装することに抵抗があります。
仮に許可が出たとしても、サロンを立ち退くときに、完全な形で原状回復ができなければいけません。
第二に、内装費がかなりかかります。問題は水回りです。
ユニットバスやキッチンにある水回りを、部屋の真ん中に伸ばしシャンプーを設置するためには床を一度解体する必要がでてきます。内装費に加えて、解体費、運搬費が余計にかかります。
また、工事ができるとしても住んでいる隣人などにも影響があります。さらに、高層階の場合には工事による水漏れのリスクもあります。工事自体も難航することが予想されます。
マンションで美容室を開業する人は、その部屋を保有している場合が多いです。自分が、あるいは親族が購入してその部屋のオーナーなっています。
マンションを借りる場合には、工事はかなりハードルが高いと言わざるを得ません。
マンションサロンの難しさを理解したうえで準備を
マンションサロンなら、安くてすぐに開業できるという安易な発想で選ぶべきではありません。
運営していくことを考えるとかなり大変なのです。
上記の点を考慮して、それでもマンションサロンでやるべき理由があれば、一つ一つ課題をクリアしながら準備を行ってください。
マンションサロンで経費がかからないから融資はいらないと言う人も多いですが、集客が思ったより伸びなかったとき、別の施策を打てるよう運転資金を十分に持っておく必要があります。
計画書を作って、資金の戦略も練ったうえで開業しましょう。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。