美容室開業で失敗しないための必須ポイント:資金繰りと固定費削減の重要性
『失敗しない美容室開業BOOK』という本を出しています。この本をきっかけに開業相談に来られる方もいます。この本のタイトルのせいかもしれませんが「うまくいかなかったサロンはありますか?」「どうやったらうまくいきますか?」という質問を受けます。
失敗するのが怖いと感じていて、なかなか開業に踏み出せない人も多くいらっしゃるようです。しかしながら、うまくいくかいかないかは実際にやってみないとわかりません。オープン後、事業計画書通りにいくこともほとんどありません。
私からのアドバイスとしては、「致命的な失敗を避けることを意識して開業プランを立てましょう」です。
よくある失敗例
『失敗しない美容室開業BOOK』の「失敗」はサロンが経営できなくなるほどのレベルの話ですが、小さな失敗はどの開業者も沢山します。「事業計画書通りにいかない=失敗」と考えればどのサロンも失敗しています。
あるサロンでは、オープン時の売上が事業計画書で立てた目標の半分でした。前勤務先のサロンからの指名客が、思ったより戻ってこなかったようです。名刺交換なども許されていなかったため、実際に指名のお客様には口頭だけの案内でした。しかし、計画時には過剰に指名客の来店を期待してしまったのです。
別のサロンでは、売上は伸びているもののお客さまの質の問題に直面しました。40代の落ち着いた大人女性に対して髪に優しいカラー・トリートメントを訴求したのにかかわらず、20代のデザインカラーが伸びました。お客さまの比率が20代が増えたため、店内の雰囲気も変わっています。
サロンのブランディングという意味ではこれも失敗です。
売上やターゲットといった問題以外にも様々な失敗を経験します。例えばオペレーションの問題。スパを訴求した結果、2台のシャンプーのうち1台がスパに使われてしまい、シャンプーの稼働効率が悪くなり、お客さまを待たせてしまうことになりました。また、スタッフとの関係悪化なども起こります。処遇待遇をめぐって対立し、オープン後すぐに一人辞めてしまい、予約客を回せなくなったサロンもあります。
こうした問題すべてを計画段階で予測することは不可能です。したがって、失敗は起こるという前提で開業を考えるべきなのです。
致命的な失敗をしないかぎり何度も修正、改善ができます。
致命的なダメージを避ける2つのポイント
失敗を過度に恐れるのは「失敗したらサロンが潰れてしまう」という不安からです。したがって、失敗してもすぐに潰れないように準備をしておくことも大切です。事業計画書の作成の段階においては「潰れない」を意識します。
具体的には2つです。一つは資金繰り管理。もう一つは固定費の抑制です。
資金繰り管理
サロンが潰れるのは、サロンを運営していくための経費が払えなくなったときです。いくら赤字でもお金があれば大丈夫ということになります。開業時には、お金を使うことだけでなく、残しておくことも重要です。
コラムでは何度も書いていますが、運転資金は固定費の3ヶ月~6ヶ月分を現金として用意すべきです。想定通り売上が伸びなかった場合でも、赤字になっても、キャッシュがあればサロンは営業できます。
事業の失敗は盛り返すことができますが、資金繰りの失敗は取り返しがつきません。オープン後も、資金繰り表を活用してお金の出入れには十分に注意していくことが大切です。毎月の営業活動で獲得した利益をちゃんと残して、キャッシュを増やしていければなお盤石です。
オープン初期は、無駄遣いをせず、サロンのお金を貯めることを意識しましょう。
固定費負担の圧縮
また、はじめてお店をつくる場合には固定費をできるだけ抑えることも大切です。利益は売上-経費で計算できますから、売上が少なくても、経費を抑えることができれば利益を残せます。
ポイントは固定費。小さな美容室に関しては家賃、スタッフを集めて行う美容室は家賃と人件費をいかに抑えるかを真剣に考えるべきです。また、システム利用料やポータルサイトなど毎月支払いの発生するものは、必要に応じてプラン変更等で固定費を削減できるように、契約内容なども確認しましょう。
計画書での売上の見込みは外れることが多いので、特に経費に関しては慎重に検討しましょう。
※参考記事
『利益を残すには経費はいくらまで?比率から考える収支計画の作り方【前編】』
『利益を残すには経費はいくらまで?比率から考える収支計画の作り方【後編】』
まとめ
失敗が怖くて開業に躊躇しているならば、まずは致命的な失敗を避けた計画を立てましょう。具体的には、十分な現金を持っておくこと、そして固定費負担を減らすことです。
そう簡単にサロンが傾かない基盤を作ったうえで、様々なサロンの課題に取り組んでいきましょう。どんなに情報を集めても、完璧な計画を立てても、うまくいくかいかないかはやってみないとわかりません。
実際にオープンしてみて、うまくいかなかったところを修正、改善していくのがサロン経営の醍醐味でもあります。失敗をすることを前提として、抑えるべきポイントを押さえて、事業計画を立ててみてください。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。