【美容室開業のリアル】同規模サロンなのに微妙にちがう! 開業費用の内訳事例
前回の記事でも書きましたが、開業サポートを受けた美容室53件の開業費用の平均は1,211万円でした。
この開業費用1,211万円というのは、いったい何にいくら使っているのでしょうか?
今回は開業サポートの事例から、同じくらいの規模(4席・シャンプー2台)と開業予算(1,200~1,250万円)のサロンを3つ紹介します。
規模や予算は同じでも、お金をかけているところが違うのです。
開業費用の内訳をみると、限られた予算の中でいかにサロンを作っていくのか、オーナーの考えや努力を理解することができます。
目次
【サロンA】物件取得にお金がかかったケース
開業で一番最初にお金を使うのが、“物件取得費用”です。そもそも物件がないことにはサロンは作れません。
物件取得費用というのは、
- 店舗保証金(敷金)
- 礼金
- 仲介手数料(家賃の1か月分くらい)
- 前払い金
- 保証会社への支払い
を指します。
※くわしくはこちらの記事をご覧ください。
以下のグラフは、サロンAの開業費用の内訳です。
サロンAの特徴は“物件取得費用が高い”ということです。物件を取得するのに171.8万円もかかっています。実に開業費用全体の14%を占めています。
下記のサロンB、Cと比較すると費用の高さがわかるでしょう。
物件取得でお金がかかる一番の理由は、店舗保証金(敷金)です。平均で家賃の3~6か月分かかりますが、この物件では10か月分を支払いました。
幸い、家賃自体はそこまで高くなかったのでこの費用で抑えられました。
渋谷や銀座といった人気エリアでは、家賃が高い上に保証金も10か月以上とるというケースも珍しくありません。
サロンAの場合、立地の面で代えがたい価値を感じたため、物件取得にお金をかけました。
【サロンB】内装にお金がかかったケース
サロンBは、内装費にお金がかかっています。内装費だけで全体の6割(756万円)を超えてしまっています。
一方、物件取得費用は69.8万円と、サロンAに比べてずいぶん抑えられています。
内装費がかかる大きな要因は、電気・ガス・水道の工事です。
- 電気容量を増やす。
- 水道管を取り換える、あるいは貯水タンクを取り付ける。
- 給湯器では賄えないためボイラーを設置する。
など、設備面を整備するのにお金がかかるケースが多いです。
どんなに内装がよくても、「シャワーの出が悪い」「ドライヤーを同時に使うとブレーカーが落ちる」「お湯がでない」など、サロンワークの障害になってしまえば致命的です。
内装費がかかってしまったとしても、ここを渋ってしまうと取り返しがつきません。
一方で、坪単価が異常に上がってしまうと、融資審査で「高すぎるのではないか」と突っ込まれる可能性があります。
「お金をかけてでも、本当にここで開業すべきか」という物件の見極めが重要になります。
【サロンC】運転資金(現金)を多めに確保したケース
サロンをオープンしてから軌道に乗るまでには時間がかかります。そしてどんなに売上が伸びなくても支払いは発生します。
とくにサロンで支払う固定費は、
- 家賃
- 人件費(固定給)
- 販促費(ホットペッパーなど)
です。
サロンCは、運転資金として224.5万円以上を確保しました。サロンA(189.2万円)、B(151.3万円)と比べてもかなり高額です。
これは、スタッフ2人分の人件費を考慮した結果、この金額が最低でも必要と判断したためです。
予算オーバーになったときの対処法
事業計画書で予算を立てていても、実際に見積もりを集めてみると予想以上にお金がかかるということがよくあります。
そのときに考えなければいけないのは以下の3つです。
自己資金を増やす、借入金を増やす
自己資金を増やすには、自分の貯金を切り崩す必要がでてきます。貯金が全くなくなるのは厳しいので、親族からの支援をお願いするケースが多いです。
しかし、予算以上に金額が大きい場合は、融資金額を増やすという選択肢も必要になります。
分割支払い/リース支払い
たとえば、美容器具を分割支払いにすることで、初期の開業費用を減らすことはできます。
しかし、分割の支払を営業利益から返済していきますので、ある程度の利益の見込みがなければ苦しくなります。
開業場所やサロンの規模を変更する
開業費用が高くても、収益が期待できれば投資する価値はでてきます。家賃は支払えるか? 広告費をかけなくても見込み客で売上を立てられるか? そもそも最初からスタッフを雇う余力がありそうか?
厳しい場合には、その物件を諦めるという判断をしなければなりません。
まとめ:予算はメリハリも大切
できるだけ予算枠に収めるには、妥協も必要です。内装にお金がかかったら、美容器具などほかの経費を抑えられないか考えます。
物件取得にお金がかかったサロンAは、見込み客を多く送客できそうでしたし、スタッフも奥さんでしたので、家賃さえ支払えばやっていけると判断し、運転資金を減らしています。
内装にお金のかかったサロンBは、デジパや炭酸スパというメニューを導入しないという理由から、美容器具を最小限に抑えることで予算内に収めました。
運転資金を多く持ちたいサロンCは、スタッフと自分の集客に自信があったため、広告費は看板やチラシだけにしました。
開業の準備の中で問題にぶつかったとき、どう乗り越えるか、どういう判断するかはオーナーとしての最初の仕事です。
正解はありません。開業でのお金のかけ方はそれぞれです。この事例をもとに「自分だったらどうするか」を考えてみてください。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。