費用は投資!回収期間から考える開業資金の判断基準

公開日:2020/05/28  更新日:2021/01/05
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開業無料相談では、お客さまの作りたいサロンについてヒアリングをしたあと、開業費用のシミュレーションを行います。

 

しかしながら、実際に開業サポートをしながら見積もりを作っていくと、シミュレーションよりも高くなることもよくあります。

 

多くの人は内装費や美容器具費にどこまでかけるべきかで悩みます。内装も美容器具も、相場だけでは決められないからです。

 

「開業にいくらお金をかけるべきか」を考える一つの判断基準として、投資回収期間というものがあります。今回は開業費用を投資としてとらえる考え方をご紹介します。

 

開業費用=投資という考え方

開業相談での開業資金シミュレーションは、我々がこれまでサポートしてきたお客さまのデータを基に作成します。

 

当然ながら、開業にいくらお金を使うかは、オーナーによって様々です。決して正解があるわけではありません。

 

例えば内装は、物件の状態、設備(電気・ガス・水道)のキャパシティによって、費用が大きく異なります。

 

また、オーナーのデザイン対するこだわりが強い場合には、お金をかけようと思えば、いくらでもかけられるのです。

 

美容器具は、メーカーによって価格の差が大きいのが特徴です。

 

ビューティガレージであればバックシャンプー1台30万円台で購入できますが、別のメーカーでは80万円以上かかります。

 

開業に使うお金が想定よりもかかりそうなとき、内装や美容器具などの費用をおさえるという選択肢と、自己資金や借入によって開業資金を増やすという選択肢がでてきます。

 

内装や器具の費用をおさえることは大切ですが、行き過ぎた開業費用の削減によって、自分が理想とするサロンにならない可能性が出てきます。

 

そうすると、はみ出した分の費用を支払うために、資金を増やす方向で考えることになります。

 

開業費用は厳密にいえば投資です。美容室は、初期投資を行い、サロンを作り、営業しながら投資額を回収していくビジネスモデルです。

 

投資であればできるだけ早めに元本を回収し、手元のお金を増やしてく発想が欠かせません。

 

※参照:内装費用に関する記事

デザインから入るべからず!失敗しない!美容室づくりの優先順位

 

投資回収期間を算出する

開業費用=初期投資額と考えれば、回収年数を求めることが可能です。

 

回収金額とは何でしょうか。それは営業利益ではなく、現金収支になります。営業利益から、借入金の返済分を差し引いた、自分の手元に残る金額のことです。

 

すると、投資回収期間は次のような式で表されます。

 

投資回収期間=初期投資額(開業費用)÷1年の回収金額(年間の現金収支)

 

開業サポートを受けたお客さまの例を見てみましょう。

開業資金表

このお客さまは、設備資金1082万円、運転資金468万円の合計1,550万円を開業で使うことにしました。

 

開業1年目の収支計画は以下のようになりました。

 

・年間売上:2,300万円

・年間営業利益:537万円 (借入の元金返済90万円)

・年間現金収支:447万円

 

総投資額は1550万円で、現金収支が447万円です。したがって投資回収期間は以下のようになります、

 

1550万円÷447万円=約3.5年。

 

つまりこのサロンを作って、元をとるのに3年半かかるということになります。3年半過ぎて初めて投資した以上の見返りを得ることになります。

 

もちろん、2年目の現金収支がもっと増えることを想定すれば3年以内に回収できなくはありませんが、ここでは計画通りに収益を上げられれば、遅くとも3年半で元が取れると理解しましょう。

 

※参照:収支シミュレーションに関する記事

事業計画書の肝!儲かる収支シミュレーションを書くコツ

 

回収年数の目安

理想の回収年数の目安はスケルトン物件であれば3年~4年、居抜き物件であれば1年~1年半といったところでしょうか。

 

いずれにせよ、美容室を開業するならば、投資したお金をいつまでに回収できるかを計算しておかなければ、毎月の利益を追っても意味がありません。

 

開業時にはそこまで長期のことを考える余裕がないかもしれませんが、回収の意識がなければ、開業資金はただの費用としか捉えていないということです。

 

集客などが見込めていて、立てている収支計画が十分に達成できるというのであれば、多少お金がかかっても未回収リスクが少ないと判断できるでしょう。

 

一方、収支計画が読めないならば、投資回収が3年以上かかるとわかった時点で、費用を抑える方向にシフトしていくべきです。

 

※参照:開業リスクの試算に関する記事

どんな条件なら失敗しない?開業の方向性を決めるリスク評価

 

長期的な視点で開業費用を考えること

一つの判断基準として、投資回収期間を説明してきました。繰り返しになりますが、大事なのは、開業費用は投資であるということです。

 

もちろん、できるだけお金をかけずに開業することは悪いことではありません。

 

しかしながら、費用を削ることで本来目指すべきサロンを妥協することになっては、本末転倒です。

 

将来の利益のために、正しい投資を行い、「お客さまが来るサロン」を作るのだという意識は経営者として持っておくべきです。

 

 

●文/コンシェルジュ室:安斎

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ビューティガレージ コンシェルジュ室

日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。

15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。

事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。

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