信用できるのは通帳だけ!? 融資で疑われるケースと正しい自己資金管理法

公開日:2019/11/26  更新日:2021/01/05
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自己資金 現金

サロン開業の際にお世話になることの多い日本政策金融公庫ですが、融資審査で確認されることのひとつに“自己資金”があげられます。

 

ここでも何度か書いている通り、開業費用の1/4~1/3を自己資金で賄うのが理想です。

 

ただし、この金額をきちんと貯めたからといって、単に事業計画書に書けばいいわけではありません。

 

自己資金が実際に“ある”ということを証明しなければならないのです。

 

親族からの支援金や月々の生活費の支払いなど、オーナーのお金の動きを伝えるには“裏付け”が必要になります。

 

預金通帳でお金の流れを証明するのが大前提

自己資金があることを証明するためには、自身の銀行口座を見せる必要があります。

 

会社から給与が振り込まれ、家賃や電気・ガス、携帯料金など月々の生活費が出ていく中で、収入が支出を上回っていれば少しずつ自己資金は増えていきます。

 

そしてこの預金通帳があれば、オーナー自身のお金の流れを十分に証明できます。

 

簡単な話かと思われるかもしれませんが、実際に開業サポートを行ったお客さまを見ていると、預金通帳だけで証明できた人は70%ほど。十分にお金の流れが判断できないケースもあるのです。

 

その大きな理由は、口座を介さずに自己資金を貯めたり支払いを行ったりする場合があるためです。

 

預金通帳に履歴が残らないケース

現金でお金を貯めてしまう

美容室の中には、いまだに給与を現金で手渡しているところがあります。また、フリーランスになると直接お客さまからお金をもらうため、銀行口座を使わない人もいます。

 

この人たちは、口座にお金を入れる手間が面倒で、現金で持っている場合が多いようです。

 

これから開業を志している方は、もらった現金をまずは口座に入金するようにしましょう。

 

ただし、現金を入金しても、振込人が本人なのか証明することはできません。お金には名前がないからです。

 

別の誰かがあなたの口座に入れたかもしれない、と疑われてしまいます。

 

このような場合には必ず、「給与明細」「領収書」「売上管理表」などを取っておくようにしましょう。

 

支援金に関しても同じです。親族から100万円の支援を受けるときに、「現金でもらう」あるいは「現金を口座に振り込んでもらう」というのはNGです。

 

必ず親族の名前が預金通帳に残るように、口座から自分の口座に送金してもらいましょう。

 

現金で支払いをしてしまう

日本政策金融公庫の融資面談では、オーナーの支払い状況も証明しなければなりません。

 

担当者は、家賃や電気・ガス代など毎月必ず支払う生活費を期日内に納めているかを確認し、お金を貸したときに返済してくれる人なのかを判断します。

 

支払い状況も同じように、預金通帳で確認できれば問題ありません。

 

では、コンビニで現金支払いしている場合はどうでしょうか。

 

こちらも自己資金と同様、本当にオーナー自身が支払ったという証明ができません。よって信用度は下がってしまいます。

 

別の誰かがコンビニで支払った可能性が排除できないからです。

 

融資面談の担当者は、たった1回の面談で「この人に融資すべきかどうか」を判断します。

 

オーナーと長い付き合いがあり、その人となりを知っている人であればオーナーの言葉を信用するでしょうが、融資担当者は初めてオーナーと会います。初対面の人に対して、融資の判断をしなければなりません。

 

証拠がなく、言葉だけで判断するのはリスクが高いということは想像できます。

 

ではクレジットカードはどうでしょうか。生活費をクレジットカードで支払っている人も多いと思います。

 

カードに関しては、カードの明細とその金額が口座から引き落とされていることが確認できれば問題ありません。

 

今はカード明細もネットで管理できますが、郵送で送られてくる場合には書類をきちんと保管しておきましょう。

 

現金管理している場合の証明方法

これから開業する人はまず、現金でお金の管理をすることを控えるようにしてください。

 

では、今まさに融資面談が迫っていて、「今から口座にお金を移さなければならない」という人はどうしたらよいでしょうか。

 

今まで現金で100万円貯めていた人が自分の口座に振り込んだら、預金通帳に突然100万円が記録されることになります。

 

本人が「タンス貯金していた100万円です」といっても、証明するものがありません。

 

この場合、担当者は別の方法を使って、この100万円を自己資金として認められるかを判断します。

 

どうするかというと、「自己資金=収入-生活費」と考えるのです。年間の収入と支払いが分かれば、おおよそ貯まっていく金額が想定できます。

 

働いているかぎり、収入はかならず証明できます。源泉徴収や確定申告がそれにあたります。まずは自分が年間でいくらもらっているかを証明しましょう。

 

支払いに関しては、たとえ現金で支払ったものでも領収書を取っておくようにしましょう。

 

収入から支払いを引いた金額が、自己資金に近い金額であれば認められる可能性があります。

 

また、自己資金を現金で管理していることに明確な理由があればそれを伝えましょう。私が担当したお客さまの中には、こんな理由の方がいました。

 

「震災のとき、ATMが止まってしまってお金が引き出せなかった。そのときから現金の大切さを身をもって知ったため、現金で貯金することにしている」

 

あくまで一例ですが、金融機関としては口座を使わない理由を知りたいのは当然です。しっかり答えられるようにしましょう。

 

まとめ:一発勝負の面談は何よりも物証が大事

融資ではオーナーの自己資金や支払い状況を確認します。

 

お金の流れには裏付けが欠かせません。そしてこの裏付けは、預金通帳の記録が一番信用度が高いものです。

 

誰からもらったお金なのか、誰に支払ったお金なのかの記録がなければ、お金の流れを確認することは難しいでしょう。

 

現金で貯金、支払いをしている人は、これを機に口座での取引を始めてください。

 

もし現金で自己資金を保有しており、支払いもすべてコンビニ支払いや銀行振込みをしている場合には、源泉徴収票や確定申告など別の資料から裏付けを取っていく必要があります。

 

お金の管理は、サロンを経営していくうえでとても大切な業務です。融資担当者に、ずさんな人だと思われないよう注意しましょう。

 

※参照『お金はあるのに認められない?注意しよう!融資審査における自己資金の定義

   『お金の“流れ”をチェック? 融資審査で自己資金を申告する際の注意点

 

 

●文/コンシェルジュ室:安斎

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ビューティガレージ コンシェルジュ室

日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。

15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。

事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。

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