美容室の開業にもQDCの意識が大切!費用を抑えることで生じるデメリットに注意しよう!
美容室の開業にはお金がかかります。小さいサロンを作るにしても1000万円かかることも珍しくありません。
したがって、自己資金を増やしたり、銀行から融資を受けたりして資金調達を行います。お金を増やす努力をする一方で、できるだけ開業費用を抑える工夫もしなければなりません。
同時に、コストを抑えることで時間や労力を犠牲にすることも覚悟しなければなりません。
製造業のビジネスではQDCという概念があります。事業者はQ(品質)・D(納期)・C(コスト)を意識してモノを作ります。
QDCの意識はどんなビジネスでも大切です。サービス業であっても、どんなプロジェクトであってもコスト、品質、納期はセットで考えなければなりません。
美容室の開業に適用してみましょう。費用を抑えることは重要ですが、それによって開業時期が延びてしまったり、サロンのクオリティが下がってしまったりする可能性もあります。
今回は、コストを抑えたことで失敗した事例をもとに、QDCをセットで考える重要性について解説します。
目次
内装費を抑えることで時間がかかってしまった。
開業サポートをしていると、内装費を抑えるためにDIYを行う人もいらっしゃいます。
電気やガスといった設備の部分や、シャンプー台の取り付けなどは内装会社に任せて、塗装やインテリアなどを自分で行います。
自分で材料を調達して壁を塗ったり、店販ディスプレイを作ったりします。中にはDIYが趣味で得意な人はいらっしゃいますが、そういう人は本当に上手に仕上げます。
一方で、自分で作る経験がない人は、時間がかかります。レジカウンターやクロークなどを既製品にすると、自分で組み立てなければなりません。
店販用の大型ディスプレイ棚を自分で作った人は、内装工事の引き渡し後、約10日かけて棚を完成させました。
また、保健所の検査のためタオルを置くためのキャビネットの代わりに、木製ワゴンを買って組み立てました。
その結果、保健所の認可が降りるのが遅れてしまいオープンが長引きました。内装工事のために1ヶ月家賃が発生していましたが、DIYを行ったことで入居から2ヶ月目に突入してしまいました。
(C)コストを重視したため、納期(D)が遅れてしまったという事例です。
また、格安で請け負ってくれる内装会社と契約したが、中々工事が進まないといったトラブルも聞きます。
コストを削減することで完成時期が伸びるという可能性もしっかり考慮して、スケジュールを組んでいくことも大切です。
販促費用を抑えることで集客がうまくいかなかった。
あるサロンオーナーは、指名客がある程度見込めるためホットペッパーに頼らず集客を行っていくことを決めました。
また、月々の販促費をゼロにするためにLINEやインスタグラムを中心に集客していこうとしました。
指名客はオーナーのLINEを通して予約をするものの、有料の予約システムと連動していないため、一人ひとりのお客さまとやり取りしながら予約を埋めていくことになりました。
予約ボタンを押すことで勝手に予約が取れるシステムではないため、予約が完了したかどうかを返信する必要があります。
LINEだけではスムーズに行えないため、指名客からはホットペッパーで予約したいというリクエストがきました。
結局、ホットペッパーではなく別の会社の予約システムを月々2万円で導入しました。
販促コストを抑えたことにより、予約の質が下がってしまったということです。
また別のサロンオーナーは、指名客を中心に紹介を促すことで新規集客を増やそうと考えました。しかし、指名客が知り合いに「このサロンいいよ」と言っても中々紹介が増えませんでした。
大きな原因は、紹介された人がサロンにアクセスする手段がないことでした。紹介カードとホームページ(予約システム)を作って動線を整えました。
すると、指名客に紹介カードを配ったことで紹介客の予約が入るようになりました。
昨今、ホットペッパーの費用が高すぎると感じて、販促コストを抑えた集客を考えるサロンが増えています。
その際には、コストだけでなく、品質(予約のしやすさ)や納期(予約完了までの時間)なども意識して、集客戦略を組み立てなおす必要があります。
経理、労務を自分でやったために忙しくなった。
オープン時からスタッフを2人雇用しましたが、税理士や社労士の顧問料を抑えるため、自分でソフトを買って経理・労務を行いました。
最初のうちは、マメに記録していましたが、サロン業務が忙しくなるにつれて日々の記帳ができなくなっていきました。大事だとはわかっていても、サロン業務に追われてなかなか時間を作れなくなっていきました。
そのうち、経理記帳を放置するようになってしまいました。そして確定申告が近づいたころ、焦って領収書を探し始める事態になりました。
結局、税理士に相談することで経理業務を手放し、サロン業務に集中することに決めました。
うまくやれる人もいますが、サロンオーナーとして全ての業務を自分で行うには忙しすぎます。
コストをかけてでも専門家に任せることで、サロン業務の質を上げるという方法も、QDCの概念に適っていると言えます。
品質や納期を保つために、あえてコストをかけるという経営判断も必要です。
QDCの概念を常に意識して開業準備をしましょう。
安くなること=よいことという発想は危険です。
今回の事例以外にも、
ホームページを友人に頼んだが、友人が忙しくてなかなか完成しない。
内装会社に安く施工してもらったが、オープン後まもなく水漏れが発生した。
自分で労務管理を行ったら、契約を巡ってスタッフとトラブルになった。
などコスト削減に関する様々な相談を受けます。
コストを下げることは悪いことではありませんが、それによって生じる余計な時間・労力、品質の低下なども考慮しなければなりません。
QDCすべてに目を向けましょう。
納期に間に合わなければ、サロンの開業時期が遅れます。
工事のクオリティが下がれば、すぐ悪くなったり壊れたりする可能性も高まります。
コストが、納期、クオリティにも影響することを認識しておくべきです。
コストを下げることが悪いのではなく、下げることで被るデメリットも理解して進めなければならないのです。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。