専門家から学ぶ税務・労務<第3回>税金と創業時の法人化について解説します!

公開日:2022/08/08  更新日:2022/08/08
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専門家

複数のスタッフを雇用して開業する場合、個人事業主でスタートするか、法人化してスタートするかで迷うオーナーがいます。

 

法人化の一つの判断として税金を挙げるオーナーがいます。

 

法人化のメリットはもちろん税金だけではないですが、サロンの規模や売上、従業員の待遇を考えたときには知っておいた方がよい知識だと思います。

 

そこで今回は貝沼氏に、事業を運営していく上で発生する税金と、法人化のポイントについてお話いただきます。

 

美容室 税理士

 

個人事業主なら所得税・法人だと法人税

個人事業主でサロンを経営していく場合には所得税を納めます。

 

個人にかかる税金である所得税は超過累進税率となっており、所得(売上から経費等を引いた残り)が増えれば増えるほど税率までもが高くなります(5%~45%)。

 

個人事業主は、このほかに住民税10%と事業税5%も発生します。

 

一方、法人の所得に課税されるのが法人税になります。法人税の税率は、住民税と事業税も合わせて約25%~35%になります。

 

したがって、所得がある一定ラインを超えると法人税率の方が低くなり、法人化を検討します。

 

その分かれ目の所得水準が約1,000万円ですので、よく「所得が1,000万円超えるような規模になってきたら法人化」と言われます。

 

ただ実際は、個人的事情(扶養の人数等、や、その他の事情)を考慮し、法人化のタイミングは、ケースバイケースです。

 

社会保険の影響

美容業においては、個人事業主の場合には社会保険への加入は義務ではありませんが、法人化すると義務になります。

 

その社会保険の影響が結構重く、雇用している従業員の人数によっては、上記の通り1,000万円ほど所得が出ていても、社保の負担まで考慮すると、個人事業主のままの方が得、という計算結果になることもあります。

 

ただ、最近は、従業員を確保するのが難しくなってきており、社保完備の方が人を集めやすいとかで、個人事業主でも敢えて社保に入られる方も増えてきました。

 

そうすると、後は、所得税率と法人税率の差で有利不利を考えることになってきます(実際は他の諸事情も考慮にいれます)。

 

他の諸事情

上記以外で実際に法人化されたお客様の、法人化を決定されたポイントは、例えば下記です。

 

・法人の方が人を募集しやすい

・共同代表でやっているので、法人の方が運営しやすい

・数年やってきたので、もう法人でやりたい(金額的な損得ではない)

・法人化するとまた2年消費税が免税になる

・借入を会社名義で行いたい

 

等々、それぞれ理由は様々です。

 

創業時は・・

いずれにしても、創業時は色々とコストもかさみ、1年目から高額な所得が発生する、というケースは稀です。

 

そうすると所得税率も低くて済みます。したがって、個人事業主からスタートされる方が圧倒的に多いのです。

 

また、個人事業主の方が止めるのが簡単です。手続きも簡単ですし、つまりコストも少額です。

 

一方、法人の場合は、一度設立するとたたむのにも手続きが必要で、コストもかかります(逆にいうと、法人でも手続きをすれば止めれるのですが)。

 

この点からも、創業時は先行きが不安な面もありますので、まずは個人事業主で、という方が多いですね。

 

具体的に法人が払う税金等

法人化した場合に発生する税金を整理してみましょう。個人事業主と比較すると、そこまで違いがありません。

 

やはり「所得税」が大きなポイントになることがわかります。

 

法人税・住民税・事業税(個人の場合と税率が異なる)

・消費税(*1)(個人の場合も同じ)

・従業員から徴収する所得税の納付(個人の場合も同じ)

社会保険料(個人の場合は加入義務ではなく、法人だと義務)

・労働保険料(個人の場合も同じ)

・償却資産税(*2)(個人の場合も同じ)

 

(*1)消費税:2年前における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、消費税の納税義務が免除されます(注:他の判定要素もあり)。

(*2)毎年1月1日時点に所有している償却資産(一定金額以上の備品や内装等)にかかる税金です。

 

法人化は、所得を考慮に入れつつ、他の要素にも目を向ける

貝沼氏に法人と個人事業主の税金について解説してもらいました。大きな違いはやはり所得にかかる税金。個人事業主の所得税と、法人の法人税の違いです。

 

あくまで所得であることに注意が必要です。売上―経費=所得ですので、経費にも注目しましょう。

 

特に創業時には様々なコストがかかります。一方で、計画通りに売上が作れるかどうかも不透明です。

 

したがって、所得の視点から言えば「最初は個人事業主からスタート」は合理的な判断だと言えます。

 

一方で、所得以外の要素をみると、法人化には別のメリットもあります。

 

共同代表で経営する場合には、法人化したほうがシンプルに運営できます。また、社会的な信用を得るという目的でも法人化が有利に働くことがあります。

 

創業時から法人化を検討されている人は、所得の面のみならず、別の要素も考慮にいれて多面的に判断したほうが良さそうです。

 

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貝沼 彩(かいぬま あや)

貝沼公認会計士事務所代表
税理士法人みなと東京会計代表社員

税理士・公認会計士として、会計監査・税務・民事再生・デューデリジェンス等に携わると共に専門学校で公認会計士講座の講師を務める。
その傍らエステティックサロン[Vaogy]を経営。

 

税理士法人みなと東京会計
TEL.03-6433-5852
https://biyo-consul.jp/

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ビューティガレージ コンシェルジュ室

日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。

15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。

事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。

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