信用情報だけじゃない!融資担当者から信頼を得るための日々の準備
金融機関からの借入れを行う時には、自己資金と事業計画書、そして信用情報が重要と言われます。
融資担当者は、自己資金によって開業者の熱意やコツコツと準備してきたのかを判断します。
また事業計画書を見ながら事業に対する真剣さや事業の成功確率を見極めます。
そして信用情報を使って、開業者が貸したお金を返してくれる人物かどうかを確認します。
信用情報とは、クレジットカードやローンにおける信用取引の情報です。
CICの記事がよく読まれていますが、融資担当者は信用情報機関から開業者の情報を取り寄せて、取引に不審な点がないかをチェックします。
しかしここで注意が必要なのは、融資担当者は信用情報以外からも、開業者がお金を返してくれる人物かどうかを判断しているということです。
今回は、信用情報以外に融資担当者から信用されるための準備についてお話します。
※参照
『信用度が丸裸に!? CIC窓口へ情報開示請求に行ってみた!』
『信用情報ゼロ!? 自己資金&事業計画が完璧でも融資が否決される理由』
毎月の生活費
融資審査では、自分の生活費がわかるものを用意しなければなりません。
例えば、住んでいるマンションの家賃や水道光熱費のことです。
これは二つの目的があります。一つは開業者の生活負担を把握するためです。
事業計画書で出した利益で、生活費をカバーできるのかを確認します。
もう一つは、定期的に支払うべきものをちゃんと払っているか、を見ています。
したがって、通帳に引き落とし記録があることがベストです。
期日内に支払うことができている、かつ、自分のお金で支払っているからです。
口座引き落としをしていない、例えばコンビニで支払っているケースはどうでしょうか。
コンビニで支払っている場合には、その領収書を金融機関に提出します。
その時に、期日を過ぎて支払っている領収書があると問題です。
「たまたま忘れてしまって」という言い訳をする人もいますが、融資担当者は「この人は他者への支払いを忘れてしまう人だ」という印象を持ってしまいます。
また、コンビニの支払いになると、それを自分が支払ったという証明になりません。
誰か別の人が払ったかもしれないからです。
それゆえ、生活費に関しては、自分の口座から引き落としするか、自分のクレジットカードなどで支払うようにしましょう。
もしも、両親と暮らしていて、家賃も水道光熱費も自分が支払っていない場合はどうでしょうか。
その場合には、自分が定期的に払っているものを提出します。例えば携帯の料金などです。
生活費の支払い状況は「期日までに約束通り支払える人物」であるという証明をするために必要です。
自己資金だけでなく、支払いにも注意を払いましょう。
ローンの中身
ローンの返済に関しては信用情報から確認できますが、ローンがある場合には申告する必要があります。また、返済予定表の提出も求められます。
日本政策金融公庫の創業計画書ではローンを記載する欄もあります。
前提として、自分のローン残高や月々の支払額は知っておかなければいけません。
なぜなら、事業の利益からこのローンを支払うのに加えて、新たに事業用ローンを返済していくからです。
金融機関は返済ができなくなりそうな人には貸しません。
すでにあるローンがいつ終わるか、毎月の支払額がどの程度増えるのかを判断材料にします。
住宅ローンなどある場合には、当然、住宅ローンと事業ローンの返済が可能な事業計画書でなければいけません。
また、もう一つローンに関しては重要なことがあります。それはローンの内容を説明できることです。
住宅ローンや車ローンはその名の通りなので説明不要です。
しかしカードローンの場合には、何に使ったのかを説明を求められる時があります。
その時に使い道が不明だったり、借入れの動機が不純だったりするのは問題です。
返済はしているけど「なにに使ったんだっけ?」「それは言えないです」となってしまうと、「とりあえずお金が欲しいだけなのでは」と思われてしまいます。
生活費が困って借入れをしていた人がいました。
しかしその人は借金の背景をしっかり説明して無事融資が決まりました。その背景とは次のようなものでした。
かつて働いていた美容室の給与がかなり低く生活が厳しくなった。
転職をしてから生活を立て直す間に借入れをして、今は十分生活費とローンを返済できるだけの給与をもらっている。
ローンに対しては返済期間、月々の返済額、借入れの内容をしっかり伝えることが大切です。
預金通帳
融資審査では預金通帳を提出します。主な目的は2つです。
一つは自己資金を証明するため。もう一つは、月々の支払いを証明するためです。
その中で、融資担当者が注意して確認していることがあります。
それは大きなお金が動いているかどうかです。
例えば、通帳を見ていたらある月だけ100万円の引き落としがあったとします。
それについて融資担当者は説明を求めます。
もちろん使い道についてあれこれ詮索することはありませんが、100万円もの大金を何に使ったかは説明できなければなりません。
ある開業者は半年前の記録から150万円が引き落とされていました。
理由は結婚式のためでした。ライフスタイルにあわせて大きな出費があるのは当然です。隠さずにしっかり伝えましょう。
あるいはすでに開業のためにお金を使っているケースもあります。
例えば、開業セミナーや開業を意識した技術講習などです。
この場合は自己資金から使った事業用の費用になりますので、領収書などを提出しなければいけません。
逆にお金が振り込まれていたケースも説明が求められます。
親族ではない人からの入金や、現金での振込でお金が増えている場合には特に注意が必要です。
なぜならその金額が自己資金に含まれている可能性があるからです。
例えば自己資金300万円と申告しているのに、実際に通帳を確認したら現金で200万円が振り込まれていました。
それを差し引くと100万円しか貯金がありません。
この場合、現金が親族からの支援金だったとしても証明できないため、自己資金100万円と変更されてしまいます。
あるいは親族ではない第3者からの入金があった場合には、その人物が誰なのかなども聞かれることがあります。
その方が事業に関わっている場合には、融資する立場として、担当者は理解しておかなければなりません。
通帳のお金の動きは非常に大切です。どのお金が事業に使われているのか、どのお金が事業資金になっているのかを理解しておきましょう。
※参照
『お金の“流れ”をチェック? 融資審査で自己資金を申告する際の注意点』
融資担当者は多角的に信用度をみている
融資担当者は「この人にお金を貸して大丈夫か」を判断するために審査をしています。
審査の大きな基準は、自己資金、事業計画、そして信用です。
これまで多くの開業相談を行ってきましたが、自己資金や事業計画についてはある程度しっかり準備しているのに、信用の部分が抜けている人がかなりいます。
約束の期日に支払っていること。ローンなどを計画的に返済していること。お金の動きに不明な点がないことを証明するのはとても重要です。
融資担当者に自分の信用を見せる準備もしっかりしておきましょう。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。