新型コロナで社会はどう変わった?消費者の行動を読んでサロン戦略を練ろう
再び新型コロナの感染が拡大しています。感染拡大の波は今後も定期的に起こると考えられます。
一方でワクチンの開発が進み、来年春にも多くの人に提供できるかもという嬉しいニュースも聞かれます。
4月に緊急事態宣言が出されてから、半年以上が経ちました。政府や多くの企業が、様々な視点で、新型コロナの影響によって社会・経済がどのように変わっていったかを分析しています。
お客さまあってのサロンビジネスである以上、コロナ禍での消費者の変化を理解することは非常に大切です。
今回は、内閣府から出された調査結果を中心に「コロナ禍における社会・経済の変化」に関する資料を読んで、コンシェルジュ室で気になった点をまとめました。
目次
働き方が変化した
内閣府の調査によれば、緊急事態宣言以降、テレワークを推進し実行した事業者の割合は34.6%となりました。
もちろん、業種によって差がありました。完全にテレワークを実施できた事業者の割合も少ないです。
しかし、労働時間の短縮やフレックス制度の導入など何らかの形で働き方が変わっていることは事実のようです。
もう一つ、働き方の変化によって「家族と過ごす時間」にも変化が見られることにも注目すべきです。
アンケートでは約50%の人が「家族の重要性をより意識するようになった」と回答しています。
人との交流が減っている一方で、家族と過ごす時間が増えています。また、男性の家事・育児への参加が期待されています。
アンケートでも約半数以上の人が「家事・育児の向き合い方が変わった」と回答しています。
テレワークによって自宅で仕事ができるようになったことに加えて、男性の家での役割が増えたことは、社会にとってプラスと受けて止められるでしょう。
こうした動向から以下のような仮説が立てられます。
・大都市圏への通勤が減ることで、住んでいる場所での活動が増えているのではないか。
・家族での役割分担が増えることで、夫婦それぞれの自由時間も増えているのではないか。
開業で立地やターゲットを考える上で、働き方の変化は重要な要素になると思います。
※参照:内閣府『新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査』
オンラインが普及した
シニア層の利用率
こちらは経済財政白書からですが、緊急事態宣言後のEC消費総額が増加しています。
原因としては、利用世帯数が増えたこと。つまり初めてECサイトで買い物をする人が増えたということ。とくに顕著なのは50代以上の層の伸びでした。
シニア層がオンラインに順応してきていることは注目すべきだと思います。
「シニア=アナログ」という先入観を捨てて、ネット予約やSNSを積極的に誘導することで新たなビジネスチャンスが生まれそうです。
新型コロナに敏感な世代でもあります。ネットで情報を収集する傾向が高まっているのであれば、ホームページなどを強化して、シニア層にも刺さるサービス・コンテンツを増やしていくこともできます。
「うちは年配のお客さまが多いからキャッシュレスは難しい」というサロンも方針転換を図ることだってできそうです。
20代の無料動画への関心
次に、民間企業の調査を見てみましょう。
株式会社バリューズが行った「新型コロナ影響拡大をきっかけに興味を持ったことは」というアンケートの結果で、無料動画コンテンツが上位にランクインしました。特に20代の消費者の間で顕著です。
最近は「動画」で情報収集する人も増えていると感じています。誰もが動画を作成して配信できる時代です。動画はプロモーションの一つになっています。
美容業界でも、美容師やセラピストが、動画でおすすめの商品を紹介したり、スタイリング方法を教えたりして、プロモーションを行っています。そこからマネタイズに成功しているサロンもあります。
特に20代〜30代をターゲットにする場合には、動画によるコミュニケーションを集客戦略として活用することも必要かもしれません。
また、ECで購入されるものの上位には基礎化粧品がランクインしているようです。店販商品の販路拡大としてもECサイトは一つのキーワードになりそうです。
※参照:内閣府『令和2年度年次経済財政報告-コロナ危機:日本経済変革のラストチャンス-(令和2年11月6日)』
※参照:『まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン マナミナ』
景気が悪くなってきている
経済財政白書を読んでいくと、個人消費の落ち込みがかなり大きかったことに気がつきます。
ニュースを見ていると、なんとなくそんな気がしていると思いますが、データを見れば景気の悪化は明らかです。
消費が冷え込んでいるため、物価も下落傾向にあります。つまりデフレになりつつあります。
企業業績の悪化にともない、雇用状態も悪くなっています。リストラや契約解除が増えています。
特に顕著なのは「64歳以下のパート・アルバイトとして働く女性」です。多くの人が働く場所を失っています。
NHKがまとめたデータもいくつか見てみましょう。
1)給与総額
4月以降、6か月連続で減少しています。残業代などの所定外給与の大幅な減少が続いており、9月の給与総額は前年の約1%減でした。
2)有効求人倍率
9月で1.03まで落ち込んでいます。2019年には1.6倍に達していて、バブル景気の頃を上回る水準で、人手不足が指摘されていました。コロナ後は、様相が一変しています。就職がかなり困難な状況です。
景気が悪化⇒給与が減る・リストラが増える⇒消費を抑える⇒価格が下がる⇒企業の収益が減る、という悪循環に陥る可能性があります。
家計の支出が減るということは、消費の優先順位がシビアになります。美容サロンは優先順位が高い支出と思われるでしょうか。
こう考えると、サロンの競合は同エリアの同業種だけではないことがわかります。
実は競合となりうるのは、家電製品だったり、ヘアケア商品だったり、あるいは「久しぶりの外食」「GoToトラベルを使っての国内旅行」なのかもしれません。
ますます「サロンへ通うこと」の付加価値を突き詰め、お客さまへアピールしていかなければいけません。
参照:内閣府『令和2年度年次経済財政報告-コロナ危機:日本経済変革のラストチャンス-(令和2年11月6日)』
消費者の行動変容にアンテナを張ろう
日本政府、あるいは数多くの民間企業が、新型コロナウイルスによる社会的な影響を調査しています。どの資料でも共通しているのは「新型コロナウイルスによって社会・経済は確実に変わってきている」ということです。
そうした資料に目を通し、今後起こりうることを予測したり、仮説を立てたりして、サロン戦略を考えていかなければなりません。
「環境の変化に対応できるものだけが生き残る。」これからサロンオーナーになる人は、社会、経済の変化に敏感になりましょう。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。