トラブル発生は当たり前? 事業計画書の資金繰りで困らないための対処法
開業前において作ることが必須の事業計画書。融資を受ける際も提出が必要で、資金面で困らないためにも重要なものです。
ただし、事業計画書を作っても計画通りにいくとは限りません。
日頃から「事業計画書は大事だ」と言っておきながら、計画通りになんかいかないとは本末転倒に聞こえますが、事業計画書を作成して借入れがうまくいったとしても、開業の準備段階でさまざまな想定外のことが起きてくるものです。
融資が決まったのに、「資金を使いすぎて現金が足りなくなる」といった状況に追い込まれるサロンもあります。
今回は、計画通りに進まなくなった開業準備を立て直す方法をお伝えします。
目次
資金計画が崩れる理由
まずは、事業計画書で立てた予算の通りに資金が使われなくなる理由を見ていきましょう。たいてい、以下の3つのパターンに分けられます。
内装費が増える
内装見積もりは、あくまで工事に入る前の想定です。実際に工事が始まってから、トラブルが生じて費用が変わってしまうことがあります。
たとえばあるサロンでは、工事で床を壊したら水道管がボロボロで穴が開いていたのが発覚しました。この場合、水道管を取り換える費用が増えてしまいます。
もちろん、見積もりの段階で不確定な部分を加味して金額を設定する場合もありますが、すべてをカバーするのは難しいでしょう。
購入する商品が事前に決まっていない
実際にショールームなどを見に行って、予定にないものを購入することがあります。
当初は価格の安いものを選ぶ予定だったのに、自分が働いていたサロンで使っていたものの方が使い勝手が良いので、それを購入するということもあります。
また、購入しなければならないモノが計画段階で抜けていたということも起こりえます。
計画段階で細かく購入するモノが決まっている人はほとんどいませんので、ここでも予算からずれる可能性が出てきます。
運転資金が足りない
開業準備を進めていくと、一緒に働くスタッフが増えるということも起こります。スタッフが増えると人件費を考えなければなりません。
また、スタッフの人数が増えたぶん集客を増やすとなると、広告費を上げる必要がでてきます。
そうすると固定費が増えるので、運転資金を多くしておかなければなりません。
事業計画書を再確認する必要性
大事なのは、融資が決定した後に事業計画書をもう一度見直すことです。事業計画書を融資のためのものと割り切ってないがしろにしてはいけません。
自己資金と借入金が事実であるかぎり、その金額の範囲内でサロンを作らなければならないのです。
融資が決定した後、計画を無視して欲しいものをあれもこれもと集めるのは失敗するパターン。
オープン時に残高を確認したらほとんど残っていない、といって相談に来る方もいらっしゃいます。
資金を調達したら、事業計画書に立ち戻る必要があるのです。
開業資金の内訳を確認し、内装費が増えそうなら美容器具や設備の予算を減らす、運転資金から少しお金を使うなど、資金内での調整を行いましょう。
支出が計画より増えそうなときの対処法
もちろん、想定外の出費でも、サロンを経営していく上で必要と判断する場合もあります。
計画以上にお金を使う場合には、運転資金が減ってしまわないように注意することが大切です。では、どうやって乗り切ればよいのでしょうか。
大きく2つの方法にわかれます。
内装や器具の分割・リースを検討する
分割やリースには、初期費用を抑えて、その分を運転資金に回せるというメリットがあります。
一方で、分割・リースには与信審査があります。審査に時間がかかってしまうリスクと利息を支払わなければならないリスクがあります。
資金自体を増やす
一番良いのは自己資金を増やすことです。しかし、お金を事業のために使いすぎると、十分な生活費が手元に残らない可能性もあります。
自己資金に限界がある場合には、親族からお金を工面してもらいましょう。
運転資金の融資は厳しい
開業の準備を進める中で、資金が足りなくなりそうなら別の金融機関を利用してお金を借りようと考える人もいます。
しかし、運転資金については借入れの難易度が高くなります。
設備資金というのは、最悪の場合(返済ができなくなった場合)、美容器具を売ったり内装をそのまま譲渡したりすることで返済金を作ることができます。
一方、運転資金は経費です。何も残りません。回収できなくなるリスクを考えると、貸す側としては運転資金よりも設備資金の方が貸しやすいのです。
まとめ:資金繰りも事業計画書が基本
開業の準備は資金を調達してからが本番です。事業計画書を再度確認しながら、適切にお金を使っていく必要があります。
万が一、出費が増えそうであれば、内装や美容器具を分割もしくはリースして、お金を残せるように組み立てましょう。
それでも苦しくなりそうであれば、親族からの支援を仰ぎましょう。
運転資金の借入れは難易度が高いため、日本政策金融公庫の融資の際に運転資金を多めに借りておく、というのも一つの手だと思います。
事業計画書は融資のために作成するのではなく、開業のために活用するものだということを肝に銘じておきましょう。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。