公庫融資の壁!?審査を左右する「ヒト」と「カネ」の妥当性

美容サロンの独立開業において、資金調達は最初の、そして最大の難関です。
多くの方が、日本政策金融公庫(以下、公庫)からの融資を検討されますが、「自己資金と事業計画に問題なければ大丈夫」と安心していると、思わぬ落とし穴に遭遇することがあります。
実は、融資審査は申込者本人の信用力や計画書の内容だけでなく、事業に関わる「人」や「場所」の隠れた情報にも深く切り込んで評価されます。
特に、ご家族や親しい仲間と開業する場合や、居抜き物件を利用する場合、あなた自身の努力だけではどうにもならない要因で、融資が否決される可能性があるのです。
今回は、公庫融資審査における、見落とされがちな落とし穴と対策を解説します。
目次
家族・従業員の「過去」が審査に影響する
「融資を受けるのは私(代表者)なのだから、他の従業員の信用情報は関係ない」と考えるのは間違いです。
公庫は、「その事業が安定的に継続し、返済が可能か」を総合的に判断します。
その安定性を脅かす可能性がある人物が事業に関わる場合、代表者がクリーンであっても審査は不利になります。
【注意:審査は個別的かつ複合的です】
当社の過去事例でも、事業とは無関係の若い頃の自己破産や、右腕の業務委託スタッフの過去の破産歴等があっても、代表者の信用力と事業計画の確実性が認められ、融資が実行されたことが多数存在します。公庫の審査は、「破産歴があること」そのものが即否決となるのではなく、「その破産歴が、今回の新しい事業の継続性にどの程度影響するか」という個別的かつ複合的な観点で判断されます。
共同経営でなくても影響する「事業破産」
代表者ではないご家族や親族(夫婦、親子、兄弟など)を従業員として雇用する場合でも、その人物が過去に事業破産(特に公庫や保証協会付き融資を返済できずに破産した経歴)がある場合、融資が否決される要因となり得ます。
これは、公庫側が以下の懸念を抱くためです。
事業の安定性への懸念
過去に金融機関への返済能力に問題があった人物が事業に深く関わることで、将来的に事業の安定性を損なうリスクを疑われます。
資金流用のリスク
新規事業の融資金が、過去の負債の立て直しや、別の目的のために流用されるリスクを疑われます。
たとえ従業員という立場であっても、事業の主要なメンバーと判断された場合、その人物が持つ信用情報が審査に影響する傾向があります。
対策:事業の「独立性」を証明する
このような場合、公庫に対して「その事業に関わる人物の情報が、事業の継続性に影響しない」ことを証明する必要があります。
事業の独立性の証明: 問題となる人物を除いた、他の従業員(代表者含む)の売上シミュレーションで、家賃や運営費といった固定費を十分に賄えることを示し、事業が特定の人物の存在に依存していないことを強調します。
特に、全メンバーのうち問題のある人物の比率が高い(例:二人サロンで一人が該当する)場合、事業破綻のリスクが高いと見なされ、審査はよりシビアになります。
関与の低減
融資面談では、リスクとなり得る人物の「給与や売上が低い」「マネジメントには関わらない」など、事業への依存度を低く設定し、あくまで「優秀なスタッフの一人」であることを強調して説明する必要があります。
信用情報に関する情報源
過去の信用情報(延滞や債務整理の有無など)は、公的な信用情報機関に開示請求することで確認できます。
特に不安がある場合は、事前に確認することをおすすめします。
参照記事:信用度が丸裸に!? CIC窓口へ情報開示請求に行ってみた!
参照記事:信用情報ゼロ!? 自己資金&事業計画が完璧でも融資が否決される理由
居抜き物件に潜む「風評リスク」
申込者や従業員に問題がなくても、「店舗の場所」そのものが原因で審査が不利になるケースもあります。
特に居抜き譲渡で物件を取得する場合に注意が必要です。
前のオーナーや店舗のネガティブな履歴
前のオーナーが公庫や保証協会への返済を残したまま事業を畳んだ場合や、金融機関に対して不審な履歴を残している場合、その場所に対してネガティブな情報が残っている可能性があります。
また、前オーナーやその事業が法的な問題を起こしていたり、風評によって店舗のイメージが損なわれている場合も、融資審査において懸念材料となることがあります。
公庫側は、物件の履歴(この場所で以前融資を行ったか、その返済が滞ったかなど)を参照している可能性があるためです。
対策:物件の「履歴」を調査する
譲渡理由の明確化
前オーナーから事業譲渡を受ける際は、「なぜ手放すのか」という理由を明確にし、金銭的なトラブルがないかを深くヒアリングする必要があります。
店舗の風評
前の店舗が「家賃滞納」や「近隣住民とのトラブル」といった悪評を残していないか、不動産会社や近隣住民を通じて確認しましょう。
参照記事:マニュアル本には載ってない!美容室開業者のリアルな疑問を解決!
公庫が重視する「投資額の妥当性」
事業内容が良くても、「事業規模に対して投資額が多すぎる」と判断されると、否決理由となることがあります。
公庫をはじめとした金融機関は「返済の確実性」を重視します。
投資額自体が大きくなくても、事業計画の収益力に対して回収期間が長すぎると判断されれば、否決の理由になり得ます。
投資額が高額と判断される基準
坪単価の過剰さ: 同エリア・同規模のサロンと比べて、内装の坪単価が突出して高くないか。
収益力とのバランス: 想定される月間利益やキャッシュフローに対して、設備投資額の総額が重すぎないか。
公庫が指摘する「投資額が多い」という真意は、「この事業規模では、回収が困難な過剰な投資をしているのではないか」という懸念です。
この懸念は、特に、事業の安定性に不安要素がある場合に、よりシビアに評価されます。
まとめ:あなたの信用力だけが審査ではない
融資の成功は、あなたの信用力と事業計画の質が9割を占めますが、残りの1割に「事業に関わる人や場所が持つ、ネガティブな情報」が潜んでいます。
ご家族や親族を雇用する場合、リスクとなり得る人物の情報を隠さず正直に伝え、その上で「その人物の状況に関わらず、事業は成り立つ」という強い独立性と安定性を証明することが、融資成功への近道となります。
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●文/コンシェルジュチーム:野呂
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
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