美容室開業で知っておきたい労務知識~社会保険~

年金手帳

現在、美容室は全国に24万件以上あり、その数はコンビニの約5倍にあたるというのはもはや周知の事実です。さらに近年、開業者が増えている一方で、従業員の確保が課題になっています。

 

美容業は労働集約型のビジネスです。スタイリストがいなければ商売が成り立ちません。今後サロンオーナーになる人は、従業員が働きやすい環境を作ることも重要な仕事になるでしょう。

 

スタッフが働きやすい環境のひとつに、社会保険の有無が挙げられます。スタッフに安心して働いてもらうために、ぜひとも勉強しておきたいものです。

 

社会保険とは

社会保険制度は、健康保険、年金、雇用保険、労災保険をさします。この中で、雇用保険と労災保険を一般的に「労働保険」と呼び、健康保険と年金を「社会保険」と呼びます。

 

健康保険によって、病気やケガによる医療費の負担が軽減されます。自己負担が3割になるのは保険料を納めているからです。保険料の納付は国民の義務ですので、成人になったら誰もが一定額を納めます。

 

一方、年金は老後の生活を最低限保障するものです。原則65歳から受給され、20歳から60歳までに支払った年金保険料が老後の受給額に影響します。

 

社会保険未加入のデメリット

保険料が高い

国民健康保険料は地域・所得によって料率が異なりますが、平均で給与の10~12%くらいです。250,000円の給与で保険料率が10%の場合、25,000円支払わなければいけません。

 

社会保険に加入していると、事業主と従業員が折半なので、従業員の負担額は実質12,500円になります。

 

また、国民年金保険料として毎月16,340円を納めます(平成30年度の場合※1)。社会保険に入っていない従業員は、250,000円の給与から健康保険料と年金保険料の約4万円を毎月納めなければならないのです。

※1 平成30年度の国民年金保険料

 

もらえる年金が少ない

国民年金は、人によって将来もらえる金額が変わってきます。個人で年金を納める場合、国民(基礎)年金を20歳から60歳まで納めていても、65歳でもらえるお金は毎月65,000円くらいなのです(年間778,500円)※2

 

月65,000円で生活をするのはかなり苦しいと容易に想像できると思います。

 

一方、社会保険に加入していると、国民(基礎)年金にプラスして厚生年金を納めることになります。結果として、年金の受給額が個人で支払っていた人より多くもらえるのです。

 

もちろん年金保険料は高くなりますが、社会保険に加入しているため事業主とスタッフが折半で支払います。半分の負担で、多くの年金がもらえるのです。

※2 老齢基礎年金の受給額

 

個人事業主は自らの安定が優先

働く人にとって、健康保険と年金を自身で支払っていくことは非常に大変です。それだけに、社会保険完備の労働環境は重要な要素です。

 

法人になれば社会保険の加入は義務付けられていますが、個人事業主はいかがでしょうか。

 

個人事業主は、自分自身で社会保険に入ることはできません。雇用保険や労災保険も適用しません。個人事業主本人がまずは安定的な収益を得られなければ、スタッフに安心を与えることはできないのです。

 

給与を計算する際、社会保険に入った場合を想定してみましょう。売上がどのくらいあれば従業員の社会保険をカバーできそうか計算してみるとよいと思います。社会保険の金額が事業の負担になる場合には、諦めるしかありません。

 

しかし、加入しない場合でも、スタッフの生活を考慮した福利厚生などを考えるべきです。たとえば、交通費を支給してあげたり、従業員の家族のカットサービスを無料にしたり、工夫が必要です。

 

また、年金の受給額を増やすために、確定拠出年金(iDeCo)や個人年金保険などへの導入を促すのも手だと思います。

 

思い切って社会保険の加入を行う場合、まずは従業員の半数以上の同意が必要です。従業員の同意を得られれば、任意適用事業所として社会保険に加入できます。

 

しかし、すべての従業員が社会保険に加入できるわけではありません。パート・アルバイトには規定があるのでそれを確認する必要あります。

 

まとめ:従業員にとって社会保険はとても魅力的

保険料の高さ、年金受給額の少なさが理解できれば、従業員にとって社会保険完備はとっても魅力的なものだと理解できるはずです。

 

事業主はもともとリスクを取って開業しますが、スタッフは安定が大事なのです。開業後、社会保険の導入を一つの目標にして売上を目指すサロンもいます。

 

美容室は労働集約型のビジネスであることを忘れてはいけません。お客さまだけでなく、スタイリスト・アシスタントのことも考えたサロン運営が求められるのです。

 

売上を伸ばし、成長することで社会保険を導入でき、またスタッフが頑張って売上を伸ばす。個人事業主には、こんな好循環を目指してほしいと思います。

 

●文/コンシェルジュ室:安斎

 

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