サロン設計のプロが教える! 理想の内装を実現する物件選びのコツ
開業者にとって開業を実感する瞬間というのは、自分の美容室が完成したときです。
また、開業サポートをさせていただくと、オーナー様から「自分の考えたイメージのサロンを作っていく過程ほど楽しいものはない」という声もいただきます。
しかし、以前の記事にも書いたように、理想のサロンを作るというのは本当に大変なことです。
美容室の特徴を理解しないまま店舗設計を行うと、理想のサロンが作れないどころか、オープン後にトラブルを引き起こすことにもなりかねません。
今回は、年間300件以上のサロン内装工事を手掛ける『タフデザインプロダクト』のデザイナー・山崎に、美容室の店舗設計の特徴や、最近の店舗デザインの傾向などについて、あれこれ語ってもらいました。
目次
イメージした内装と物件の形のマッチングが大切
安斎 「SALONスターターは、これから開業をしようとしている将来のサロンオーナーに向けて発信しているメディアです。さっそくですが、開業者が物件を選ぶときのポイントはありますか?」
山﨑 「クライアントの内装イメージを作りやすい物件かどうか、ですね。タフデザインに相談に来るお客さまはすでに弊社のホームページやインスタで施工事例を見て、内装イメージを持っている方が多いですが、それに対して“どんな物件の状態がベストか”ということまではあまり気にしていないようです。
内装イメージにしたがって物件の状態を選定できれば、内装費はだいぶ抑えられます。
たとえば、お客さまが見つける物件の状態というのはだいたい、オフィス仕様の物件と、スケルトン物件にわかれます。
キレイに整った感じのデザインを好むのであれば、スケルトン物件から作るよりオフィス仕様を利用すべきです。
逆に、コンクリートむき出しでラフなデザインを好む場合、オフィス仕様の物件を選んでしまうと、天井をはがすなどの解体にお金がかかります。このケースではスケルトン物件を選ぶべきです。
それだけでもかなり費用は変わってきます」
安斎 「ただ、素人が自分のイメージ通りにできそうな状態の物件を見つけるのは困難だと思います」
山﨑 「その通りです。そのため、できれば物件を選んでからではなく、物件を選ぶ前に私たちのもとへ足を運んでほしいと思います」
安斎 「開業無料相談でも、物件が決まっているので急いで内装業者を探している、という要望を受けることがあります。それでは遅いということですね」
専門的知識と経験がないと設備はわからない
安斎 「私もデザイナーと一緒に現地調査へ行くことがありますが、電気・ガス・水道の設備が美容室に適している物件を見つけるのも大変なのかなと感じることがあります。ガスがない物件にはよく出くわします」
山﨑 「設備が不十分であっても、絶対に美容室を作れない物件はほぼありません。ガスがなければ電気を使えばよいのです。ただ、ガスを電気で代用する場合、電気容量の増設が必要になり余分なコストがかかってきます。
ガス工事会社や電気工事会社、水道工事会社に現場をチェックさせれば、それぞれがリスクのない設備提案となりコストが膨れ上がります。コスト感も踏まえてどのような給湯設備を用意すべきかは専門的な知識と経験のもと総合的に判断しなければいけません」
安斎 「電気工事会社やガス工事会社では、“適正な設備投資かどうか”というのはなかなか判断できるものではありませんよね」
山﨑 「タフデザインでなくてもよいので、とにかく美容室を、なるべく多く作っている内装業者に依頼すべきです。設備に関しては、不動産屋も大家さんもわからない場合が多いので、どのような給湯設備を用意しコストがどれくらいかかるかをつかむ前には契約すべきではありません」
日常に溶け込んだデザインが増えている
安斎 「少し話題を変えて、デザインの話にいきたいと思います。タフデザインでは年間で300件近くの内装を手掛けていますが、最近はやっているデザインというのはありますか?」
山﨑 「最近は、非日常感とか、ワッと驚くような尖ったデザインが少なくなってきた気がします。逆に、日常的で気軽に入れる感じのデザインが増えてきました。
だからと言って、全部同じデザインにはなりません。もちろん、オーナーのセンスや個性、トレンドはデザインにちゃんと反映されています」
安斎 「ナチュラル系とか癒し系でしょうか」
山﨑 「ナチュラル系とか癒し系とかとは少し違いますが、素材の値段が高いというこだわりよりも、感じがよくて気の利いたデザインといったほうがよいでしょうか。とにかく、エンドユーザーの日常に違和感なく入り込むようなニュートラルなデザインというか。
そういうデザインが増えた理由は、二つあるかなと思います。ひとつは、男性が美容室を利用するのが当たり前になったということ。
もうひとつは、家族で同じ美容室に通うケースが増えたこと。誰が通っても違和感のないデザインが求められているのでしょう」
美容室は多様化している
安斎 「最近は、自宅で美容室を開業したいという相談も増えているのですが、タフデザインでもそういう依頼は多くなりましたか?」
山﨑 「以前から、タフデザインでもサロン付住宅を作りませんかという訴求をしています。住宅の設計もやっているので。
これまで、住宅兼サロンの場合、住宅はハウスメーカーが作って、その中の美容室の部分をタフデザインで請け負っていましたが、いまは両方行います。
背景としては、『サロン同様に住宅にもこだわりたい』『外装から内観までちゃんとしたサロンにしたい』というニーズが増えていることがあげられます」
安斎 「タフデザインの施工事例を見てみると、大きな物件での事例も増えているように感じますが、スタッフ確保が難しい今でも、大型サロンでチャレンジする方もまだまだ多いということでしょうか」
山﨑 「大きな箱のサロンについては、美容室以外にネイルやまつげエクステのブースを設けたり、ブライダルサロンに併設する形で美容室を作ったりと、複合サロンの施工もあります。現状の美容室だけでは売上に限界があるため、トータルビューティーを狙いにいくケースも多くなっている気がします」
物件を決める前にまずはプロに相談を
山﨑 「多くの開業者は、物件が決まってから相談に来られます。しかしながら、イメージしている内装と物件の状態がマッチしていないと、余計なお金がかかることも多いのです。
一番よいのは、まずは物件調査の前に内装業者に相談に行くことです。今は、施工事例やSNSの画像を持って来場される方が多くなりました。そのおかげでサロンイメージを共有しやすくなりました。だからこそ、理想のサロンを作るにはどんな物件を探したらよいかなどもアドバイスできると思います。
また、デザイナーに事前に物件に関する情報を伝えておくことで、物件調査の前に、費用がかかる物件なのか、そうでないのかなど判断できます。
本当に物件選びは素人ではわかりません。一人で判断しないで、必ずプロに任せるべきです」
サロンの店舗設計に携わる人ならではの視点からお話を聞くことができましたが、参考になる点が多かったのではないでしょうか?
ビューティガレージの開業無料相談では、タフデザインのデザイナーの紹介なども行っております。ぜひお気軽にお問い合わせください。
【山﨑拓治/タフデザインプロダクト・取締役COO】
2007年株式会社タフデザインプロダクトに入社。小規模サロンから、大手サロンまで数々の内装を手掛ける。現、同社取締役COO。
●インタビュー・文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。