サロンの利益を左右するのはプライシング!?「価格」から事業計画書を作る方法
サロンビジネスは作ったハコの大きさや席数で、ある程度売上の上限が決まってしまいます。サービスを提供するのがスタイリストであるため、ずっと働き続けることはできません。
したがって、サロンの利益や売上を左右するのは単価です。プライシングを間違えてしまえば「忙しいのに儲からない」といった状況に陥ります。
事業計画書では、コンセプトやターゲットを設定してそれに合わせて価格を決める方法があります。
一方で、最初の段階で収支シミュレーションを行い、価格を決めてしまうという方法もあります。先にプライシングを行うことでターゲットやコンセプトが絞ることもできます。
損益分岐点を計算する
まずは絶対に必要な利益を確保するために、損益分岐点を計算します。利益が0ではなく、必要な利益を達成するための損益分岐点です。
(目標利益額+固定費)/(1-変動費率)=損益分岐点です。詳しく知りたい人は『経費計算からスタート! 損益分岐点を使った売上目標の立て方』を参照にしてください。
例えば、利益目標が50万円必要だったとして、想定できる経費を調べて先ほどの式に入れてみたところ、損益分岐点が220万円と算出できたとします。
つまり、50万円の営業利益を出すためには220万円の売上が欲しいということになります。
プライシングを行う
次に、メニュー価格を決めていきます。メニュー価格を設定するにはいくつか方法がありますので、『まずはターゲット設定! “来てほしいお客様”から考える価格戦略の立て方』を参照にしてください。
カット ¥6,000
カラー ¥6,500
パーマ ¥6,500
トリートメント ¥3,500
以上のように決定したら、今度は各メニューの割合を入れていきます。これまでの実績をもとにして決めていきます。
カット ¥6,000×90% = ¥5,400
カラー ¥6,500×50% = ¥3,250
パーマ ¥6,500×10% = ¥650
トリートメント ¥3,500×20% =¥700
メニュー比率を合計すると、¥10,000になります。つまり単価が¥10,000です。
もし「もっと単価を上げたい」という場合には、メニュー価格を上げる(カラーを¥7,000にする)か、比率を変えます(例えばカラー比率を60%にする)。
そのように調整していくのです。
必要な客数を割り出す
上記の例で計算をしてみます。
目標の売上220万円で、単価が10,000円だとすると、必要な客数は、220人になります。
もし30日営業するとしたら、1日7.3人です。自分を含めてスタイリスト2人で施術を行うとすると、一人一日3.65人の施術を行うことになります。
自分の見込み客が何人呼べるか、新規客を何人集めなければならないかをここから逆算します。
当然、単価を下げると必要な客数が増えます。例えば、客単価が4,800円に設定したら、客数は458人必要です。
売上目標を達成するのに、単価を上げるのか、客数を増やすのか、どちらを優先するかを決めなければなりません。
キャパシティを確認する
ここで注意しなければならないのは、客数には上限があるということです。
席数×回転数×日数=最大客数
回転数はメニューによって異なるため厳密にはずれますが、ここではあえて統一します。
4席サロンの場合、4席×5回転×30日=600人です。220人の集客が必要な場合、どこまで席を埋められるでしょうか。
220/600 = 36%の席が埋まれば売上を達成することができます。
逆に、4,800円になるようなプライシングを行えば458人の集客が必要ですので、
458/600 = 76%の席を埋めなければ目標を達成できません。キャパシティが埋まっていくと、予約が取りにくい状態になります。
単価を低くして客数を増やすのであれば、席数を増やしてオープンするという選択肢もでてきます。
ターゲットを設定する
シミュレーションを行いながら価格を設定したら、ターゲットを絞り込みます。
・この価格で通ってくれる客層は誰か?
・そうした客層はどんなニーズがあるか?
・このエリアにどの程度ボリュームがあるのか?
・同価格帯のサロンはどのくらいあるのか?
こうしたことを調査したり、自分の指名客に聞いたりしてターゲットを定め、訴求方法を考えていきます。それが結果的にサロンのコンセプトにもつながっていきます。
まとめ
美容室開業の究極の目的は、利益を出すことです。したがって、利益目標、売上目標の順番で決めていきます。
美容室はハコの大きさや席数によってキャパシティが決まってきます。したがって同じ規模のサロンでも売上や利益に差が出るのはプライシングなのです。
低価格サロンが難しいと言っているわけではありません。しかし、単価がいくらなら何人の客数が必要になるか、席をどのくらい埋めなければいけないかを知っておく必要はあります。
オープン後価格を大きく変えたりすることは難しいでしょう。できるだけ先に「自分のサロンはこの価格帯で戦う」と決めて、戦略を練っていきましょう。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。