八方美人はうまくいかない!ターゲットを絞り込み訴求したいウリを決めることの大切さ
事業計画書ではサロンコンセプトとターゲットを明確にします。つまり「誰にどんな価値を提供するか」を考えます。
コンセプトが決まらない理由は「誰に」を設定していないからでもあります。
ターゲットを絞れば、自ずと提供すべき価値=サロンのウリが見えてきます。
ビューティガレージでは「細かくターゲットを絞り込みましょう」とアドバイスします。
単に性別や年齢だけでなく、趣味嗜好、家族構成、ライフスタイルや悩み、価値観なども想像しながら、あるいは自分のお客さまにヒアリングしながら、来てほしいお客さまのイメージを作ります。
しかし一方で、多くのサロンオーナーは「あらゆる年代の人に来てもらえる」サロンを目指そうとします。
幅広い客層に対応できるサービスを提供したい気持ちはわかります。
しかし、これは失敗につながる考え方です。開業の基本は、ターゲットを細かく設定して、そのターゲットに訴求できるウリで勝負をすることです。
サロンの差別化になる
美容室は生活に不可欠な事業であることから、老若男女が通うのは当然と言えます。したがってどんなサロンでも結果的にそうなります。
しかし、最初から「あらゆる人に支持される美容室」を作ろうとすると特徴のない美容室になります。
特徴のない美容室は訴求ポイントが見つけられません。なぜなら誰でもウェルカムなサロンは、顧客が選択すべき基準がないからです。
お客さまにとって自分にピッタリのサロンにはならないのです。
そうなると価格でしか人を呼べなくなります。
一方で、ターゲットを絞り込むことで、訴求すべきメニューや価値がはっきりします。
そして、その地域での差別化が図られます。
例えば「ショートカット」が得意なサロンという打ち出しにすると、ターゲットはショートヘアにしたい人、あるいは「手入れを簡単にしたい忙しい人」など限定されていきます。
これによって、まずはショートにしたい人、忙しい人が集まります。訴求ポイントを作る=来てほしい人を絞るということです。
逆にこの美容室は、「癒やしを求めたい」「髪質が気になる」「パーマをかけたい」というお客さまには選ばれません。
同じようにショートにしたい動機を持つ人だけが、このサロンを選ぶようになります。
ショートカットのスタイルを増やし、ショートカットのお客さまの口コミを増やすことで、名実ともに「この地域でショートカットといえば、ココ」と言われるようになります。
お客さまとのミスマッチを防ぐ
せっかくフルフラットのシャンプー台を設置して、炭酸水まで導入してスパメニューを充実させたのに、多くのお客さまがカットや白髪染めを利用するとしたら投資した意味がありません。
これは「スパを利用したいお客さまとは誰か」「どんな動機でスパを利用するのか」を考えて訴求しなかった場合に起こりえます。
「スパメニューがおすすめです」だけでは足りないのです。
サロンが提供したい価値と、お客さまが受けたい価値を一致させることが重要です。ここがズレるとトラブルのもとにもなります。
例えば、骨格診断を使ってヘアスタイルを提案したいサロンに、クイックカットを求めているお客さまが予約したらクレームになります。
美容室での時間に価値をおかず、手早く髪をセットして欲しい人にとって、骨格診断によるカウンセリングは長過ぎます。
クレームの多くは、サロンに非があるのではなく、こうしたミスマッチによって起こります。
こうした問題を解決するためには、サロン側が「こういう人に来てほしい」と発信することです。つまりターゲットを絞るのです。
このカットの例では、本当に来てほしいのは「小顔になりたい人」「自分に似合う髪型を探している人」になります。
「骨格診断がおすすめです」ではなく、「骨格診断で理想の小顔になれる」と訴求しなければなりません。
オペレーションを効率化する
同じようなお客さまが、似たような動機で、同じサービスを受けることが繰り返されると、オペレーションは楽になります。
「ショートカット」をウリにするサロンには、ショートカットでの予約が増えます。
毎日何件ものショートカットを施術することで技術はますます磨かれます。そのため、作業労力は徐々に減っていきます。
オシャレなカラーを体験したい20代女性(大学生やオシャレを仕事にできる職業の人)をメインのターゲットにして、デザインカラーを推していくサロンはどうでしょうか。
デザインカラーでの予約が増えることで、カラー待ち時間をうまく利用して、追加でお客さまを取れます。
また、ターゲットを絞ぼっているため、待ち時間に読む雑誌なども厳選することができます。
専門サロン化とまでは言いませんが、サロンの売上のパターンが作られることは、働くスタッフの作業や仕入れの効率化にも影響を及ぼすのです。
オープン時はターゲットを絞って、尖ったウリで勝負しよう
もちろん、あらゆる層、年代のお客さまに愛されるサロンを作るという目標を立てることは悪いことではありません。
そして、多くの場合、結果的に美容室にはあらゆる年代のお客さまが来店します。
どんなに客層を絞ったしても、ターゲットの家族、友達など紹介が広がっていけば、おのずと老若男女を相手にするサロンになります。
しかし、オープン時からそれを目指しては行けません。
まずはサロンのブランディングを確立するために、その地域での差別化戦略をとります。
差別化を進めていくことで、本当に来てほしい人が集まり、その結果、顧客満足度もあがります。口コミも増えます。
サロンの勝ちパターンが作られると、オペレーションも楽になり、新しい価値(サービス)にも力をいれていける余裕ができます。
そうなったとき初めて、子供から年配のお客さままで、あらゆる年代に認知されるサロンになるのだと思います。
開業時には、まずは尖らせる。ターゲットを絞って、そのターゲットに求められる価値を訴求していくこと。それが大切です。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。