「デザイン」から「工事」までスムーズに!内装工事には一括発注がおすすめの理由
「好きなデザイナーがいて、その人にサロンのデザインを依頼した。でも、工事業者は自分で探してくださいと言われた」
先日こうした相談をいただきました。
サロンの内装工事では「デザイン」と「工事」という二つのプロセスがあります。したがって、デザインと工事を別の事業者に依頼することもできます。
しかし、デザイン業者と工事業者を別々に依頼してサロンを作ろうという試みは非常に難易度が高く、トラブルになりやすいので注意が必要です。
デザイン・設計と工事は非常に密接に関係しています。
特に初めて店舗を作るオーナーに対しては「デザイン」と「工事」を一括で依頼できる業者を勧めています。
一括発注と分離発注
一括発注とは、一つの会社に内装デザインと工事を一括して依頼することです。実際に、デザインも工事も事業として持っている会社もあります。
一般的なのは、デザイン・設計会社の案件を請け負っている業者が施工するケースです。
デザイン会社が作成したデザインと設計図を、下請けの専門業者に依頼して工事を行います。
一方、分離発注とは店舗デザインと工事を別の業者に依頼する方法です。開業者はそれぞれの会社にコンタクトを取って話を進めていきます。
一括発注のメリット
一括発注の場合、デザイン・設計と工事を一つの会社がすべて請け負うため、次のようなメリットがあります。
調整しやすい
一括発注の場合、デザイン・設計から工事、そして引き渡しまでサロンづくり全体をしっかり管理してもらえます。
デザイン・設計の完成と同時に、すみやかに工事に移行できるように綿密にスケジュールを組むため、スムーズに内装ができあがります。
一方、分離発注の場合、スケジュール調整を開業者自身が行う必要があります。
「デザインはできたけど、工事の日程が決まらない」
「工事契約を結んだのに、肝心なデザイン・設計図があがってこなくて進まない」
こうしたトラブルが起こる可能性があります。
開業者が、双方のスケジュールを調整して、決めた日程を守らせるために管理する。そうした負担が生じます。
一括発注は会社がすべて管理してくれるため、オーナーはデザインを決める、日程を決める、など自分の意思決定のために時間を使うことができるのです。
責任が明確
一括発注では、元請け会社が「デザイン」と「工事」両方に責任を持ちます。
工事の途中でトラブルがあっても、迅速に解決してくれます。サロンオープン後に瑕疵があったとしても会社が対応にあたります。
デザインに問題があっても、工事に問題があっても、会社が責任を持つというスタンスだからです。
これに対して、分離発注は責任の所在が曖昧になりがちです。開業者もトラブルが起こった時、どっちに連絡していいか迷ってしまいます。
デザイン会社は「デザイン・設計通りに作っていない」という理由で、施工業者に責任を押し付ける可能性もあります。
施工業者は「そもそもデザイン・設計に不備があったのだ」と主張するかもしてません。
こうした業者間での対立が生じたとき、板挟みになるのはオーナーです。問題が生じたときにスムーズに解決できなくなってしまいます。
「内装工事に誰が責任を持つのか。何かトラブルが生じたとき、誰が対応してくれるのか」
一括発注であれば、依頼しているその一社に責任は集約される点で、少なくとも明確です。
信頼関係が築きやすい
開業は一つのプロジェクトです。ビジネスパートナーとの信頼関係は非常に大切です。
一括発注の場合、担当者がデザインから工事完了まで一緒にサロンを作っていきます。何度も打ち合わせを行い、デザイン・設計を決めていきます。
工事が始まると、工事業者の監督とコミュニケーションを図り、進捗やフォローを行います。
途中で問題が生じたら対応にあたったり、デザイン内容の変更の要望があったら修正したりして、まさにオーナーと一緒にサロンを作り上げていくのです。
このように一括発注では、担当者と何度も話し合う機会が得られるため、相互の理解は深まり、信頼関係を築きやすいのです。
では分離発注の場合はどうでしょうか。
デザインと工事を別々の会社に依頼すると、コミュニケーションの総量は圧倒的に少なくなります。
デザイナーとはデザインが完成した段階で契約終了になります。工事のプロセスでは工事業者と新たに関係を作らなければなりません。
工事の途中で要望を伝えたいとしても、また別の相手に一から説明する必要がでてきます。コミュニケーションコストが高くなるだけでなく、相手の理解をするのに時間もかかってしまいます。
分離発注になるケースとは
以上見てきたように、内装工事を依頼する場合には一括発注がおすすめです。一方で、どうしても分離発注にこだわる人もいらっしゃいます。
「有名なデザイナーがデザインした店舗として、サロンの価値を高めたい」という意図がある場合には、やむを得ず分離発注を選ぶかもしれません。
あるいは「一括発注の会社が提示した施工スケジュールでは間に合わない」「付き合いで知り合いの工事業者を使わなければならなくなった」など、分離発注にならざるを得ない環境の人もいます。
分離発注で内装工事をすすめる場合には、オーナーの負担が大きくなるリスクを理解しておくべきです。
先ほども述べましたが、オーナー自らがデザイン会社と工事会社の両方と交渉しながらスケジュール調整や管理を行うため、マネジメント力やコミュニケーション力が不可欠です。
さらに、内装業者に対して的確に指示したり、自分の要望を伝えたりするためには、内装についての知識も必要です。
また、万が一トラブルが起こっても、決してイライラしたり、あわてたりせずに、対処できるだけの冷静な決断力も求められます。
こうした能力や経験を備えている人は稀です。まして、初めてサロンを作るのですから、苦労するのは想像に難くありません。
内装工事の分離発注はオーナーの積極的な関与が必要な方法だとも言えます。
プロジェクトを伴走してくれる一括発注がおすすめ
開業を経験して、サロンを作るための流れを学ぶと、分離発注もできるようになると思います。
しかし、開業者はまず一括発注での内装工事をお勧めしています。
・開業までのスケジュール管理が楽になる。
・責任の所在が明確で、トラブルに対処してくれる。
・担当者がサロン完成まで一緒に伴走してくれる。
こうしたメリットを享受できます。一括発注ではオーナーの仕事は判断するだけです。
つまり「どういうデザインにするかを決める」「いつまでにオープンするかを決める」「内装費の予算を決める」ということです。
決めたことは、内装業者がスムーズに実行してくれます。一括発注であれば、スケジュール管理やトラブル対応を自身で行う必要はありません。
実行はプロに任せて、決めることに専念しましょう。
「決める」に集中することで、よりよいサロンづくりにつながります。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。